The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

新年のご挨拶

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新年あけましておめでとうございます!

 今年の干支は亥(イノシシ)。とりあえず猪のキャラって何かいたかな?ってレベルだったのでいきなり「レイザーバック」から。
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 神様なのできっとめでたい乙事主。
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「HUNTER X HUNTER」からはこの人。現在は抜けてるけど(後ついでに来年の干支である子も)。

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 現在の十二支ん、亥はこの人です。
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イノシシに会ったら逃げろ! 

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HUNTER X HUNTER30 (ジャンプコミックス)

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 今年もよろしくお願いします。

 

猛獣?総進撃! 2018年映画ベストテン!

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ヒャッハー!!!

 野生じゃかなわなくても服を着て文明に触れると熊より兎のほうが性質が悪い!とパディントン(声はシンケンレッド松坂桃李くん)と今年のマスコットの座を争い卑怯な手で出し抜いたピーターラビットさん(声はゴセイレッド、千葉雄大くん)。その喜びの様子です。

 というわけでもう気づいたら大晦日!寒さにやられ、年明けてからにしようかな、とか思ったけれども一応挙げましょう!スー*1の選ぶ「2018年映画ベストテン!」

昨年のベストはこちら。 

susahadeth52623.hatenablog.com

  1. メアリーの総て
  2. ボヘミアン・ラプソディ
  3. ピーターラビット
  4. ブラックパンサー
  5. レッド・スパロー
  6. パディントン2
  7. グレイテスト・ショーマン
  8. 累-かさね-
  9. オンリー・ザ・ブレイブ
  10. アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー

 今年はあんまり映画は観れていないのだけど、それでもまあ週一ぐらいの感じでは観てはいます。感想は全然追いついていないけれどなんとか映画ライフを送れてはいます。観た映画もほとんどはメジャーなものばかりなので必然的にベストとして選ぶ映画も特に自分の個性は出てないかもしれないけれど、まあその分誰が観ても楽しめる映画ばかりになっているんじゃないかと。正月休みのお供選びの参考にでもしていただけると幸いです。 

  • メアリーの総て 

 一年に一本ぐらいは出てくる「オレの映画」。まだやってるので観て!「フランケンシュタイン」も読んで! 

フランケンシュタイン (創元推理文庫 (532‐1))

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フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)

フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)

 

 「フランケンシュタイン」違い。

 今年一番多く劇場で観た映画。細部を詰めるとそりゃ色々粗い部分もある作品だけど、これに関しちゃそういう理詰めの批評を物ともしない社会現象、ムーブメントだと思います。こっちもまだやってますね。みんな観ようぜ!「地獄へ道づれ」だ!

Bohemian Rhapsody (The Original Soundtrack)

Bohemian Rhapsody (The Original Soundtrack)

 

そしてここから動物映画4連発だ!野生は弱肉強食!強い順に並べるぜ! 

 兎の皮を被った任侠映画。軍拡とは血反吐を吐きながら繰り広げられる悲しいマラソンなのだ。兎に核のボタンをもたせたら地球は早々に滅びるであろう。軍備拡張が幸せを生むことはないと教えてくれます。

 ワカンダ・フォーエヴァー!

 今年のMCU映画はとにかく大変。 

 赤い雀の淡々スパイ映画。

  喋る熊さん映画第2弾。とにかく丁寧に作られてるので素直に出来がいいと思える映画です。ハッピー。 

 今年後半に「ボヘミアン・ラプソディ」がなければ今年の音楽関連映画といえばこの一本ということでもっと上位だったかも。象も出ます。

  • 累-かさね- 

  今年の邦画では1位。土屋太鳳と芳根京子の演技合戦が見どころ。実際の舞台「サロメ」も見たい! 

映画『累-かさね-』オリジナル・サウンドトラック

映画『累-かさね-』オリジナル・サウンドトラック

 

 実録映画。とにかくクライマックスまで実に楽しい映画なので、事実とはいえ(事実だからこそ)唐突な悲劇が悲しい。

オンリー・ザ・ブレイブ [Blu-ray]

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 大アンハッピーエンド映画。正直、これ一本では評価は難しいです。次の「アベンジャーズ4」によってこちらの評価もまた変わるかもしれません。

 来年は1980年代を舞台にした過去編 「キャプテン・マーベル」から始まって「アベンジャーズ4」「スパイダーマン ファン・フロム・ホーム」と続きます。過去編やちょっと特殊な立ち位置のスパイダーマンで「アベンジャーズ」を挟む形なのでまだまだ安心できない!

 ちなみに「キャプテン・マーベル」の一ヶ月後にはDCのキャプテン・マーベル「シャザム!」が待っているのでキャプテン・マーベルはしごも出来るかもよ?DCEUはサモア出身のプロレスラーみたいな「アクアマン」もあるよ。

 他に面白かったのだと「アンダー・ザ・シルバーレイク」とか「シェイプ・オブ・ウォーター」とか。邦画もわりと多く観た年で大体は良かったですね。特に腹が立つほどつまらなかった!というのも無かったのでいい年だったのかな。とまあ、今年は簡易バージョンという感じでこんな感じです。

そこへ突然来年の干支が!

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兎をぶっ飛ばすウリボウさん*2(十二支んの猪の子供なので)。

HUNTER×HUNTER 36 (ジャンプコミックス)

HUNTER×HUNTER 36 (ジャンプコミックス)

 

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あまりのことに唖然とするブライアン・メイさんとロジャー・テイラーさん。

それでは良いお年を!

 来年は怪獣大戦争です。


Godzilla: King of the Monsters - Official Trailer 1

*1:ツイッターの方でも「小覇王」というHNやめてみました。簡単に「スー」と呼んでください

*2:ゴンさん、多分来年は出番なさそう

創造主、汝の名は女 メアリーの総て

 そして今ふたたび、幸運を祈りつつわたしは醜いわが子を世におくりだす。この子供にわたしは愛着を持っている。幸福だった日々が生みだしたものだから。あのころ、死や悲しみはわたしの心に真実のこだまを持たないただの言葉にすぎなかった。いくつかのページには、わたしがひとりぼっちでなかったころの、散歩や馬車の旅や会話の数々が語られている。伴侶であったあの人に、二度とこの世で会うことはない。でもそれはわたしのひとりごと。こうした連想に読者のみなさんには何のかかわりもないのだから。(創元推理文庫メアリ・シェリー作、森下弓子訳「フランケンシュタイン1831年版のまえがきより)

