The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

英雄誕生伝説 イップ・マン 葉問

久々の香港映画。「イップ・マン 葉問」鑑賞。

 タイトルの「イップ・マン」とは人名。漢字で書いたのが「葉問」。この人は詠春拳の使い手であのブルース・リーの師匠に当たる人。その人の英雄叙事詩
 で、これ原題は「葉問2」なんですね。日本では公開されない1作目がある(本作がヒットすれば「イップ・マン 序章」日本公開もありえるそうです。今すぐ劇場へ走れ!)のだけれど、それを知らないと冒頭少しびっくりさせられます。

物語

 戦争が終わり、香港へと引っ越したきたイップ・マン一家。イップ師父は道場を開くがなかなか弟子はやってこない。あるときレオンという若者が入門し、彼を中心に徐々に弟子たちも増えていく。その一方で弟子同士の揉め事が原因で香港の武術界を仕切る洪拳のホンに目を付けられる。イップ師父は香港武術界の師父たちと渡り合い認めあう。
 警察署長ウォーレスの主催するボクシング大会が開かれ、そこでボクシングチャンピオン”ツイスター”が弟子達の演武に乱入され中国武術をバカにする。怒ったホン師父はツイスターに挑戦するが善戦むなしく破れ死んでしまう。
 イップ師父は中国武術の誇りを守るためツイスターに挑戦する・・・

 最初、時代設定が良くつかめてなくて「戦時中かな?それにしては若者の服装が(香港とはいえ)それっぽくないな」とか思ってたのだけどイギリス人の署長が出てきたところで理解。戦後再びイギリス統治下になり少し締め上げを厳しくしていた頃だと推察される(パンフによると1950年)。
 
 主演のドニー・イェンは「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱」でリー・リンチェイの相手役として注目された。その後順調に主演作を増やしており、アメリカで「ブレイド」なんかにも出て(アクション監督もしてる)るがその少し強面なハンサムフェイスが災いしてか日本ではあまり注目されてこなかったように思う。
 確か「香港ブルース・リーファンクラブ」の会長(名誉会長がチャウ・シンチーだったと思う)でもあったような。
 本作では常に穏やかな表情で慈愛に満ちた師父を演じている。いや、これが本当あのドニー先生とは思えないぐらい穏やかなんだよね。けっして身長も高くはないので全体的にも威圧感がまったくなく、武術以外でもこんな師父がいたら最高だろうなあ、と思ってしまう。
 イップ師父は香港で道場を開くため道場主のギルドみたいなところで許可を得るため線香が燃え尽きるまでテーブルに立っていられたら無問題、という試練に出会う。ここで与謝野馨似の師父と戦ったりするわけですが、その試合シーンが素晴らしい。詠春拳はどちらかというと手技が多い接近戦主体の武術のようで非常に無駄がない。ジャッキーみたいにスラップスティックに飛び回るのではないし、下手すると非常に地味に見えてしまうのだがまるで良質のバレエを見ているかのようだ。試合のシーンはミュージカル映画におけるミュージカルシーンのようでもある。
 
 で、対するホン師父役はあのサモ・ハンサモ・ハン・キンポー)なのですね。世界一動けるデブだったこの人も「燃えよデブゴン」だった時の愛嬌は鳴りを潜め貫禄十分。そして彼との間に少し友情が芽生えた頃に悲劇が起こるわけです。
 その他、瑛太似のレオンや、若い頃の伊武雅刀似の人とか脇もしっかりしてる。 
 ボクシングVS中国武術というと現在の我々からすると「そんなの中国武術の圧勝だろ」とか思ってしまいそう。例の

グラブをハメる。 蹴り技がない。 投げ技がない。 締め技がない。 極め技がない。 以上の理由で君らは闘技者として不完全だッ

というロジックで「ルールに則ったスポーツとしてはありだけど、総合や異種格闘技ではどうなの?」思ってたんだけどこれが意外にスウィングする良試合に。まあ、相手のチャンピオン(エージェント・スミス似)役の人も武打星として下地があるんだろうけど。途中チャンピオン有利にするため「蹴り技禁止」とかになるんだけど元々詠春拳は手技が中心だし最後まで見所のある試合だった。
 
 
 で、これ物語を要約すると「ロッキー4」なんだよね。イップ・マン=ロッキー、ホン=アポロ、ツイスター=ドラゴなわけで。なので盛り上がらないはずはなく、そこに中国武術の誇りとか民族性まで放り込むことでこの上ないエモーショナルな作品に仕上がっています。
 
 で、最初にこのイップ師父はブルース・リーの師匠といったのだが、最後の最後で子供の時期の李小龍が登場。こましゃくれた生意気そうなガキ(実際この時期のリーは悪がきとして有名だったはず)なのだが仕草とかからもう李小龍なのは丸分かりなのでこの辺になるともう頬がゆるみっぱなし。
 ただ、ブルース・リーってこの頃ってまだ「李振藩」だったような。原語ではどう言っているんだろう?個人的にはここは「李振藩」で通して「このガキ誰だ?」と思わせておいてその後「ああ、ブルース・リーだったのか!」とした方が効果的だったように思う。
 いずれにしろ、凄い傑作でした。今後、ドニー先生の映画は「孫文の義士団」など公開されるようなのでチェック!
 とりあえず「イップ・マン 序章」を早く公開するように!

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