勇気、犠牲、成長 トゥルー・グリット
この間同日に観た、「塔の上のラプンツェル」と「ザ・ファイター」は、はしごするにもまったく毛色の違う作品だったわけだけど、思うと「母親の支配からの脱却」という部分が共通しているのだなあ、と。
さて、コーエン兄弟の西部劇「トゥルー・グリット」を鑑賞。コーエン兄弟の映画を劇場で観るのは初めて。どうでもいいけど「バートン・フィンク」のポスターを見るとジョン・タトゥーロではなく、「ゴーストバスターズ」のハロルド・ライミス(イゴン・スペングラー博士)を思い出すのは僕だけでしょうか。
物語
1878年、アーカンソー州。父親を殺された少女マティがフォートスミスに降り立った。父親を殺した犯人チェイニーはインディアン居留地へ逃げ込んだため、後回しになっていた。マティは生前に父が取引をした相手から金を受け取ると独自に連邦保安官に100ドルでチェイニー捕獲を依頼する。連邦保安官コグバーンは「真の勇気(トゥルー・グリット)」の持ち主と称される人物。しかし実態はアイパッチをした大酒呑みの男だった。また、テキサス・レンジャーのラビーフもチェイニーを追っていた。彼に先を越されてはチェイニーはテキサスで犯した罪で裁かれる。何とか父親殺しの罪で裁きを受けさせたいマティは二人に同行することにする。犯人追跡の旅が始まった・・・
これ、ジョン・ウェイン主演の「勇気ある追跡」のリメイク、ということになっているらしい。僕は西部劇は好きだけど(かといってそれほど見てるわけでもないのだが)ジョン・ウェインはあまり好きではないので見ていないのだが日本でこそ映画の方が先に来ているがアメリカでは原作小説(チャールズ・ポーティス「トゥルー・グリット」)が高く評価されていて今回はその忠実な映画化、という位置づけだそうだ。「遊星よりの物体X」と「遊星からの物体X」の違いみたいなものですかね。
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コグバーンは連邦保安官ということだがかなり無頼で(彼が連邦保安官なのに個人的な依頼で動いている事情がよく分からない。詳しい人教えて!)そのルックスやキャラから年老いたスネーク・プリスケンという印象。演じるはジェフ・ブリッジズ。最近よく見るな。
事前に予告編とか見ていたはずなのに出演してることをすっかり忘れていて「ああ、出てたのか!」と思ってしまったのがテキサス・レンジャー、ラビーフを演じているマット・デイモン。この人もクリスチャン・ベールほどではないにしろ出演作に信頼の置ける役者だ。ここではエリートっぽいカウボーイを好演。「テキサスでは馬の蹄の跡に溜まった水を飲むんだ」と苦労話をしてコグバーンに「テキサスの人間はみんなその話をする。聞き飽きた」と一蹴されるシーンは愉快。
それに限らず、酔ったコグバーンとラビーフが的当て合戦をして盛り上がるところとかいわゆるアクション以外の部分が面白い。
追跡の旅を始めて最初の方、木に高く吊るされた男の死体を発見する辺りからしばらく幻想的な画が続く。インディアンに死体を渡したり、熊の毛皮を頭から被った自称・歯医者の老人と出会ったり。
そして出会うマティの父親を殺した犯人、チェイニーを演じているのはジョシュ・ブローリン。予告編か何かで見たときはなんとなく野人っぽいイメージがあったのだが髭もじゃの中にある顔は良く見りゃハンサム。しかし粗暴な男を上手く演じている。後はチェイニーも所属する強盗団のボス、ネッドを演じている人が少ない出番ながら印象に残る。
物語が進むにつれマティも成長していく。元々責任感の強い子だが、その中で過酷な現実を知っていく。正々堂々だけではどうしようもないこと。他人(馬含む)の命を犠牲にしなければ生き延びられないこともあること。そして彼女も自分の一部を犠牲にして目的を果たす。
ラスト、20世紀になり、文明が少し進歩した時代になって時代遅れのコグバーンは「ワイルド・ウェスト・ショー(バッファロービルとかがやってた奴ですね)」の一員になり世を去っていた。マティは彼の遺体を自分の用意した墓へと移す・・・
正統派の西部劇である一方、ファンタジーぽい趣きもある。子供が大人になるための通過儀式。マティの場合その代償は大きかったがそれに見合うものを得たのだろう。なんとなくインディアンのヴィジョン・クエストを思い出した。
機会があれば原作を読んでみたい(可能なら旧作のほうも)。コグバーンの設定、キャラクターが興味深いからだ。彼は途中インディアンと思われる知り合いのところにいくがなぜかそこの子供を意味なく蹴飛ばしたりする。虐待酷い!というよりはユーモラスな場面でさえあるのだがその辺の機微が僕にはまだ良く分からなかった。その辺をよく知りたいから。
さて、この作品製作総指揮がスピルバーグなのだが、スピルバーグの西部劇といえば「アイアンマン」のジョン・ファブロー監督による「カウボーイ&エイリアン」が待ってるぜ!