 多少なりとも読書をする人なら「生涯で一番夢中になった本」というのが存在すると思うのだが、僕の場合、それがメアリー・シェリーの「フランケンシュタイン あるいは現代のプロメテウス」だ。1818年に当時若干18歳の女性によって書かれたこの小説はこの200年間の間に様々な影響を文学史だけでなく映画史や演劇史、そして科学史にまで影響を与えてきた。今年は刊行200周年。そんな僕の最も大好きな小説の作家、メアリー・シェリーの伝記映画「メアリーの総て」を観賞。

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物語

 メアリー・ウルストンクラフト・ゴドウィンは著名な思想家の両親の元に生まれる。しかし女権運動家のメアリー・ウルストンクラフトはメアリーを産んだ際に産褥熱で死亡。父親であるウィリアム・ゴドウィンは再婚したが、連れ子のクレアとは仲が良かったものの、継母との折り合いは悪い。そんな、メアリーがスコットランドバクスター家で出会ったのは売り出し中の詩人パーシー・ビッシュ・シェリー。情熱的なシェリーとメアリーは惹かれ合う。

 スコットランドから戻ったメアリー。シェリーも追うようにゴドウィン家に現れ、ウィリアムの弟子として授業料を払い通うようになる。再び燃え上がる恋の炎。しかしシェリーには結婚して5年になる妻と子供がいた。それでも交際を続ける二人に父親が反対。二人は駆け落ちをするのだった。そこにはクレアもいた。

 しかし理想の生活は上手くいかずすぐに生活に困窮するようになる。そんな中メアリーはクララという子供を産むがシェリーの借金取りから逃亡する無理の末クララは死亡。悲しむメアリーにクレアがバイロン卿のスイスの屋敷に招待されたという。クレアはバイロン卿の愛人となっていた。3人はバイロン卿の元を訪ねディオダディ荘を訪れる。メアリーとシェリー、クレア、そしてバイロン卿とその主治医ポリドリの奇妙な生活が始まった…

  僕が「フランケンシュタイン」を読んだのは高校生の時。当時フランシス・コッポラ監督による「ブラム・ストーカーの原作に忠実に映像化した」という謳い文句で作られた「ドラキュラ」があって、その流れで様々なクラシックモンスターを現代の最新技術で特にホラーという形を取らず文芸作品として映画化する、というムーヴがあった。コッポラ製作、ケネス・ブラナー監督の「フランケンシュタイン(1994)」もその1つ。怪物役をロバート・デ・ニーロが演じたのも話題となった。「ドラキュラ」にしてもこの「フランケンシュタイン」にしても真に原作に忠実というわけではなかったが、それまでのボリス・カーロフフランケンシュタインの怪物のイメージから離れ、きちんと原作通り知的な存在として登場したのは画期的なことであった。

 で、この時に映画にあわせたカバーで出版された角川文庫の「フランケンシュタイン」が僕の読んだ最初*1。以来何度も愛読する作品となっている(以降、原作からの引用は創元推理文庫の森下弓子訳からのものとなります。またメアリー・シェリーの表記は「メアリ・シェリー」が多いですが映画に合わせ「メアリー」表記にします)。

 今回の映画を「フランケンシュタイン」創作秘話としてみた場合メインとなるのはバイロン邸における「ディオダィ荘の怪談会議」*2なのであるが、この映画でも確かに重要なパートではあるが、より重要視されているのはそこに至る経緯であるといえる。まずはメアリーの両親について述べなければならない。

 メアリーの父ウィリアム・ゴドウィンは当時としては急進的な無政府主義者で「政治的正義」などの著作で知られる。婚姻という制度にも反対する立場を採ったが、恋人のメアリー・ウルストンクラフトが妊娠したため子供を私生児にしないため結婚することとなる。これまでの主張を違え教会での結婚を選択したことは多くの支持者を失望させた。しかしメアリーは娘を産んだ11日後産褥熱で死亡する。この娘がメアリー・シェリーである。

 メアリー・ウルストンクラフトは社会思想家で特に女権運動家として知られる。その著作は「女性の権利と擁護」として知られる。娘と違い恋多き人物であったが、最後に結婚し子供を産んで亡くなる。メアリー・シェリーにはその生まれながらにして母親の死がセットとなっていて、そのことはおそらく彼女の人生観にも大きな影響を与えているだろう。また両親の著作にも影響を受けていて父ウィリアム・ゴドウィンのゴシック小説「ケイレブ・ウィリアムス」は「自分の育てたものに追われる」という「追うものと追われるもの」の関係は「フランケンシュタイン」にも強く影響を与えているだろう。事実「フランケンシュタイン」は「政治的正義」「ケイレブ・ウィリアムス」の書名を掲げてウィリム・ゴドウィンに捧げられている。

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 そんな両親のもとに生まれたわけだからメアリー・シェリー(と書いているがこの名前は匿名で出版された「フランケンシュタイン」が第二版でメアリーの名前を出した時にシェリーと結婚していたからでこの映画の中、そして実際に「フランケンシュタイン」を執筆、出版した時は一貫して「メアリー・ウルストンクラフト・ゴドウィン」である)も文学的素養豊かだったのは間違いなく、パーシー・シェリーとの出会いがなくても何らかの形で世に出た可能性は高い。この時期のイギリスの女性作家というと「高慢と偏見」のジェーン・オースティンが有名で、「ジェーン・エア」や「嵐が丘」などのブロンテ姉妹が生まれたのはちょうどメアリーが「フランケンシュタイン」を執筆している時期だったりする。彼女たちに比べると今日、作家としてのメアリー・シェリーの名声は劣るが(実質「フランケンシュタイン」だけの人ではある)、その影響は彼女らに勝るとも劣らない。「クリムゾン・ピーク」では主人公の女性がメアリー・シェリーが好きだと公言することで変人扱いされている、という描写がありましたね。

