The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

まだまだ派手に行くぜ!! 海賊戦隊ゴーカイジャー


 海賊戦隊ゴーカイジャーが終了。スーパー戦隊35作品目記念作品として作られ、最初は不安もあったが圧倒的な満足感の中で終わった。
 まずは製作にあたって作る側も「仮面ライダーディケイド」の反省があったと思う。見る側もそうだが過去のスーパー戦隊に変身する、という設定を聞いてディケイドを意識しないはずはない。ディケイドは大いなる失敗作(とあえて言ってしまおう)だがいくつか見るべき点はあってひとつは平成仮面ライダー昭和ライダーをつなぎ「MOVIE大戦」という形で一大クロスオーバー作品を築き上げたこと*1。そしてもうひとつはその反省点が「海賊戦隊ゴーカイジャー」に生かされたことだ。
 ディケイドではそれぞれの仮面ライダーパラレルワールドということにされていた(更に言うなら、例えば「仮面ライダーキバ」ならTVシリーズとしてのキバの世界とディケイドの中でのキバの世界と二つある)。ディケイドはそれぞれの世界を渡り歩くがそこは過去の出演者は登場せず(出てきたのは電王とキバと剣だけ)変身ヒーローの外側だけをなぞったものと言っても差し支えなかった。後半になって昭和ライダーも登場するが同じ世界であるはずの11人ライダーまでそれぞれ別の世界とされてしまっていてぶち壊し感が半端ないものだった。
 おそらくそのディケイドの反省点は東映のスタッフも分かっていたはずで「ゴーカイジャー」では大胆に過去34作品はすべて同一時間軸上の物語と設定されゴーカイジャー達は何らかの理由で変身できなくなったスーパー戦隊の力を宿したレンジャーキーで過去の戦士たちに変身するという事になった。さらに主人公たちは海賊(というか流浪のレジスタンス)ということになり一般的な正義の味方とは違う偽悪的なヒーローに設定された(この辺はディケイドも一緒だ)。
 そして一番重要なのだが、ゴーカイジャーではきちんと過去の戦隊が物語に関わり、その際には過去の出演者がきちんと顔出しで出演する。ここが「外側さえ出してりゃいいんだろう」というディケイドと一番違うところだ。最初のうちは(声の出演であるアカレンジャー誠直也氏を別として)近年の作品の出演者中心であったが徐々に古い作品の出演者も出始め子供と共にその親世代など広い世代にアピールする作品になった。また、「スーパー戦隊VSシリーズ」として「オーレVSカクレンジャー」以来長年その年の戦隊と前年の戦隊の共演するオリジナルビデオ(「ゴーオンVSゲキ」以降は」劇場公開も)が作られてきたことも有利に働いたはずだ。
 結果として「海賊戦隊ゴーカイジャー」は35作品記念作品にふさわしい傑作になったと思う。というわけでいくつかエピソードを取り上げて紹介・感想を書いてみたい。

第1話「宇宙海賊現る」

 記念すべき第一話。冒頭のレジェンド大戦で宇宙帝国ザンギャック大艦隊のこれまでの悪の組織と違う規模と物量、そしてそれに対抗するためにスーパー戦隊画力を使い果たしたことが説明される。その力を受け継いだ35番目のスーパー戦隊はなんと海賊。全員が宇宙人で地球へは「宇宙最大のお宝」を求めにやってきた。しかし同時にザンギャックに対するレジスタンスでもあり決して正義からではなくザンギャックと戦う。早速ゴレンジャー、シンケンジャーデカレンジャーなどに変身する。ここで登場する幼稚園の保母さんが明らかに自分の世代ではないのにゴレンジャーを知っているなどスーパー戦隊が地球を守ってきた、ということが周知されてるのが素晴らしい。この保母さんたちは最終回でも登場する。
 
 

