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再録 名前の話 夫婦別姓の件

 
今回の再録記事は前回に引き続き、「名前の話」、今回は「夫婦別姓」です。一ヶ月ほど前の記事なのでまだまだ最近ですね。<初出2009年10月3日
 
 

夫婦別姓導入へ…政府、来年にも民法改正案 : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 

 というわけで、「夫婦別姓」がやっと実現しそう。来年の通常国会で提出なら、早ければ2〜3年後には実現しますかね。まだ、子供のこととかで法案はまとまってはいないようですが、とりあえず、別姓婚と同姓婚を選択制にする、という方向で行くのは間違いなさそう。

 これは単に選択の自由が増えた、ということで喜ばしいことだけど何故か反対する人たちがいるのは不思議。

 とりあえずそういった人たちの代表として産経新聞から見てみよう(近ごろの産経は突っ込みどころ満載でネタの宝庫だ)。

 

【主張】夫婦別姓 家族の絆を壊しかねない - MSN産経ニュース

 

要約すると

  • 家族の一体感が損なわれる
  • 中高生の6割以上が「両親の別姓」を嫌がっているという別の調査もある
  • 子供は必ずしもそれを望んでいない
  • 親子の絆(きずな)を強めるには、やはり夫婦が同姓でいることが教育上、好ましいことは言うまでもない

 

 子供の件についてはきちんと出典を示して欲しい。そりゃ、今現在の中高生はいきなり変ったら不自然になるかもしれないが,そもそもこの制度の元で産まれた子供達にとっては自然なことになっているだろう。よく両親や(兄弟と)姓が違う、ということでいじめの対象になる、ともいわれるが、仮に30人クラス(その頃はもっと少ないか?)の内3人の子供の両親が夫婦別姓だったとして、わざわざ、いじめの対象になるとは思えない。その頃には制度としても浸透しているだろうし。そもそもこの手の論法で一番気に食わないのは「いじめられる側に責任がある」とでもいわんばかりの主張だ。なんで、いじめる側が悪い、とならないのだろう。

 

 そして、必ずどこでも出てくる「家族の絆が壊れる」論。まずは現在の家庭問題は全て夫婦同姓の制度の下で行われてる事を認識してもらいたい。逆に事実婚で絆の深い夫婦だっているだろうし、金銭や世間体で事実上崩壊しているのに隠している家族などいくらでもいるだろう

 まずは実践してみて、その上で「離婚が増えた」とか「家庭内暴力が増えた」とかでないと説得力が無いのは言うまでもない(と産経のまねをしてみる)。そもそも外国では夫婦別姓の国もあるのにその国では家庭の絆は崩壊している、というのだろうか。

 どうせなら、「別姓にしたくらいで日本人の夫婦の絆は壊れない。日本人は偉大だ!」ぐらいは言って欲しい。それでこそ真の保守、なんて。

 

【金曜討論】夫婦別姓 八木秀次氏、青野慶久氏 - MSN産経ニュース

 こちらは保守ご用達の学者、八木秀次氏と申し訳程度に推進派青野慶久氏の意見がならんでいる。産経の質問が明らかに反対派の立場なのが笑える。

 しかし八木って天皇後継問題のときに「神武天皇y染色体」がどうの、といってたトンデモ学者でしょ。普段大学でどんな授業してるのか非常に気になる。いつも思うんだけど何で右翼はこういう輩を叩かないの?y染色体云々なんて不敬極まりない、と思うんだけど。

 この人の発言で重要なのは次の一言、

 

彼らは別姓の導入と、婚外子の相続差別や女性の再婚禁止期間の見直しの3つをセットで主張する。犠牲になるのは本妻であり、嫡出子だ。

 

 つまり、婚外子や内縁の妻は差別されてもしょうがない、といっているわけだし、女性の300日問題も問題視しない、というわけだ。

 

 一方で、今までの同姓婚は本来個人と個人の契約であるにもかかわらず、家と家のもの扱いされてきた。実質、男性の籍に女性が入る、というのがほとんどであった。その際、専業主婦になる場合、ほとんど不都合は無かったが女性が結婚後も働いたり、自ら事業経営する場合、大きな負担になる。

 先の青野氏の発言、

 

−−旧姓使用で不都合は

 「仕事で旧姓の青野を使えば、損失を最小限に抑えられると結婚当時は思っていたが、実際には大変なことが多い。印鑑を作り直し、銀行口座やクレジットカードなど本名登録の必要なものはすべて登録し直した。女性は、これほどのコストを負担しているのだと思った。その極みが株式の名義変更。創業者の一人としてサイボウズの株を保有しており、変更に数百万円の手数料がかかった」