 映画でメアリーを演じているのはエル・ファニング。現在残っているメアリ・シェリーの肖像画やその残された作品を見るとエル・ファニングはあまりに幼いようにも思えるが、実際に18歳の少女が書いたことを思えばほぼ同年代の役柄を演じた事となる。今の感覚だとおかしくなるが、パーシーも当時19歳で結婚して5年目とかだったし、医者であるジョン・ポリドリはディオダディ荘の怪談会議当時21歳だった。バイロン卿だけは少し年長だがそれでも28歳と皆若い才能の集まりだったのだ。映画は伝記映画の例に漏れず、必ずしも史実に忠実というわけではないが、それでも当時のメアリーの周囲に起きた「死と出産」はほぼその通りである。特にメアリー自身の生誕とそれによる母の死亡は始まりでもある。映画ではメアリーの最初の娘とその死亡がシェリーの借金取りからの逃亡が原因のように描かれているが実際は不明。そして映画では描かれないがディオダディ荘に向かう前に、1816年の1月には息子を出産している(ウィリアム。1819年に死亡)。シェリーとの正式な結婚の後(「フランケンシュタイン」出版前(執筆中?))には娘クレアラを出産しているがこのクレアラは翌年、1818年「フランケンシュタイン」出版後に生後一年で死亡している。結局二人の間の子供ので成人まで成長したのはウィリアム死亡後に生まれたパーシー・フローレンスだけであり、いくら当時は出産がまだまだ危険な行為で、子供の死亡率も高かったとはいえ、この時期の多くの「死と出産」がメアリーに強い影響を与えたことは想像に難くない。ここにシェリーの妻ハリエットや異父姉ファニーの自殺なども関わってくる。そして僕は、今回の映画を観るまで知らなかったのであるが、この時期の彼ら(父親のゴドウィンやシェリー)らは名こそ売れていたが経済的には困窮していたらしい。バイロン卿こそヨーロッパでも有数の金持ちであったが。

 映画で重要な役割を果たすのは血の繋がらない姉妹(年齢的には同年)であるクレアである。父ゴドウィンの後妻の連れ子であるクレアは故に文学的才能を受け継ぐことはなかったが、彼女がバイロン卿の愛人となったことでメアリーたちとバイロン卿の間に接点が生まれる。どちらかというと他の4人(メアリー、、パーシー、バイロン、ポリドリ)と比べて教養のない女性という扱いで一段下に見られているが、どちらかと言えばクレアの方が当時の(中流階級の)女性の平均像でもあるのだろう。ここではベル・パウリーが演じている。ちなみにクレアはフルネームをクレア・クレアモントというのだが、この名前を聞くと80年代から90年代にかけて「X-MEN」の原作を担当し、一番に人気の作品に押し上げたライター、クリス・クレアモントを連想するのです。

 そしてパーシー・ビッシュ・シェリー!この映画だけ観ると相当なダメ男だが実際はどうだったんだろう?自由恋愛を標榜しているが、どちらかというと今、恋愛工学などと言っているクズに近い気がする。ただ、妻子がありながらメアリーと交際、駆け落ちし妻ハリエットが自殺したその直後にメアリーと結婚しているところからもかなり男女関係にルーズな男だったのは間違いなさそうだ。映画ではそんなプロフィールから想像できる異常にダメな男をダグラス・ブースが演じている。彼は「高慢と偏見とゾンビ」にも出ていましたね(といって何の役だったのか思い出せない)。

  • ディダディ荘の怪談会議

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 映画の中盤でメアリーとパーシー、クレアはディオダディ荘にやってくる。出迎えるバイロン卿。ここでバイロンは唐突にパーシーにキスをする。単なる挨拶のようにも思えるが、これはバイロンバイセクシャル両性愛者といわれていることにもよるのだろう。映画では特にその辺説明はされないが、ポリドリも主治医というよりは同性の恋人だった。ポリドリについては後述するが、ポリドリを演じているのが「ボヘミアン・ラプソディ」ではロジャー・テイラーを演じていたベン・テイラーだったので、バイロンがまるでフレディ・マーキュリーのように思えてしまった。とはいえ「ボヘミアン・ラプソディ」でもポールがフレディにキスするシーン、この「メアリーの総て」でのバイロンがパーシーにキスするシーンは劇中では唐突でありそれなりに重要だが、特に男性同士によるキスをセンセーショナルに描こう、という感じはしなかった。登場人物のセクシャリティがそういうものであればこれが自然でしょ、という感じ。

 バイロンはこれまた強烈な人物で、この人はこの人で伝記映画が何本作られても足りないほどである。男性も女性も同等に見下している感じでそれ故に才能だけには忠実に、男女関係なく賞賛できる器の大きさも持つ人物。

 そしてこのディダディ荘において長期に渡り雨が降り続いたことで、暇つぶしにそれぞれ怪談話をつくろうじゃないか!とバイロン卿が持ちかけたことが「フランケンシュタイン」誕生のきっかけとなる。この経緯は「フランケンシュタイン」の1831年の第3版のまえがきで書かれていて、ある夜メアリーはある科学者が自分の創造した者の前にひざまずく姿を夢に見る。科学者はその横たわる創造物に命の火花を注ぐ。創造物はぎこちない半生命的な動きを見せる。己の行動に恐怖した科学者はしかし、放っておけば命の火花はすぐに枯れ動かなくなるだろう、と信じて眠りにつくが目を覚ますとあの創造物がベッドの脇に立ち物思わしげな目でこちらを見ている・・・

 そんな風景を夢に見たメアリーはイメージが途切れぬ内に書き始める。「11月のとあるわびしい夜のこと・・・」

 映画はあくまでメアリー・シェリーの伝記映画であり「フランケンシュタイン」創作秘話ではあるものの、「フランケンシュタイン」そのものの映像は出てこない。唯一、このメアリーが悪夢に見たという科学者が創造物を誕生させるシーンだけが映像化されている。「フランケンシュタイン」は北極探検のさなかにある青年ウォルトンの姉への手紙から始まり、その手紙の中でウォルトンが見つけたヴィクター・フランケンシュタインなる男性の告白、更にその告白の中でビクターが怪物から打ち明けられる独白、という入れ子構造をとっている。メアリーが最初に書き始めたという「11月のとあるわびしい夜のこと・・・」という一節はその中のビクターの告白に入ってからの5章目、まさにビクターが怪物に命を吹き込もうとしたその章の冒頭部分であり、メアリーがこの悪夢に見たヴィジョンを形にするところからこの小説が創造されたのがよく分かる。ちなみに「フランケンシュタイン」における怪物の創造というとそのきっかけとして電気が使用されることが多く1931年の「フランケンシュタイン」では雷、1994年の「フランケンシュタイン」では電気ウナギをその電気パワーの源として使用しているが実は原作劇中には電気によって怪物に命が宿った、という直接的な描写は無い。生命の火花を吹き込む「生命の機械」とあるだけ。SF小説の元祖ともされる「フランケンシュタイン」ではあるが実はその具体的な描写はほとんどないのだった。ただやはりヒントは「まえがき」にあって、バイロンとパーシーがガルヴァーニ電流について、それによって死者の蘇りも可能だろう、ということを話していたと書いている。これがヒントになっているのだろう。