第6話「一番大事なもの」&第29話「アバレ七変化で新合体」

 戦隊シリーズ恒例の女性戦士のコスプレ回。ルカはメイドさんに。そしてアイムは①いつもの格好、②ウェディングドレス、③セーラー服、④看護婦、⑤婦人警官、⑥アバレピンク、そして⑦ゴーカイピンクと七変化。ゴーカイピンクまで含めるなら毎回七変化してるようなものでそれはそれですごいのだがやはり素顔の女性戦士にはかなわない。ルカもアイムもそれぞれ違った魅力でよかった。またこれらの回で出てくるザンギャックの行動隊長(怪人)が個性的でトリッキーで魅力的なものが多い。これもゴーカイジャーの魅力の一つだろう。

 

第8話「スパイ小作戦」

 で、その行動隊長の魅力を全面に出したエピソードの一つ。身体の大きい弟ヤンガーとボール大の大きさの兄エルダーの兄弟でエルダーがゴーカイガレオンに潜入してスパイをするという話だが全面ギャグ回。どうにも憎めない行動隊長だった。映画「ゴーカイジャーVSギャバン」でも(死んだ弟の代わりに妹と)再登場したことからもその人気が伺える。そしてそのユニークな行動隊長の中でも最たるものが次の・・・
 
 

第14話「いまも交通安全」&第24話「愚かな地球人」

 ある意味一番の問題作。ジェラシット登場。一応レジェンド回で「激走戦隊カーレンジャー」から陣内恭介登場。「カーレンジャー」の時同様サル顔の地球人なのに敵の女性幹部(インサーン17歳)に惚れられる。てかオリジナルでは変身した姿を素顔と勘違いしたゾンネットに惚れられるのだが、こっちでは普通に素顔に惚れてたなあ。そして恭介に惚れてるインサーンに惚れてるのがジェラシット。ジェラシーパワーで圧倒するが最後はギガントホースまでぶっ飛ばされる。しかし死なずに第24話では粗大ゴミとして捨てられてるところをたこ焼き屋にペットとして飼われることに。日本家屋で大勢の宇宙人が家族会議するさまは実にシュール。そしてジェラシットはたこ焼き屋の母親を守り(ジョーいわく「お前本当はすごく強いだろ」)信頼を得るが結末は更にびっくり!ジェラシットはたこ焼き屋の母と駆け落ち、地方の旅館で楽しく慎ましく暮らすのだった!
 このシュールな脚本を書いたのはオリジナル「カーレンジャー」メインライターで「ペットントン」などで不条理ギャグをやらせたら日本一の浦沢義雄。「忍たま乱太郎」なども手がけてるけどやっぱり実写特撮のほうが不条理さが生きるんだよねえ。とにかくジェラシットはゴーカイジャーオリジナルキャラの中でも一、二を争う名バイプレーヤーでした。アイ・ラブ・ユー
 
 

第15話「私掠船現る」

 マーベラスのかつての仲間でアカレッドマーベラスを裏切ったバスコ・ダ・ジョロキア登場。ザンギャックがどちらかと言うと組織的にしっかりしていて悪くなりきれてないというか普通の軍人ぽい感じなのに対して一癖も二癖もある徹頭徹尾悪人を貫いた人である。「大いなる力」を本人の意志に関係なく無理やり奪い取ることが出来る。

何かを得るためには、何かを捨てなきゃ。オレ、あんた達捨てるよ

 バスコは途中で怪人態にもなったが圧倒的に演じた細貝圭の力が強く、久々の素顔の悪人にしびれた。最後まで改心しなかったのも良い。極端な話、アクドス・ギルよりこっちのほうがラスボスにふさわしかったんじゃないの?という気すらする。悪役としても近年上位に入るキャラクターだった。

 

