The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

さらば田舎、栄光の日々よ ヤング≒アダルト

 アメリカというのは移民の国でそれは今も続いている。映画業界も例外ではなく今でもアメリカ以外の国からハリウッドに次々とやって来る。そんな中でもお国柄というのはあるようで、例えばアメリカ出身の女優さんは余り脱がない印象。一方、欧州出身の女優さんは必然性があれば当然脱ぐ。必然性がなくても脱ぐ!という印象(特にフランス出身の女優)。一方、それ以外の地域、オーストラリアとか南アフリカとかだと美人なのにあえて不美人の役を演じたがる傾向が有るような気がする。今回出ていたシャーリーズ・セロンもすごい美人なのに「モンスター」では不細工メイクを施していた。この辺、香港映画でチャウ・シンチー作品でコメディとして不細工メイクというのとは少し違って(カレン・モクとか)、美人であるがゆえに純粋に才能を評価されてないのではないか、という恐れのようなものが感じられる。まあそういうのはわざわざ美人がやる必要ないじゃない!不美人の仕事まで奪うなよ!という言い分もあるのだけれど。そんなシャーリーズ・セロン主演映画「ヤング≒アダルト」を鑑賞。

このポスターの表情は悪意ありすぎだなあ。

物語

 高校時代、皆の憧れだったメイビス・ゲイリーは現在はミネアポリスヤングアダルト小説のゴーストライターをしている。ある時、メールで高校時代の彼氏バディと彼の妻ベスから夫婦の間に子供が誕生した事を知る。
 色々と行き詰っていたメイビスは発作的に故郷へ向かう。バディと再び恋に落ちるために。バディに電話し会う約束を取り付ける。そしてバーで出会った高校時代の同級生、メイビスの隣のロッカーでゲイと間違えられて集団リンチにあった過去を持つマットと知り合う。酔に任せてメイビスはバディをベスから取り戻す計画を打ち明ける。マットは彼女を諭すが聞き入れない。
 翌日メイビスはバディと出会う。バディは幸せな家族との生活を語る。それはどう見ても幸せな様子だが、メイビスには「不幸なゾンビのような生活」を愚痴ってるように思ってしまう。やがて別れのキスでバディはベスト別れたがっていると確信したメイビスは自信満々で赤ちゃんの命名式に向かうが・・・

 この映画のシャーリーズ・セロンは不美人というよりだらしない私生活や疲れたすっぴん顔を晒すことで単なる美人以上を演じている。美人の時とそうでない時の明暗がはっきりしてて凄いなあ、と思った。とはいえ彼女肩幅がしっかりしているのでドレスで肩を露出している時より上着をきちんと羽織っている時のほうが色っぽかったりする。あと、普通に真正面から見るとそうでもないが光があたって顔の陰影がくっきりして映る時、シャーリーズ・セロンミシェル・ファイファーに見える瞬間が結構ありました。
 タイトルの「ヤング≒アダルト」とはメイビスが執筆している「ヤングアダルト小説(ティーンエイジャー向けの恋愛小説)」から採っているが同時に高校時代を引きずって大人になりきれないメイビスの状態を表している。彼女は都会に出て一応の成功をしているが、幸せとは程遠い。自分が一番輝いていた時期、高校時代の彼を取り戻そうとするのだがそれがどう見ても一人相撲。彼女以外の周りの人間はすべてがバディとベスは幸せな生活を送っていると認識するが彼女だけは受け入れない。
 そのバディを演じているのはパトリック・ウィルソン。彼を最初に観たのは「オペラ座の怪人」でだがあの時は美男子のヒーローと言う感じだったが「ウォッチメン」のナイトオウルなどを経ていい感じの性格俳優になったと思う。今回もハンサムだし性格もいいけれど、微妙に中年太り気味の田舎の男、を上手く演じている。その他田舎の登場人物は皆気のいい(「昔とは違う」というセリフがあり本来保守的な地域なのだろうけどそれは余り描かれない)人物という感じ。ただ田舎は田舎の中で完結してしまっている雰囲気はよく考えると少し不気味ではある。メイビスの従兄弟で高校時代にマットをいじめていた人物が車椅子でも幸せそうな様子はなんとなく例えばいじめで同級生を自殺に追い込んだ不良が卒業後「バカは卒業」とばかりにさっさと結婚して子育てしているような気持ち悪さを感じる(例えばバディが高校時代いじめとかをしていたジョックスだったとしても驚かない)。
 メイビスの相談相手となるマットは高校時代の暴行事件で障害を追い、密造酒づくりとフィギュアの改造に精を出すいわゆるオタクだ。ルックスも冴えない。とはいえ彼(とその妹)はメイビス以外では田舎の価値観から一歩物事を引いて眺められる人物である。彼は他の田舎の人物(その中にはメイビスの両親も含まれる)同様、バディの幸せを壊そうとするメイビスに忠告するが一方、高校時代の憧れだったメイビスに協力したいという相反した思いにとらわれる。この映画主人公であるメイビスに感情移入させず一歩引いた視点で描いているため、彼女の空回りっぷりは見ててかわいそうになる。とはいえバディたちにも感情移入しにくいため結果として観客があえて感情移入するのは主にマットで彼の視点が一番客観的なものとなる。とはいえメイビスとマットだけが高校時代に囚われている、とも言える。演じているのはパットン・オズワルト。「ブレイド3」とかに出てましたね。

 監督は僕と同い年で「JUNO/ジュノ」「マイレージ、マイライフ」のジェイソン・ライトマン。「JUNO」でもそうだったが、下手に物語の登場人物に没入させない作りを特徴としているように思う。「JUNO」でも必要以上にキャラクターにのめり込むことを許さず、常に一歩引いた演出をしていたように思う。
 この映画で面白いのは基本となるのは高校時代の関係なのに回想シーンとかで高校時代を描くことは一切しないこと。また主人公であるメイビスは最終的に自分を取り戻して再び都会へ戻るが、それが開き直ったのか、反省したのか、それとも何も変わっていないのか。どうとでも取れる。少なくとも彼女は田舎に迎合してこなかったしこれからもしない。その決意だけは伝わってくる。

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 でも一番のシャーリーズ・セロンは「マイティ・ジョー」のシャーリーズ・セロンだな・・・
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