  • メアリーとポリドリ

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 僕が個人的にこの映画で良かったのはジョン・ポリドリの描写。ポリドリはこの「ディオダディ荘の怪談会議」に置いてメアリーとともにきちんと作品を形にした。結局詩人であったシェリーとバイロンは小説という形には出来なかったのだ。ポリドリの「吸血鬼」はアイデアバイロンによるものともされ、実際最初はバイロンの著書として出版されたのだが、紛れも無くポリドリのもの。そこで出てくる吸血鬼ルスヴン卿は明らかにバイロンをモデルとして描いているが、この作品によって東欧の醜い化け物だったヴァンパイアは貴族的な美男子というイメージに生まれ変わった。このポリドリの「吸血鬼」を発端として通俗的な「吸血鬼ヴァーニー或いは血の饗宴」やレ・ファニュの「吸血鬼カーミラ」を産み、決定版としてブラム・ストーカーの「ドラキュラ」に至るのだ。正直文学作品としては「カーミラ」や「ドラキュラ」と比べると相当劣るようだが、それでも吸血鬼という一大ジャンルの祖であることは間違いない。

 そんな偉大な作品の著者ポリドリであるが、彼は前述の通りバイロン卿の同性の恋人か、少なくとも彼自身がバイロン卿に同性愛的な好意を向けていたことは間違いないようで、それゆえに才能の部分でバイロンに認められているシェリーに対し嫉妬していた、と語られることが多い。映画ではバイロンシェリーというわがままな詩人に翻弄される立場としてメアリーと自分を同じ立場の人間として共感しているような描写が大きい。彼はある意味でシェリー以上にメアリーの「フランケンシュタイン」の理解者であるのだ。ポリドリだけではない。クレアもそうだ。彼女も結局バイロンからは真剣には想われていないことを知るが「フランケンシュタイン」の怪物に共感を示す。バイロンの評こそ無いが、シェリーは最初感心するも頓珍漢なことを言う。虐げられた者の共感はそうでないものには分かりにくい。しかし世の中の圧倒的多数は虐げられたことのある、或いは今まさに虐げられている人たちなのだ。

 ポリドリがその著書「吸血鬼」をバイロンの著書として出版されてしまったように、「フランケンシュタイン」も最初は匿名で出版された。詩人として有名だったシェリーの「序」が付き、ウィリアム・ゴドウィンに捧げられたことで最初はパーシー・シェリーがその著者と噂されたという。当時は女性作家は一般的ではなく有名な思想家や詩人がいてもその娘や妻に作品を作れるとは思われなかったのだ。結局著者名が明かされるのは1823年の第二版から。現在底本として流通しているのは第三版を元にしている。第二版までとは序盤に文体の改変があるようだが、物語面などでは大きな変更はない、としている。

 そしてメアリーがいざ「フランケンシュタイン」を執筆するシーンは何度観ても涙が出てくる。これらは全てちゃんと小説「フランケンシュタイン」作中に出てくる文章である。

おれは死ぬ。今この身をさいなむ苦悩を二度と味わうこともなく、満たされず、かといって消すこともかなわぬ感情の餌食になることもなくなるのだ。おれを世におくりだした男は死んだ。これで自分がいなくなれば、われわれふたりの記憶さえすみやかに消えてゆくだろう。太陽も星ももはや見えず、頬に遊ぶ風を感じることもない。光も知覚も意識も失せた、その状態に自分は幸せを見いだすのだ。

 「フランケンシュタイン」を物語として知っている人は多いだろう。一昔前と違ってヴィクター・フランケンシュタインとその被造物をごっちゃにしてフランケンシュタインと呼んでいる人も、フランケンシュタインの怪物を物言わぬ怪力だけの存在と思っている人も少なくなったと思う。とはいえ、この執筆シーンの表現の美しさは原作小説「フランケンシュタイン」を読んでこそ。映画化された作品だけを観ていては「メアリーの総て」におけるここのシーンの良さは分からない。映画の後でもいいからぜひ小説を読んで欲しい。


Mary Shelley Official Trailer

 それにしても「フランケンシュタイン」に惹かれる人は女性が多い。原作者メアリー・シェリーが女性なのは当然として、この映画は監督のハイファ・アル=マンスールも脚本のエマ・ジェンセンもそれぞれ女性だ(プロデューサーや音楽も女性)。マンスール自身女性の活動が制限されているサウジアラビアで初の女性映画監督である。なるほどメアリーと通じるところも大きいだろう。日本に目を向けてもその翻訳を担当するのは皆女性だ(僕が最初に読んだ角川文庫版は訳者は男性だったが、現在主に入手しやすい創元推理文庫版、新潮文庫版、角川文庫版は全部女性訳者によるもの)。物語自体は深く物語に関わってくる女性はヴィクターの婚約者エリザベスぐらいしか登場しないにも関わらず、やはり女性はこの「死と誕生」の物語に何か心惹かれる物があるのだろう。

  ジェームズ・ホエール監督の「フランケンシュタイン」とその続編「フランケンシュタインの花嫁」。ボリス・カーロフのいわゆる首にボルトが刺さってて言葉も喋れない怪力の怪物、というイメージを広く定着させた「戦犯」でもあるのだが、それでも実はどの映像化よりも原作の精神を受け継いでいるようにも思う。作品評価は続編の「フランケンシュタインの花嫁」の方が高い。「~花嫁」冒頭はディオダディ荘からはじまりメアリー・シェリーその人が「物語には続きがある」と導入する役割を果たす。演じるのは本編で怪物の花嫁も演じるエルザ・ランチェスター

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  ケン・ラッセル監督のディオダディ荘の怪談会議そのものを映画化した作品。ただコチラはあくまでホラー映画として作られている。全体的に今回や、実際の史実に比べると登場人物(というか俳優)の年齢が高い。

 原作のその後を描いたという設定のコミックスの映画化である「アイ・フランケンシュタイン」感想記事。多少今回書いたことと重複しているとは思いますが。

 

「だがすぐに」と彼は悲しくもおごそかな情熱をこめて叫びました。「自分は死に、今感じることももう感じはしなくなる。燃えるようなこの苦悩ももうすぐ終わる。自分は意気揚々と火葬の山に登ってゆき、劫火の苦しみに凱歌をあげよう。大火の明かりはうすれゆき、自分の灰は風に乗り海へとさらわれてゆくだろう。わが魂は安らかに眠る、よしたとえものを思うとも、今のように思いはすまい。さらばだ」

 そう言うと彼は船室の窓から身をおどらせ。船のすぐそばに浮かぶ氷の塊におりたちました。そうしてやがて波に運ばれ、はるかな闇の中へ消えていってしまいました。 

フランケンシュタイン (創元推理文庫 (532‐1))

フランケンシュタイン (創元推理文庫 (532‐1))

 

 

 

*1:現在角川から出版されている「フランケンシュタイン」はこの時のものとは訳者が異なる別のもののようです

*2:Wikipediaでは「ディダディ荘の怪奇談義」とあり、「ディオダディ館の幽霊会議」「ディオダディ館の夜」などとも呼ばれる、とあるが僕はどこかで読んだ「怪談会議」という呼称が馴染んでいて好きなので正式かどうかは分からないがそう呼んでいる

とっても憑かれた 来る(他3本)

  さて、例によってたまった映画感想をいくつかまとめて。今回は「憑かれた」映画ということで。なんだか特に意識せずに似た感じの映画を連続で観たのでね。その中で一番おもしろかった作品を中心に。まずは「Oooh きっと来る きっと来る 季節は白く~」というわけで中島哲也監督作品「来る」から(主題歌は「feels like 'HEAVEN'(byHIIH)」ではございません!)