第17話「凄い銀色の男」

 今や恒例となった6人目追加戦士、ゴーカイシルバー伊狩鎧登場。鎧はスーパー戦隊オタクの地球人で正義感も半端ない。偽悪を貫きあからさまな人助けを嫌いさえするゴーカイジャーとは当然摩擦が起きる。演じた池田純矢くんは実際に戦隊マニアでギャバンも事前に知ってたのは彼だけだったとか。通常スーパー戦隊は初期メンバーの中でもレッドが主役で追加戦士はあくまで脇役であったが鎧は明らかにもう一人の主役として登場しており、当然のことながら宇宙人で(その力を利用しながら)余りスーパー戦隊に詳しくないゴーカイジャーと違って我々視聴者を代表するキャラクター。後のエピソードでそんなマーベラス達(主にマベとジョーとルカ)と鎧の温度差が縮まっていくところも見所である。
 
 

第20話「迷いの森」

 ギンガマン登場回。そういえばギンガマンの敵は宇宙海賊だったのだな。リョウマとヒュウガの兄弟が登場しヒュウガが「オレは黒騎士でありたいわけじゃない。この星を守りたいんだ」といい力を欲し、自分よりヒュウガのほうがゴーカイシルバーにふさわしいんじゃないかと悩む鎧。ヒュウガ役の小川輝晃さんは「忍者戦隊カクレンジャー」のサスケでもある。そして全然格好良さが変わってない。このままカクレンジャー回にも出て欲しかったな。そして照英にも出て欲しかったな。
 
 

第25話「海賊とニンジャ」&第26話「シュシュッとTHE SPECIAL」

 ハリケンジャー登場。通常のレジェンド回はレギュラーメンバーのうち一人か二人だけ登場し、ゴーカイジャーに力を託す、という形が多いのだがこの前後編はハリケンジャーが3人とも勢ぞろいし、一時的に力を取り戻し変身、あまつさえゴーカイジャーと共に名乗りを上げる、というまさに「ゴーカイジャーVSハリケンジャー」とでも言うべきスペシャルな回であった。長澤奈央さんはハリケンジャー以降も「仮面ライダーW」でリリィ白銀、「仮面ライダーフォーゼ」でも教師、宇津木遥役として出演、今が一番美しい。フォーゼはレギュラーにならないのかなあ。

 

第28話「翼は永遠に」

 鳥人戦隊ジェットマン回。ジェットマンは放送当時「戦うトレンディドラマ」と言われるほど恋愛描写に力を置いていた。メンバーの女性戦士(ホワイトスワン)に男性戦士全てが恋心を持ち、更に敵女性幹部やロボット幹部まで絡む始末。そしてその中で一番象徴的だったのがクールなブラックコンドルこと結城凱。ラストはレッドとホワイトの結婚式に向かう最中、チンピラに刺されて死ぬ、という衝撃的なものだった。今回はそれを受けて天国から凱がやってくるというエピソード。勿論演じるのは若松俊秀。いわば幽霊で地球人である鎧にだけ見えないというおまけ付き。更にはマーベラスのトラウマ解決も手伝って(敵が赤いボバ・フェット!)傑作回となった。
 ジェットマンの中では僕はブルースワローのアコちゃんが好きだったんだけど(彼女はほぼ唯一恋愛関係から自由だった人)やはり「ジェットマン」を象徴する人物としては凱なんだよね。
 
 

第40話「未来は過去に」

 タイムレンジャーゴセイジャーシンケンジャーの回。未来から豪獣ドリルに元タイムイエロー、ドモンからのメッセージが。「西暦2010年10月2日へ飛び寝隠神社を守れ」とのこと。指示に従い豪獣ドリルで過去に移動するゴーカイジャー。そこには外道衆が現れ、近くではゴセイジャーシンケンジャーが血祭のブレドランと戦っていた!
 というわけで映画「天装戦隊ゴセイジャーVSシンケンジャー エピックon銀幕」におけるゴーカイジャーの登場はきちんと意味が合った、という展開。僕はイベント、と割り切っていたつもりだけどたしかにあのままだと矛盾が生じるし(それは「ゴーカイVSギャバン」のゴーバスターズも同様)まさかきちんと整合性をつけてくるとは思わなかった。
 更に途中で出会う少年とその母親の正体とか、マトリンティスのマトロイドプロトタイプがゴーカイジャーにやられたため強化した(つまり、ゴセイジャーが苦戦したのはゴーカイジャーのせい?)とか伏線の貼り方がこれでもなく上手い回。勿論タイムレンジャーにおけるドモンのエピソードを知っていると泣ける要素もある。

