The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

血まみれな痛い青春 キック・アス

初めて鏡の前に立った時はコミックなんてデタラメだと思った。マスクを被るのにトラウマなんていらないんだ
両親が射殺された経験もいらない…
宇宙放射線やパワーリングもいらない
100%の絶望と孤独…必要なのはそれだけだ

 12月公開の映画「キック・アス」の原作コミックスを読了。既に映画は映画秘宝まつりで観ているが正式公開になった折にはもう一度観に行く予定。

キック・アス in 映画秘宝まつり - 小覇王の徒然はてな別館

 で、その原作。映画化されたものはストーリーは原作に大筋で忠実だが受ける印象は大分違う。映画は人体破壊描写こそ容赦ないがあくまでコメディ*1なのに対してコミックスはシリアスである。いくつかのオチも変わっている(後述)。

キック・アス (ShoPro Books)

キック・アス (ShoPro Books)

 作画を務めているのはジョン・ロミータJrでお父さんのジョン・ロミータ・シニアもアーティストだった2世アーティスト。日本で発売されてるものだと「パニッシャーバットマン」辺りが有名か。マーベルを主戦場に乾いたタッチの絵を書く人で僕は結構好きなアーティストである。以前に「マーベルX」誌上で見たときは金髪のロン毛で北欧のヴァイキングみたいな印象があったのだが巻末の作者紹介の写真は髪も短くなっている。
 一方ライターはマーク・ミラー。こちらはフランク・ミラーの縁者・・・ではなく同姓なだけ(多分)。映画化された(僕はまだ観てない)「ウォンテッド*2の原作者で日本で発売されているのだと僕はあまり好きではない「アルティメット」シリーズとかか。といっても好きでないのは日本の漫画やアニメのデザインの影響を受けた絵柄の方で物語ではないのだが。後はスパイダーマンが正体を明かしたり、キャプテン・アメリカが暗殺されるきっかけとなった衝撃長編「シビル・ウォー」を手がけた人だ。
 さて、二人ともマーベルで活躍してる作家だが、この作品もマーベルからは発売されている。とはいえ従来のマーベル・ユニバースではない。出版社ではなく作家が著作権を持つ”アイコン”レーベルという新しいレーベルからの発売だ。DCのバーティゴのように大人向けの、それゆえに血まみれ描写もOKなレーベルのようだ。そして影響はむしろマーベルコミックスよりDCの方から多く受けているように感じる。言うまでもない「ウォッチメン」から。
 「ウォッチメン」のミニッツメンの現代版。それが映画を観た時の印象だが今回コミックスを読んでその印象をより深く感じた。超能力を持つヒーローは登場しない。結局のところ現実でヒーローをやるとしたらパニッシャーになるしかないのだ。ヒットガールたちの通った後は死体の山が築かれる。
 キャラクターのデザインは主人公キック・アスこそ映画・原作共に同じだがその他、ビッグ・ダディ、ヒットガール、レッドミストらは原作の方が手作り感満載である*3

 

映画との違い(ここより2重のネタばれ!)

 注!映画公開前ですが原作と映画の違いについて触れます。結末部分に触れるので2重のネタばれになりますので注意!
 
 映画は出版前から企画されマーク・ミラー本人が深く関わってるということで印象の違いというのは狙ったものであるとは思うのだが、映画とコミックスで大分異なる部分がある。
 映画ではビッグ・ダディに復讐という動機が与えられる。原作でもヒットガールは父親のその動機を信じているが、実際は単なるコミックオタクであり、元警官でもなく妻は単に浮気して彼の元を去っただけ、ギャングを襲ったのはヒーローにはヴィランが必要だと信じていたからだ。娘に嘘をついて冥府魔道へと誘う。ヒットガールは単なる児童虐待である(いや動機が復讐だった映画でも十分児童虐待なんだが)。
 そしてキック・アスはゲイと勘違いされることで憧れの女子ケイティと親しくなるが映画ではゲイではない、とカミングアウトした後で正式に付き合うハッピーエンドだが原作だとケイティにキレられた後、彼女のボーイフレンドに殴られる。

家に帰ると、携帯にはケイティの仲間から中傷メールが15通とカールにフェラしてる彼女の写メが届いてた
人生で最悪の出来事だ。
…白状すると、その後、幾晩かその写真でオナった。
そして泣いた

 これがキック・アス側の最後の締めのシーンだ。
 そして原作と映画の最初のシーンにつながる。キック・アスたちの影響を受けたバカ共がコスチュームをつけて町を練り歩くだろう。そしてそれに対抗するヴィランが現れることも。「ダークナイト」でバットマンの出現によってゴッサムの何もかも変わりジョーカーやトゥーフェイスが現れたように。

どうやら、ヒーローも短期的ブームから、アメリカの日常の一部となりつつあり、消え去るのではなく、存在し続けるようだ。
 善かれ悪しかれ……。

                       (「ウォッチメン」より「仮面の下で」から) 

そのほか最近買った漫画

 「それでも町は廻っている」第8巻。今回は髪の短い歩鳥が多い。一度全エピソードを時間順に並び替える表を作ってみたいんだけど、既に誰かやってるかな?アニメも放映中。正直違和感の方が多いかな。オープニングは最高なんだけど。

それでも町は廻っている 8 (ヤングキングコミックス)

それでも町は廻っている 8 (ヤングキングコミックス)

 
 「よつばと!ももう10巻。今回は新キャラとしてみうらの母親が登場。これまで「よつばと!」のベストヒロインはあさぎだったんだが、これは・・・
よつばと! 10 (電撃コミックス)

よつばと! 10 (電撃コミックス)

 
 最後に「キック・アス」で気に入った台詞。 

ギャラクタスがただのガス雲だとォ?
分かってねえな、あの紫メットがバクスタービルの上に現れてみろよ…
観客が腰を抜かすぜ!

 そうだよ!俺が見たかったのはSF的にリアルなものじゃなく紫のメットにローマ風のトーガ着た巨大なおっさんが見たかったんだよ!

 映画を観たらまた何か書くかも!

*1:劇場では笑いが絶えなかった。もっとも劇場(秘宝まつり)の雰囲気も関係したかもしれないが

*2:映画化されたものは設定が大分違うらしい

*3:映画のほうが意図的にバットマンとロビンに模ししているのだろう