  • 来る

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 原作は澤村伊智の「ぼぎわんが、来る」。2015年の作品。「ぼぎわん」とは「ブギーマン」が日本の田舎で訛って伝わったものだそうで、映画劇中では結局なんなのかは明らかにされない。山の神のようにも幾人もの怨念が積み重なったもののようにもいかようにも解釈出来そうだ。

 この映画は主人公が妻夫木聡黒木華岡田准一と移り変わり、更にそこに小松菜奈松たか子青木崇高といった人物が脇を支える形。この主人公が移り変わるのはそもそも原作がそれぞれの主人公の一人称で繰り広げられる3つの短編が合わさって一つの長編となる形をとるものらしい。これが映画でも継承されてて、明確な3部作というわけではないけれど大体において3つに分けられ、それぞれ中心となる主人公が交代していく。

 ただね、映画としてそれが効果的かどうかはちょっと判断がつかなかった。というのも最初の二人、妻夫木聡黒木華の夫婦は両方共死ぬ形(それも凄惨な死)で退場するので主人公が死んだ!っていう衝撃を観客が受けるので「あれ?ここで終わりかな?」って思っちゃうんだよね。特に妻夫木聡の方はまだ時間があるのは分かるけど黒木華の方は観客の時間間隔が鈍ってくる頃なので。小説ならまだ続きがあるのが分かるけど。

 で、やはり最終的な主人公である岡田准一とそのパートナーである小松菜奈のコンビをもっと早く出して置くべきだと思った。物語本編とは直接関係なくてもいいから小さな心霊現象を解決するエピソードなんかを冒頭に置いて、本編に登場するのこそ遅れるけどこの人達が主人公だよ、と観客に提示しておくべきではないかと。これ「貞子vs伽椰子」の常磐経蔵(安藤政信)の時も思ったけど主人公(ヒーローといってもいい)はなるべく早く出すべきだと思う。ちなみに「貞子vs伽椰子」の数倍「来る」の出来はいいです。

susahadeth52623.hatenablog.com

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 映画はまず最初に妻夫木聡黒木華を連れて田舎に帰るところから始まる。祖父の13回忌で婚約者を紹介する妻夫木。この田舎が見事に悪い田舎。内に凝り固まっていて、おっさんは宴会で若い女性(といっても多分誰かの妻)に酔った(フリ?)で抱きついたりする。外に出たものの夢破れた者は管を巻く。これぞ地獄絵図。主人公の家族も外面は良いものの、黒木華がいないとこではよそ者の陰口を叩く。この冒頭の田舎が実は一番のホラー。なるほどこんなとこなら人ならざる者が誕生もするわなあ、と言う感じ。でももしかしたらここの描写を特に何も感じない観客もいるのかもしれない、と思うとそれが一番ホラーかも。

 続いて妻夫木、黒木の結婚式とマンション購入、出産といった幸せ描写が延々と続き、ここが僕にとってはかなり拷問だったので、そこまででかなりメンタルはやられて、実際の超常現象が頻発するようになると逆に心穏やかに臨めたりしました。

 見どころはまず妻夫木聡の空っぽぶり、彼が演じる田原夫婦の旦那は一件完璧な人間。東京の優秀な営業マンで外見も言動も爽やか。結婚してからは良い夫、良い父親を見せている。ただしそれは完全に外面で、家事・育児は妻任せ、そして疲れる妻の気持ちを慮ることが出来ない。普段の行いやブログでは完璧な父親を演じているが分かる人にはその空っぽさを見透かされている。「完璧な父親を演じている」と書いたが、多分本人は演じてる気すら無く実際の姿と外面が彼の中では矛盾がないと思えるのが更に空疎さを増す。

 かたや黒木華の妻は自身が毒親に育てられたため、自分が家庭を持つことに自信がない。そんな彼女がよりによって妻夫木聡と結婚してしまったことが運の尽き。生活に疲れ、人生に疲れ、おまけになんだかよく分からないものに憑かれる。不思議と疑問だったのは夫が死んだ後もあのマンションに住み続けてるところ。購入したとはいえローンがあるだろうし、売っちゃったほうが良いと思うのだが住み続ける。もちろん妻夫木が一括で払ってるので普通に住み続けたほうが安いとか、夫があんな死に方をした後なので買い手がつかないのかな、とかあるのかもしれない。が、個人的には後述の「A GHOST STORY」同様、その家に住み続けることがすでに超常現象なのかもしれない。

 田原夫婦が共に死ぬと、主人公は岡田准一に交替。そして満を持して松たか子が姿を現す。この松たか子は沖縄のユタの血統を受け継ぐ霊能力者、とされるが、何気にものすごい影響力を持つ人。警察や政府の上層部と通じ、マンション周辺一帯を封鎖して大規模な除霊の儀式を行う。その方法は仏式の坊主もいれば神道の神主スタイルもいるし、ハングルが書かれた道具を使う韓国式の者達もいる。この霊能力ちゃんぽんぶりと大規模さで思い出したのは「ヴァン・ヘルシング」。あれはカトリックチベット仏教などが秘密裏に手を組んで魔物と戦う組織を作っていたが、もしやあれが現代まで続いているのでは?などと思った。とにかく大規模などんちゃん除霊が楽しい。ちなみにここではしゃいでる女子高生もきっちり巫女さんかなんかだったのですな。

 邦画の悪霊さんはわりと手当たり次第で大規模に襲うのはホラー映画としてはむしろ恐怖感を削ぐと個人的には思う。この映画も実際の超常現象部分は楽しめたけどそんなに怖いとは思わなかった。ただ超常現象外の部分が非常に怖く感じたのであった。「家族ホラー」としては次の「ヘレディタリー/継承」より良く出来たいたと思います。


