The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

ユアンのオキテ 人生はビギナーズ

 昨日、2月7日はTVドラマ「相棒」の及川光博ことミッチーが降板する、というニュースを聞いて「えー、まだ3シーズンだけじゃん。早いよ*1」などと意気消沈していたのだが、まあ殉職ではないだろうし(違うことを祈る!)前向きに捉えよう、などと思っていた。
 で、それとはそんなに関係なくユアン・マクレガー主演の映画「人生はビギナーズ」を観てきた。相変わらず事前にどんな内容の映画かは全くわかってませんでした。
 

物語

 75歳。44年連れ添った妻が亡くなってゲイであることをカミングアウトしたハル。これからの人生をゲイを究めるために使うと宣言する。ゲイの仲間たちと遊び、年下の恋人まで作る。
 5年後、ハルの息子オリヴァーは父の遺品を片付ける。家と犬。悲しみの歴史。そして彼は風変わりな女性アナと出会った。

 ユアンの主演作といえばついこの間、エヴァ・グリーンとの共演作「パーフェクト・センス」を観たばかり。今回は引き続きフランス出身の女優と共演。お相手は「イングロリアス・バスターズ」「オーケストラ!」のメラニー・ロラン。このところユアンはビッグ・バジェットなアメリカ映画よりも小粒な良作に立て続けに出演している。今作も一応アメリカ映画だけど雰囲気的にはどことなくヨーロッパの香り。

 映画は監督であるマイク・ミルズに実際に起きた出来事でオリヴァーを演じるユアンを軸に父親であるハルとの日々とハルの死後であるアナとの日々を交互に描いていく(時折幼いオリヴァーと母親のシーンも入る)。過去と現在が交互に映し出されていくのは前回の「J・エドガー」と共通している。ただしあちらが主人公の若い頃と晩年と時間差が大きく主人公もメイクによって変化しているので分かりやすいのに対し、こちらは大きく幅をとっても5年、下手すると3ヶ月くらい前の出来事と現在を交互に映していく。また、シーンの切り替えでワイプが合ったりするわけではないのでその意味ではオリヴァー一人だけではどっちのシーンなのか分かりづらかったりする。だから必ずハルかアナの存在が重要になる。
 ハルを演じているのはクリストファー・プラマー。75歳でカミングアウトするのだが彼が実にキュート。若い恋人とじゃれあい、人生を満喫する。劇中では昔の彼はほとんど出てこないがなんとなく想像できる。男らしくあろうと無理をして頑固な仕事人間を演じてきたのだろう。また彼の青春時代には同性愛者は病気であり治るもの、あるいは治すべきもの、と思われてきた。日本でもそういう考えの人は未だに多そうだが、病気でも何でもない、そのように生まれてきただけなのだ。彼が一生懸命ノンケを演じてきた夫婦時代、オリヴァーの記憶では夫婦仲はあまりよくなかったように思える。どちらかと言えば奔放な母親と仕事に生き家庭を顧みない父親、という感じだったのだろう。だからオリヴァーは小さい頃の父親の記憶が無い。この辺の病気の父親と息子の関係はユアンが出てるということもあってティム・バートン監督の「ビッグ・フィッシュ」を思い出す。あちらではユアン父親(の若いころ)の立場だったが死に及んで父親の本質を知る、という点では共通したものがあると思う。あの作品もティム・バートン父親の死とそれによる関係の再構築が作品に影響を及ぼしていた。自分の息子と同じくらいの恋人アンディとの関係も見ててほんわかしてしまうし、何気にこの作品の一番の見所はプラマーのキュートな演技だ。


 一方、女性のヒロインは少し不思議な美女、メラニー・ロラン演じるアナ。女優でありホテルで暮らしているがオリヴァーと出会った時は話せない状態。別に喋れないわけではなく一時的なものだったがこれが彼女の不思議さを倍増している。
 彼女は1971年生まれという設定で32歳なわけだが(劇中は2003年)勿論実際はもっと若い。ユアンが彼女の胸に顔を埋めるシーンがあるが思わずユアンの顔でけえ!と思ってしまうがそうではなくむしろ彼女の顔が小さいのだな。表情や衣装によって様々な魅力を見せてくれます。一応ベッドシーンもあるけれどそこはアメリカ映画なので抑制の効いたもの。ヌードはほぼゼロだけどちらっと見える気がする(オレには見えた!)。
 オリヴァーともう一人、いや一匹ハルとアナ両方に絡んでくるキャラクターがいる。それが犬のアーサーだ。ジャック・ラッセル・テリアでオリヴァーやハル、アンディといった家族の前では鳴かないが離れると鳴く。また、オリヴァーやハルは彼と喋る。ここはただ犬のアップに字幕が出るだけなのでハルたちがそう思い込んでるだけ!ととることも可能だがこのアーサーも魅力的なので実際に喋ってるように思えてしまう。喋る犬といえば似た犬種であるミニチュアシュナウザーが喋る「ユンカース・カム・ヒア」や「マルモのおきて」を思い出すがあんなにがっちり喋るわけではないです。それでも鳴くシーンが無いことも手伝って(鳴く時はオリヴァーと別れて部屋野中に入るときなので観客からは見えない)だんだんしゃべっているように見えるから不思議。 
 
 今回のユアンイラストレーター。コピックを手にその時々の思いをイラストにしてみせてくれるのだが、一応これ、ミュージシャンのCDのジャケットを依頼されて製作したものだったりする。依頼者は肖像画のイラストを希望してるのに「悲しみの歴史」とか提示されちゃかなわんだろうなあ。今回はかなりおとなしめで偏見などとは無縁な真面目で良いキャラではあるものの、どちらかと言うと主人公でありながらハルやアナの触媒となるキャラクターのように思える。裸にもならないしね。それでもやっぱりユアンは魅力的なんだよなあ。特に声が。向こうの俳優さんって女優さんが意外に声が低くて、逆に男優が声が高かったりしてイメージと違うことがある。この作品でもメラニーさんの声は意外と低めなんだけどユアンの声は相変わらずステキ。
 この作品、実際のところ大分キャストに助けられていると思う。もしこれがユアンじゃなかったら、クリストファー・プラマーじゃなかったら、メラニーじゃなかったら、魅力は半減してしまうのではないだろうか。それぐらいキャストは魅力的だった。個人的にはクリストファー・プラマーといえば「サウンド・オブ・ミュージック」のトラップ大佐であるのでユアンと二人で歌をうたうシーンとかあれば最高でした!ユアンも「ムーラン・ルージュ」で歌ってるしね! 
 ちなみに、クリストファー・プラマーとアンディ役のゴラン・ヴィシュニック(彼も実にチャーミングだった)の公開待機作は「ドラゴン・タトゥーの女」である(チケット確保済み)。
 ユアンの映画が月一で見られるのは幸せなことですよ!
 

おまけ

「相棒」が神戸くん卒業ということで次の右京さんの相棒は誰だ!というのが僕も含めて盛り上がっているわけですが、2月8日の放送見て「残念なイケメン第一号、陣川くんはいいけど第二号の相原さんは遠慮したいなあ」と思ったりしましたです。

*1:突然ではなく当初からの予定だった模様