 −−名義変更に手間がかかるのは結婚時だけでは

 「結婚した時点では社長ではなかったので、青野と西端の使い分けができた。ところが、社長になると契約書に本名を書かなければならない。株主総会では西端慶久と名乗る。東証からの指導で、サイボウズの公式文書は西端で出している。偽名を使って逃げる経営者がいてはいけないから、理屈としては理解できるが、女性の社長が増えれば、同様の経験をする人が増える」

 

 この手間を考えれば夫婦別姓にしたほうが物理的にも精神的にも負担は少ない。

 

 

 さらに反対派の主な理由。

  1. 別姓で家族の絆が壊れる
  2. 子供がいじめに会う
  3. 夫婦同姓は日本の伝統だ
  4. 中国や韓国の夫婦別姓儒教の教えに基づくもので男女平等の視点からではない

 

といったところだろうか。1.と2.に関しては既に述べた。3.以降について考える。

 

 3.夫婦同姓は日本の伝統だ。

 

 夫婦同姓は日本の伝統などではない。日本史に残る女性は皆嫁ぎ先ではなく自分の家の姓を名乗った(例、北条政子、日野冨子、細川ガラシャ)。これはおそらく、次の中国や韓国と同様、儒教的な理由と思われる。

(10/5訂正。細川ガラシャは夫の姓(細川忠興)ですね。ただ、これはキリシタンだったからで、基本は明智 玉だったはず)

 そもそも明治までは一般人や農民は姓を持たなかった。明治以降のかなり強引な戸籍制度の下で夫婦同姓が施行されたのである。それは主に家と家の関わりであり、家父長制度として嫁はその家に完全に組み込まれるもの。

 余談だが日本人は明治維新の際にかなり強引にその民族性を変化させられていると思う。

 いずれにしても、民主的な思考の元での制度とは言いがたい。そもそも結婚は男女個人間の契約に基づくものなのにどちらかの家に取り込まれなければいけないというのはどうみても理不尽。

 

 4.中国や韓国の夫婦別姓儒教の教えに基づくもので男女平等の視点からではない。

 

 これはその通り。でもだったら日本は日本で男女平等、民主的な視点での夫婦別姓を模索すれば良い。別に中国や韓国をまねしろ、言ってるわけではないんだから。それに他にも夫婦別姓の国はある。何度いうけどそれらの国で(夫婦別姓であることが原因で)家族が崩壊している、とのニュースは聞いたことがない。

 

 個人的な話をすると、僕が女性と結婚するとして、僕は自分の姓にそれなりに愛着を持っているので変えるつもりはない。また、僕は結婚後も女性には社会に出て働いて欲しいし、その手間を考えたら同姓にするのは考え物なので、相手がわざわざ僕の姓にしたい、と言い出さない限りは別姓にするだろう。自分がやられたくないことを他人に強制するな、とはよく言ったものだ。すると現行の制度の下では事実婚で済ますしかなくなる。

 はっきりいって小子化、晩婚化などいうなら早く、制度化するべきだと思う。

 もちろん男女平等は女性だけに偏ってはいけない。離婚した際、母親に養育権が優先されることなどは改めるべきだろう。

 

 さて、別姓にした場合の子供の名字だが、子供は全て同じにするか、それとも一人ひとり別途に名字を決めるか(この場合は両親のどちらの姓にするか、ということ)でもめてるようだけど、僕に一つ案が。

 

  • まずは子供の名前は幼名にする。
  • 名字は両親のもの両方を名乗る。
  • 18歳になったところで成人とし、名字の選択(あるいは新しい姓を名乗っても良い)と成人名を決める。

 

 というのでいかがか。子供の名前を幼名ということにすればいわゆるDQNネームでも問題ないし、成人した際に自分の境遇や周りと相談し、ふさわしい名前を自分でつければ良い。現行の名前制度はその辺の応用が利かず、面白くない

 

 最後に言うと、現在のは民主党案にしても法務省案にしても選択制。つまり同姓を選ぼうと思えば選べる。なのになぜ、文句を言うのですか?

 

己の欲せざる所、人に施すことな勿(な)かれ。−孔子

 あれ?最後に儒教に戻っちゃった・・

 

 
 
 
 と書いてから、続報が聞こえないのが不安なんですが。民主党政権も少しずつほころびが見えてきました。勿論こちらも完璧を求めているわけではないし、少なくとも自民党政権では出来なかったことをドラスティックにやってくれればとりあえず、政権交代の意義はあるかな、と思っています。