岡田准一×黒木華×小松菜奈主演!映画「来る」予告

ぼぎわんが、来る (角川ホラー文庫)

ぼぎわんが、来る (角川ホラー文庫)

 
  • ヘレディタリー/継承

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 祖母の死をきっかけに次々と家族に不幸が降り注ぎ、実はそれはとある陰謀であった、と言う話。自分の解釈したところでいうと、祖母は悪魔崇拝のオカルトサークルを運営していて、自分の孫である男子ピーターにとある悪魔を宿らせようと画策。しかし娘である孫の母親アニーが息子と接触させなかったため一時断念。替わりに孫の妹である孫娘チャーリーに悪魔を借り宿させる。その後祖母が亡くなり孫娘は不慮の事故(これが単に事故なのか計画の内なのかは不明)で亡くなる。行き場をなくした悪魔をきちんと当初の予定通り男子たるピーターに宿らせるべき祖母の仲間たちがアニーに接触、降霊会などをさせる・・・と言う感じか。もちろんこれは全部観た後での解釈。まずはとにかく出てくる人物の顔が怖い。ピーター(演じるアレックス・ウルフはジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」でロック様になった人)こそ普通の少年だが、母親であるアニーや妹のチャーリーは怖い。アニー役のトニ・コレットは僕が観た中では最近だと「トリプルX:再起動」(対照的に全く頭を使わない映画だ)で悪役を演じていたが、もっとセクシーな美人という感じ。本作でも美人ではあるのだろうが、常に苦悩してるか怒鳴っているか、という感じなのでまず怖い。役柄的にもほぼすっぴんという感じなのだろうが、この容姿の怖さは単に素面だからなのか、何か特殊メイクを施しているのかどちらだろう?このアニーがまたミニチュアアーティストで、いろんな物をジオラマで再現しようとしたりするのがまた怖い。神(悪魔)は細部に宿る。

 そして妹チャーリー役の御面相。よく考えると彼女は途中で退場するし、悪魔が彼女に宿っていた(という僕の解釈)とはいえただただ不幸な少女、というだけなのだが、まるでこの映画の悪の元凶のような気さえしてしまう。演じるミリー・シャピロは確かに特徴的な容姿ではあるが当然普通の少女。こちらも多少は特殊メイクされているのか、と思うがどうなんだろう。

 一家の父親役がガブリエル・バーン(製作総指揮も)で一家の中では(血統に関係ないからか)一番普通の人なのだが、どうしてもこういう映画だと「エンド・オブ・デイズ」のサタン(燃えるおしっこ!)を思い出しちゃう。

 面白かったけど、世間で言うほど高評価ではないかな。特に斬新だとかは思いませんでした。「家族ホラー」としては先の「来る」の方がよく出来ていたと思うし、悪魔関連の「カルト(教団)ホラー」としてはロブ・ゾンビの「ロード・オブ・セイラム」の方が不条理な中にもユーモアがあって面白かったかな。

susahadeth52623.hatenablog.com

  何に恐怖を感じるかは人それぞれなので僕が特に怖く感じなかったからといってそれはあくまで僕の感覚でしか無いわけだが(例えば僕は独身だが子供がいる人は「来る」も「へレディタリー」も違う見方をするだろう)、それでもやっぱり最近の映画でホラーとして怖いってのは殆ど無いなあ(音量や演出でびっくりすることはある)。


Hereditary - Trailer

  • A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー

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 ルーニー・マーラケイシー・アフレックの夫婦。ある日ケイシーは自宅前で交通事故に遭い死亡。しかし白い布をかぶった幽霊となって帰宅。妻を見守るがやがて妻は家を売却して去る。幽霊はその家にいつづけ、やがて…

 ホラーじゃないです。ファンタジー映画なのだろうか。序盤かなり淡々としていて、カメラワークもほとんど無いのでちょっと辛い。画面比も3:4でちょっと小さかったし。成仏しそこねた幽霊は家に帰るが、今度はそこから離れられない。幽霊は人に憑くのか、家に憑くのか、土地に憑くのか?最初は妻という想い人、人に憑くかのように思う。だが妻が家を去り次の住人が住んでも幽霊は家を離れない(新住民をポルターガイスト現象で脅かして追い出すなど対応は妻とは異なる)。やがて家は取り壊され、そこにショッピングモールが出来るとモールをうろつく幽霊と成るか、あまりの変わりように絶望したのか身投げ。さて、それでは建物に憑いていたのか?今度は突然過去の西部開拓時代。ある一家がそこに家を建て定住しようとするがインディアンに襲撃され全滅してしまう。それを見守る幽霊。幽霊は土地に憑くのか?

 この幽霊はおそらくケイシー・アフレック演じる亡くなった夫、そのものではない。最初の入植者一家から代々積み重なった何かだ。幽霊自身が見る自分たち夫婦の会話。それは家に対して何か不吉なものを感じ、引っ越したいと訴える妻と家に愛着を持つ夫の会話。ポルターガイスト現象で脅すも結果として逆に夫妻は引っ越しを決めてしまう。その直後に夫は事故死。つまりこの土地、家に憑く何かがこの夫妻を引き留めようとして夫のほうを殺して引きとめようとしたのだと思う。幽霊は夫の幽霊ではあるがその何かとの融合体みたいなものなのであろう。

 とつらつら書いたけどホラーじゃないし、ショッキング描写も特に無いです。面白かったかも微妙で映画館じゃなかったら多分途中で脱落したかもしれない。妙に心には残るけど。


A GHOST STORY - Trailer (2017)

  • ヴェノム

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 最後はガラッと変わって「ヴェノム」。元は「スパイダーマン」のヴィランで実写映像化としては二回目。前回はサム・ライミの「スパイダーマン3」でほぼ原作に忠実にピーター・パーカーのコスチュームに憑いた宇宙からの寄生体がピーターに逆恨みした新聞記者エディ・ブロックに憑依、ピーターへの恨みで狙いが一致した二人はヴェノムとして復讐を為そうとする、というもの。サム・ライミは自身の少年時代に親しんだ60年代のスパイダーマンには深く思い入れがあったようだが、偉い人の要望で登場させたこの90年代にデビューしたキャラクターには全く興味がなかったようでわりと普通の悪役という感じ。今回はそのリベンジでもあるのだが、もともとは「アメイジングスパイダーマン」のスピンオフ企画。ただ今回はシリーズとしては終了したアメスパとも現在のMCUに参加しているトム・ホランドスパイダーマンとも世界観は共有していないようである。ということはつまりスパイダーマンのいない世界でスパイダーマンの悪役を主人公とした作品を作る、というわけでちょっと物足りないのもたしか。アメコミ映画の例に漏れず、最初の予告編は実にシリアスな感じだったが徐々にコメディっぽい部分も出てきて最終的にはわりと愉快な映画だった。トム・ハーディが「ダークナイトライジング」ベインに引き続きアメコミキャラクターを演じる。ややこしいことにベインはヴェノムという薬品を摂取している設定なのでごっちゃになりますね。

