The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

激突!ローライダー軍団! マチェーテ

 テキサス州といえば西部劇の舞台で食人鬼がいて有名プロレスラーを多数輩出してる、とかそんなイメージを持つ人が多いだろう(偏見による断言)。ニューヨークやロスとは違う別の意味での最もアメリカらしい州という感じがするのではないだろうか。あ、後日本人が想像するより湿気が多くて暑いは暑いけどからっとした暑さではなくじめじめした暑さらしいですよ。
 しかし、そんなテキサスは元々メキシコだったのである。
 あえて記憶のみを頼りに書くと(詳しい人添削してください)元々テキサス州はメキシコ領であった。しかしメキシコは奴隷制度の廃止を宣言。テキサスに入植してた白人達は
奴隷解放なんてクソくらえだ!」
とメキシコから独立を図る。メキシコもそんなことは許さねえ、と怒り、戦争が勃発。有名なアラモ砦の戦いでテキサス軍が壊滅し「アラモを忘れるな」を合言葉に今度はテキサス軍がメキシコ軍を撃破。テキサスはテキサス共和国として独立。その後「同じ奴隷制の国だし一緒になるべえよ」とアメリカに併合されテキサス州となる。これだけ見るとテキサスの方が悪い者。まあ、テキサスからすれば「白人の入植制限しやがって」とか「メキシコは軍事独裁政権、俺らは民主主義」とかあるんだろうけど。
 そういうわけで当然だが現在テキサスはメキシコと国境を接している。そのためメキシコからの不法移民が絶えないし、当然元々住んでいるヒスパニック系も多数いる。一方で白人の国としては保守的な地域のイメージもある。

 で、そんなことを頭に入れながら見るとより分かりやすい、超娯楽映画「マチェーテ」を観て来た。監督はロバート・ロドリゲスで主演はダニー・トレホ。元々はクエンティン・タランティーノと一緒に組んだ企画「グラインドハウス」の中の偽映画予告編集の一つを実際に映画化したもの。そのほかにはロブ・ゾンビの「ナチ親衛隊の狼女」、エドガー・ライトの「Don't」、イーライ・ロスの「感謝祭」とかがあった。
グラインドハウス」の時の偽予告編はこちら
 改めて見ると、ちゃんとこの通りに作ってるんだなあ。もちろん役者とか違う部分もある。てか同じシーンはそのまま流用してる?
 「グラインドハウス」の時は劇場では「デス・プルーフ」の方しか見てないのでロドリゲス映画は「シン・シティ」以来か(「プレデターズ」はエンドクレジットが出るまでロドリゲス監督作品と勘違いしてたけど)。正直「プラネット・テラー」よりもこちらの方がグラインドハウスっぽい。

物語

 場所はテキサス。保守系議員デニーロはその極端に排他的な移民政策にさすがのテキサス人民もどん引き、支持を大きく下げていた。ここらで一発逆転、テロの標的にあったと自作自演して同情票を集めようと画策。哀れな当て馬に選ばれたのは不法移民の日雇い中年。15万ドルと「メキシコ系のため」と言い含められて実行犯役をやらされる(本人は実際に殺る気満々)。実はメキシコの麻薬組織&白人自警団と連立してた議員の側近達に犯人として消される予定の日雇いだったが裏都庁(byすぎむらしんいちリチャード・ウー)の連中に助けられ生き延びる。復讐を開始した日雇い。恐れおののく白人達、奴はただの日雇い中年マダオ(by空知英秋)じゃなかったのか?
 そう、彼こそは伝説の元メキシコ連邦捜査官、コードネーム、マチェーテだったのだ!

男性キャスト

 ダニー・トレホはロドリゲス映画ではおなじみ。マチェーテとはいわゆ山刀のことで「13日の金曜日」ジェイソンの愛用武器としておなじみ。最近だと「ホテル・ルワンダ」などで虐殺に用いられた道具でもある。トレホはこれを愛用するためマチェーテの名で呼ばれる(本名不明)。どう見ても堅気じゃない歴戦の戦士を思わせる顔とタトゥーだらけの肉体を持つ。女にももてるがどうにも色気は感じない(これはロドリゲスのベッドシーン演出が下手なんだと思)。兄貴は神父やってるチーチ・マリン
 マチェーテと敵対するはスティーブン・セガールドン・ジョンソンロバート・デニーロジェフ・フェイヒー3大大物+1。メキシコの麻薬王セガール、テキサスの白人自警団長(国境で勝手に不法移民を射殺したりしている。勿論違法)ドン・ジョンソン、ブッシュ似のテキサス州議員デニーロ。そしてデニーロの後援者で地元の金持ち、麻薬のディーラーでもあるフェイヒー。この強力な布陣でマチェーテに立ち向かう。
 ドン・ジョンソンは祖先がアラモ砦の戦いで死んだらしく典型的な白人至上主義者でメキシコ系を目の敵にしてる。「このまま放って置けばテキサスはメキシコに侵略される」とかネトウヨレベルの妄言を吐いちゃう人だ。それで射的の的みたいに不法移民殺してるんだからたまらない。
 そして次々と手下を殺されたフェイヒーが取った最後の手段がテキサス一の殺し屋トム・サヴィーニだ!いやあ、キャストだけ見ると後段の女性陣も含めてめちゃくちゃ豪華だなあ。
 

