The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

ガテン系ヴァンパイアVS目指せ脱オタク フライトナイト/恐怖の夜

 今年に入って最初の洋画鑑賞。「フライトナイト/恐怖の夜」を鑑賞。1985年に公開された吸血鬼映画「フライトナイト」のリメイク作品。オリジナルは観たことがあったかどうか。見れば思い出すと思うが「ロストボーイ」あたりとごっちゃになってよく覚えていない。

物語

 ラスベガス郊外に住むチャーリー。母親と暮らす彼は最近学内でも一番の美人を彼女にして学園生活を満喫していたが微妙に居心地の悪さも感じていた。そんな折、かつての親友で今は疎遠となったオタク少年エドからやはり昔仲間だったアダムが行方不明になったと聞かされる。エドが言うにはチャーリーの隣の男、ジェリーこそが真犯人で彼は吸血鬼だというのだ。エドの話を一笑に付したチャーリーだがその日を境にエドは姿を消した・・・
 翌日姿を見せないエドを懸念したチャーリーは彼の家へ行く。彼の部屋でジェリーを盗撮したビデオを発見する。しかしそこにはまるで透明人間のように映ってはいなかった・・・
 その夜、チャーリーの元をジェリーが尋ねる。女の子とパーティーをするのでビールを貸してくれてという。しかし彼は家の中には入って来なかった。そして女性の悲鳴が。なんとかジェリーの家に侵入し女性を助けだしたが彼女は日光を浴びた途端爆散した。全てはジェリーの思うがまま。
 チャーリーはラスベガスでヴァンパイアショーを主催しヴァンパイア退治のスペシャリストと称するピーター・ヴィンセントの力を借りるるべく彼の元を尋ねる・・・

 何と言っても肉体派吸血鬼ジェリーを演じるコリン・ファレルが格好良い。あの太い眉にタンクトップやTシャツという扮装は到底吸血鬼らしくはない(とはいえ彼は吸血鬼文学の金字塔、「吸血鬼ドラキュラ」のブラム・ストーカーや「吸血鬼カーミラ」のレ・ファニュと同じアイルランド出身である。まあ吸血鬼そのものは東欧がメインだけど)。吸血鬼といえばニンニクが弱点、というのがあるけどむしろニンニクをたくさん食べてそうな精力的な雰囲気。「臭いで分かる」とか鼻が効くことを説明するセリフがあるが僕なんか観ながら心のなかで「お前のほうがフェロモンやら何やらで男臭ぷんぷんだよ!」とか思ってしまった。ただ、吸血鬼役に合ってないかというとそれはまた別で、現代に生きる時代に対応したヴァンパイアを上手く演じている。ただ、ヴァンパイアとして本性を現した時の特殊メイク姿はあんまり格好良くないんだけどね(モンスター然としてるから、というよりその頭身がおかしい)。

かつてこんなガテンなヴァンパイアがいただろうか。いやいない!
 そして主人公であるチャーリーを演じているのはジェリーより色白で吸血鬼っぽいアントン・イェルチン。「T4」の少年カイル・リースや「スタートレック」でパヴェル・アンドレイェヴィッチ・チェコフを演じた人。チャーリーのキャラがなかなか興味深くて、元々はオタク少年で昔(劇中の自作ムービーから見るにそう昔ではない)は「イケてないグループに属していた」が今は美人の彼女も手に入れいけてるグループに属している。でも彼女が美人過ぎて「なんで自分なんかと付き合ってるんだろう?」と思っててそれがストレスになってるというキャラ。学校ではかつてのオタク仲間とはなるべく接触しないようにしているけどどうやら本当はイケてるグループは微妙に居心地が悪く、オタク仲間に戻りたがっている(ように見える)というキャラ。分かるなあ。アントンくんの絶妙なルックス(ハリウッドでは定番のモジャモジャ系ヘアスタイルにチェックのシャツというオタクファッション)もあって感情移入しやすい。
 その高嶺の花な彼女エイミーを演じているのはイモージェン・プーツという人で僕はこの映画で知ったが(とはいえパンフ見たら「Vフォー・ヴェンデッタ」に出てるらしい。何役だろう?)金髪の典型的な白人美人。とはいえこの人写真で見るより動いてるところを実際に観たほうが数倍魅力的な人だ。今後にも期待。彼女が吸血鬼になってチャーリーを襲うシーンの口を大きく開けたところは見たことがあるような。オリジナルにも合ったシーンなのかな。
 チャーリーのかつての親友役に「キック・アス」のレッドミストことクリストファー・ミンツ・プラッセ。なんとなくレッドミストと似た所がないでもない?でも一発で分かるルックスだなあ。その他、実は腰抜けだけどヴァンパイア退治の専門家ピーター・ヴィンセント(彼の名前はハマー映画でヘルシング教授役を演じたピーター・カッシングと恐怖映画の名優ヴィンセント・プライスから採っている)がヘヴィーメタルのロッカーのような外面とは違う姿も面白い。

僕も覚えていたオリジナルのキービジュアル。これとそっくりなのが今回もあった。
 映画は高校生と吸血鬼、という組み合わせで僕なんかはどうしても「バフィー〜恋する十字架〜」を思いだしてしまうが脚本はやはり「バフィー」を手がけた人。とはいえオリジナルの「バッフィ・ザ・ヴァンパイアキラー」のほうももしかしたらオリジナル「フライトナイト」の影響を受けているのかもしれない。やはり定番と言うか思春期の性のメタファーみたいなものは要所に感じられる。
 話自体は現代を舞台にし、ジェリーのキャラクターやギミック(スマートフォンで鍵開けサイトを見ながら不法侵入とか)が現代風になっているが吸血鬼の設定自体はむしろ古典的。鏡や映像には映らない。日光のもとでは生きられない。その家の住人に招かれない限り入ることはできない。そして十字架や聖水が苦手、など古典的な吸血鬼の要素が目白押し。だからこそヴァンパイアの現代風描写が際立つ。そのへんはすごくうまいと思った。
 
 今回は3Dで見たのだけれど、ところどころ抜群に3Dが効果的な部分はある。特に日光を浴びたヴァンパイアが爆散するシーンは実に効果的。とはいえ別に2Dで充分といえば十分な作品でもある。
 今回気にあったのはこの映画実に画面が暗いのである。大半のシーンが夜など暗闇である、ということもあるがそれにしても暗すぎ。で、時折3Dメガネを外してみたらそれほどでもなかったのだな。3Dメガネを掛けると裸眼で見る時より若干暗くなるのだが、おそらくそのことを計算してなかったのではないか。2Dで見るとどうなのか分からないしもしかしたら上映環境でも異なるかもしれないが。
 
 とはいえ、ホラーとしてもコメディ(そういう要素もある)としても及第点。魅力的な役者が多数出演しているし面白かったです。