 ライミ版に比べると体格が最初から過剰なマッチョになっていたり、大げさに表現されていて楽しかったがやはりスパイディがおらず大元のオリジンがコミックスと異なるのでデザイン的にも胸の蜘蛛が無くなっていてただ黒いだけだったりするのが残念。あと、敵となる相手がやはりヴェノム同様シンビオートでヴェノムに対してより巨大でヴェノムより若干銀がかった黒という感じで「ブラックパンサー」のラストバトルでも思ったけど格闘ゲームの色違いキャラみたいな感じで違いが分かりづらいのが辛い。しかも戦うのは夜だし。もうここは設定大幅に変えていいから赤いアイツにして欲しい、とか思ったのだったけどアメコミ映画恒例のエンドクレジット後のアレで赤いアイツが出てきたのでそれは良いや!

 なんかとにかく変な映画。正直本編はイマイチであったがエンドクレジットやおまけ見ている内に愉快な気分になったのでOKです。個人的にはもしもシリーズ化が念頭にあったのならシリーズの2作目、3作目でヒーロー化しても1作目は悪役まっしぐらのピカレスク路線で良かった気もする。


VENOM Official Trailer #2 - Tom Hardy

 

ヴェノム:リーサル・プロテクター (ShoPro Books)

ヴェノム:リーサル・プロテクター (ShoPro Books)

 
ヴェノム [Explicit] (Music From The Motion Picture)

ヴェノム [Explicit] (Music From The Motion Picture)

 

 

 あ、あと「ヴェノム」公開時に「Godzilla King of the Monsters」の予告編(月の光)が流れて、日本版はオリジナルより短いんだけど、あれを大画面で観れるのは眼福でありました。新しいのも公開されて来年の5月までは死ねませんぜ。


Godzilla: King of the Monsters - Official Trailer 1

 

浮世か夢か ボヘミアン・ラプソディ

Is this the real life-(これは浮世か)

Is this just fantasy-(それとも夢か?)

Caught in a landslide-(地すべりに飲み込まれて

No escape from reality-(逃げることなど出来やしない)

ボヘミアン・ラプソディ 

 さて、「ボヘミアン・ラプソディ」です。現時点で5回ほど観ましてですね。一回目は普通に。二回目はもっと音響設備のいい劇場で。そして三回目は応援上映というやつで。以降は特に拘らず時間が合う時に飛び込みで、と言う感じで。今年最も多く劇場で見た映画で、かといって物凄く出来が素晴らしい映画とも頭では思わないんですが、それでも心は持って行かれているので今年のベスト入りは間違いないです。まあ例年音楽映画は評価基準が甘い傾向はあるのですが(自分評価)。

 それではブライアン・シンガー監督作(後述)「ボヘミアン・ラプソディ」感想です。

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 ブライアン・メイの特徴的なギターサウンドによる20世紀FOXファンファーレから始まる本作、物語はイギリスのロックバンドQUEENの、その中でもボーカリストフレディ・マーキュリーの生き様を描いたノンフィクションドラマ。彼らの楽曲が随所に出てくるがミュージカル映画ではない。とはいえ間違いなく音楽映画ではあって、伝記映画だが全編を音楽が彩る。

 QUEENは1971年に結成、1973年にデビュー。ボーカリストフレディ・マーキュリーが亡くなる1991年までほぼ20年間活動していたことになる(フレディ死亡以降もブライアン・メイロジャー・テイラーQUEENとしての活動も継続。オリジナルメンバーでの活動が1991年までという形)。僕は1977年生まれなのであるが、このQUEENABBA(奇しくも両者とも今年関連映画が公開された)は家にレコードがあって(おそらく母がファン)、わりと小さい頃から聴いていた。ただそれがQUEENというバンドの曲であると認識し、メンバーの構成や名前や歌詞内容や、発表された時期などを意識して聴き始めたのは高校以降ぐらいなのですでにフレディは亡くなった後。以降もどちらかというとオリジナルアルバムよりも「グレイテスト・ヒッツⅠ&Ⅱ」あたりを中心に聴いていたので大ファンではあるけれどその経歴などについてはあんまり詳しくなかったりします。とはいえね、もうそれを洋楽と意識する前から聴いてる(自分が聴き始めた順番としてはビートルズより早い)楽曲ばかりなので血肉にはなっています。大体の曲は(歌詞の意味はともかく)歌えるし、自然と口ずさんでしまう感じ。なのでもう映画の評価とはまた別に映画館であの楽曲が聴けるってだけで高評価なのではあります。

 QUEENは海外でまず売れたということで、特に日本でブレイクしたバンドとしても有名なのだけど、おそらくその楽曲が英語の歌としては非常にわかりやすいのも一因じゃないかと思う。フレディ・マーキュリーザンジバル生まれインド育ちで、ゾロアスター教徒の(ということは人種・民族的にはペルシア系)両親の間に生まれた。17歳の時にイギリスにやってきてその後QUEENを結成するに至る。彼自身がゾロアスター教徒だったのかどうかはわからないし(死後はゾロアスター教徒として火葬されたそうだ)、英語が母語だったのか、外国語として学んだのかも分からないが、そういう経歴があるからか、彼の楽曲の歌詞はわりと英語を母語としない外国人が聴いても分かりやすい。もちろんフレディならではの独特な詩的な部分は大いに感じられるが(「Don't Stop Me Now」のゴダイヴァ夫人とかミスター・ファーレンハイトとか最初は何のことかさっぱりわからんかった)文法的には分かりやすい英語が多いし、フレディの歌い方もわりと同じハードロックの他のバンドと比べると聴きやすい。そこにあのメロディが加わって外国でも受け入れやすかったのではないかと思う。f:id:susahadeth52623:20181211000300j:image