 

最終話「さよなら宇宙海賊」

 最終話。大いなる力を使わずスーパー戦隊としての自覚も持つゴーカイジャーたち。とにかく巨大戦無しの等身大バトルの釣瓶打ち。フリージョーカー(バスコの船)でギガントホースに乗り込みギガントホースからザンギャック艦隊を殲滅。そしてアクドス・ギルと対決。過去の34の戦隊に次々とゴーカイチェンジしついにアクドス・ギルを倒す。
 最終回はバトルもさることながら、バトルのその後も見ものだろう。ゴーカイジャーは念願のカレーを食い、そして鎧もつれて宇宙へ旅立つ。新たなお宝を目指して今度はザンギャック本星へ向かう!ところで内部分裂を始め宇宙全土での影響力を失ったザンギャックって壮絶な内乱の予感がするのだけれど・・・
 旅立とうとするマーベラス達の前に第一話の保母さんと子供たちが登場。ゴーカイジャーを地球を守ってくれたヒーローだと言うが、「自分たちはただの宇宙海賊、別に地球を守ったわけじゃない」と最後は偽悪に元通り。最終回直前でスーパー戦隊として正義の味方の自覚を持ったのにあえてこの態度が素晴らしい。
 そしてレンジャーキーの力を地球に解き放つマーベラス。すべての力が過去の戦士たちのもとに帰っていく。
 レンジャーキーを手にしたレジェンド達の姿も映していく。個人的にはドギー・クルーガーとシグナルマンののツーショットが涙モノ。最後は海城剛ことアカレンジャーによるエール。そしてガレオンはザンギャック本星へと向かうのだった。
 
 勿論、これ以外のすべてのエピソードが傑作といっていいくらいなのだが、とりあえずこんなところで。スーパー戦隊は懐が深いのでシリアスな回もあればおもいっきりギャグの回もある。それでもきちんと一つの作品として成立するのが凄いところだ。「ゴーカイジャー」は比較的前後編2話のエピソードも多かったが、全部を仮面ライダーみたいに2話で一つののエピソードにして2年ぐらいやって欲しかった感じだ。まあ、レギュラーキャストは丸々これにかかりっきりになるので難しいのだろうけど。
 次は少しレスキューポリスぽい雰囲気もある「特命戦隊ゴーバスターズ」。メタルヒーローっぽい部分も多分に感じられこのためのギャバン復活だったのかな、という気がしないでもない。
 一応これで「海賊戦隊ゴーカイジャー」本編は終わったが、とりあえず4月に「仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦」が待ってますよ!仮面ライダー側のメインがディケイド(とフォーゼ)ということで少し不安だったのだが、もしかしたら「ザンギャック本星に向かうゴーカイジャー」というシチュエーションはこの映画につながるのかな。ディケイドがショッカーの首領で、マーベラスがザンギャックの皇帝で、みたいな話しらしいですよ。うーん、怖い。ディケイドでの「シンケンジャーの世界」はどうなったんだろう?
 

関連記事

ディケイドはターンA になりえたか? - 小覇王の徒然はてな別館
殿が外道で天使と海賊 天装戦隊ゴセイジャーVSシンケンジャー エピックON銀幕 - 小覇王の徒然はてな別館

 とりあえずその「スーパーヒーロー大戦」含めてまだしばらくはゴーカイジャーは頑張ってくれるはずなのでゴーバスターズともども楽しみにしましょう。
まだまだ派手に行くぜ!!

スーパー戦隊シリーズ 海賊戦隊ゴーカイジャー VOL.1【DVD】

スーパー戦隊シリーズ 海賊戦隊ゴーカイジャー VOL.1【DVD】

*1:ただしそれが上手く実るのは去年の「MOVIE大戦MEGA MAX」まで待たねばならない