ロドリゲス分(ミシェルのほうね)

 「アバター」ではいまいちだったミシェル・ロドリゲス姐さんを十分堪能しました。ロドリゲス分は十分摂取できます。前半はTシャツにホットパンツで日雇い労働者相手にタコスを売っているがその正体は裏都庁の都知事。メキシコ移民はもちろん、不法移民も援護する。マチェーテも援護してドン・ジョンソンに目を撃たれててしまう。そしてクライマックスで登場する姿がこれ!

 皮パン半裸にアイパッチ!過去これほど男子の妄想を体現したロドリゲス姐さんがあっただろうか!
 

その他ヒロイン


 ジェシカ・アルバが不法移民を取り締まる移民局の捜査官役を好演。ジェシカはやはりメキシコ系なので裏切り者扱いされているのだが、マチェーテと出会い、最終的にメキシコ系をまとめあげる。ヌードシーンがある、と聞いて期待していたのだが必然性ゼロなパソコンしながらシャワーを浴びるというシーンがあるのみ。残念ながら乳首は見えない。というかジェシカ・アルバはお父さんがそういうのに厳しい人で(完全)ヌードシーンは不可らしいですよ。
 
 後はリンジー・ローハンが敵の娘役で出てる。ヤク中のヤリマンという役作りの必要がないセレビッチ。父親にせがめば都合してもらえるのに待ちきれずヤク製造現場に赴いたり、母親と一緒に庭師と乱交しちゃうような娘だ。ちなみにその庭師がマチェーテなのだが絶対それ以前も別の庭師を連れ込んでるはず。そしてそのシーンでは乳首が見えるのだが髪形が微妙に違うのと肌がリンジーより綺麗、そして顔と乳首が一緒に映ってるシーンがないことからボディ・ダブルかと思われます。というか多分偽予告編のシーン流用だね、ここ。ただ、リンジーは別に裸になっても構わないんじゃないの、というぐらいの露出ではある。
 そのほかは冒頭の全裸娘、セガールの愛人(?)の東洋系娘(上の写真でジェシカに銃突きつけてる娘、最初デヴォン青木かと思ったが違うようだ)とか色々いるが、オススメは負傷したマチェーテを匿う裏都庁系病院の看護婦の双子。不必要に無駄にエロい。クライマックスでも活躍します。

 クライマックスは「白人自警団VSメキシコ移民軍団」なのだがこのときのメキシコ軍が凄い。揃いも揃って乗ってる車がローライダーばかりなのだ。僕は自動車はあんまり詳しくないけれどローライダーって故エディ・ゲレロが入場時に乗ってたみたいに上下に車体が動く車のことでヒスパニック系に人気の改造らしい。どう見ても実用的ではなさそうなのだが、映画の中ではこれできっちり戦闘に役立ててる!
 後は少し気になったのが、この映画スプラッタ映画もかくやという位人体破壊描写があるし、マチェーテは容赦なく相手を殺していくのだがなぜかフェイヒーの警備員だけには甘い。他の敵が内臓ぶちまけて死んでいくのにこいつら(別に堅気ではない)は軽傷ですんで、しかも二回目に登場した時には警備員同士で、
「またマチェーテ現れたらどうする?あいつ強いし、しかも俺達のボスってどう見てもクソじゃん」
とか会話しててまた無事見逃してもらうのだ。
 また非常にバランスは悪い、セックス、バイオレンス、コメディと娯楽映画の要素は全部揃っているのだが、セックスは大味で折角ロドリゲス姐さんやジェシカとそれっぽいシーンがあるのに全然その気にならない。バイオレンスは過激だがシリアスなシーンとコメディにメリハリがないため真面目に見入るシーンで突然ずっこける。何か照れ隠しみたいにギャグシーンを入れるのはどうかと思う。テーマがテーマだけにメリハリをつければ傑作になったと思うのだが。
 後はセガールとの一騎打ちがセガール起用の割にはちょっと物足りなかったなあ。まあ、セガールが悪役演ってやっと似合いの役(納得の麻薬王)をものにしたってことでよしとするか。
 もし続編を作るとすればトム・サヴィーニとの決着を望む!(サヴィーニ先生は途中退場)

本物の予告編。あんまり変わらないね。

ディアスポリス-異邦警察-(1) (モーニング KC)

ディアスポリス-異邦警察-(1) (モーニング KC)

銀魂-ぎんたま- 1

銀魂-ぎんたま- 1

 あ、最後に一言だけ。
トム・サヴィーニ先生がセックス・マシーン(銃武装的な意味で)でなかったのは残念