 映画は決して史実のQUEENに忠実というわけでなく、おそらく意図的に色々変えてあります。もうすでにいろんな人が検証しているけれど、一番大きなところではフレディが自分がHIVだと知ったのが映画のクライマックスである「LIVE AID」の後、ということ。これは最初から「LIVE AID」をクライマックスに持ってくる、というのが前提としてあって、そこから逆算して物語を構成したからではないかと思う。他にも細かい史実との違いはたくさんあって、そこを映画の評価としてマイナスと取る人もプラスと取る人もいろいろいると思うのだけれど、個人的にはあくまでドキュメンタリーではなく伝記映画、それも音楽を通して感性に訴える要素が多い作品なので全然いいかな、と思う。ここの改変に関しての批判に近いのは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でマーティーが1955年にチャック・ベリーの「ジョニー・B・グッド」を演奏してそれを間接的にチャック・ベリーが聴いていた、つまりチャック・ベリーはオリジナルとしてではなく、マーティが演奏した別の時間軸の自分の曲に影響された、というタイムトラベルの妙を描いたシーンかなと思う。あのシーンは黒人音楽を白人が作ったことになった!という批判も受けたのだけれど、僕個人はあそこはマーティ自身はむしろリスペクトとして演奏しているのだし、タイムトラベルの不思議さと面白さを描いたシーンなので全然良いと思う。寧ろ許せないのは「ロック・オブ・エイジズ」で主人公が「自分の作曲した曲」と称してジャーニーの「Don't Stop Believin'」を歌ってしまうシーン。あの映画の世界にはジャーニーはいない設定なのかもしれないが個人的には許せなかったですね。閑話休題

susahadeth52623.hatenablog.com

  とまれ、これらの史実と異なる部分に関しては勝手にやっているわけではなくブライアン・メイロジャー・テイラーが製作や音楽監修で関わっている以上、ちゃんと彼らの許可と監修を受けた上で映画としてより良くするためのものなのだと思う。そもそも映画タイトルが「ボヘミアン・ラプソディ」でその冒頭はまさに「現実か幻想か」」なので(自分は無理やり「浮世か夢か」と訳してみました)。
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 映画はQUEENのメンバーそれぞれがそっくり!ということでも話題になった。フレディ・マーキュリーにはずっとサシャ・バロン・コーエンが候補に挙がっていて、僕もツイッターなどでフレディ役はサシャ・バロン・コーエンしかいないのでは?ということを何度か呟いたことがある。結局、演じたのはコーエンではなく、「ナイト・ミュージアム」シリーズで展示物である古代エジプトの王子アクメンラー(架空の人物)を演じたラミ・マレックが演じることとなった。ラミ・マレックのフレディがそっくりかどうかということでいえば映画に出てくる他のメンバーに比べると実は一番似ていない。ただ、実際のフレディより童顔で目が大きく過剰歯によって特徴的な口元が強調されて尚魅力的に演じている。実際のフレディ(特に80年代に入ってからのヒゲと短髪のフレディ)はもっと渋い感じだと思う。この童顔でより無邪気な感じはライブシーンでのフレディのパフォーマンスの再現部分より映像には残っていないプライベート部分(ゲイバーで男をあさったり夜な夜な乱痴気パーティーをする)で観客に嫌悪感を抱かせない効果を果たしていると思う。

 僕が一番そっくりだと思ったのはブライアン・メイのグウィリム・リーで僕はこの映画で知ったこともあって、良い意味で本当に演技の素人、ブライアン・メイその人なのではないか、と思う感じ。ちょっとしたセリフなんかもすごい自然。ちなみにブライアン・リーは天文物理学を学んでいて2007年に博士号を取ったりしているのだけど、宇宙と関連してかSF好きでQUEENが「フラッシュ・ゴードン」のサントラを担当したのはおそらく彼の意向。「マッドマックス2」の音楽を担当しているブライアン・メイは同名の別人です。

 バンドの中でその美少年然としたルックスでアイドル的人気を誇ったドラムのロジャー・テイラーは「X-MEN アポカリプス」でエンジェルを演じたベン・ハーディ。ロジャーの美男子ぶりを全力で再現しています。ロジャーは一番フレディと親しかったらしく(一時期古着屋を共同経営していた)その分直接ぶつかるシーンなんかも。
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 そして、この映画で改めてその重要性を感じ取ったのがジョー・マッゼロが演じたジョン・ディーコン。スター性は低く、いても目立たないが、いなきゃバンドが成り立たない隠し味でありムードメイカー。ビートルズリンゴ・スターモンティ・パイソンマイケル・ペイリンに似た立ち位置。こういう人がいるから個性派揃いのアーティストたちがバンドとして一つになれるのであり、そういう部分は決してライブ映像など表の実際の映像だけ観ていては分からない部分。こういう映像に残されていない部分の描写こそこういう作品の重要要素。ちなみにジョー・マッゼロは「ジュラシック・パーク」でハモンドの孫姉弟の恐竜好きの弟ティムを演じたジョゼフ・マッゼロが成長した姿。はっきり言って当時の面影は無いけれどなんか見てて安心します。

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 この映画のクライマックスは21分の「LIVE AID」パフォーマンスの再現(実際には15分ぐらい)。ここに至る経緯にも史実と映画では違いもあるが(バンド不仲の原因がフレディのソロ活動にあるかのようになっているがこの時期ロジャーもソロ活動をしていたし直前でなく少し前にQUEENとしての活動も再開している)、この「LIVE AID」がなければ解散していただろう、とブライアン・メイも言っていてQUEENにとって記念碑的ライブであったことは間違いないようだ。僕は当時のことなど知らないので後々映像を見た形であるが、確かにこの時のQUEENのパフォーマンスは圧倒的だった。だから91年のフレディの死までの中でここをクライマックスに持ってきたのは理解できて、先述したように史実ではここ以降の出来事をこの前に持ってきたのも観客の感情を高める効果としては大成功だと思う。

 実際の映像(YouTubeで見れますが公式かどうか分からないので貼りません)見たほうがいいじゃん!という意見もあるのだが、映画として見た場合は映画のほうがただのコピーではなく当然実際のライブでは不可能だったカメラワークなどもあり映画は映画で最高でした。

 「LIVE AID」の実際の観客は当然チャリティコンサートの一観客として来ているわけでその時点で映画の観客と違いQUEENやメンバーたちの葛藤や経緯を知らないわけですよ。実際のパフォーマンスでは歌われている「We Will Rock You」と「愛という名の欲望」が映画ではカットされているのだけれど、「We Will Rock You」はともかく(後述)、ロカビリー調の「愛という名の欲望」は実際のパフォーマンスでは良い緩和部分として機能しているけれど、映画では不必要だと思った。最高潮に高まった映画の観客の感情の高ぶりが「愛という名の欲望」で萎えてしまうと思うから。

 で、僕は今回応援上映というのも観に行きました。観客が一緒に歌ったりペンライト振ったりすることが出来る上映形態。僕は「ロッキー・ホラー・ショー」を別としてあんまりそういうのには肯定的じゃないんだけれど、これは結構良い経験でしたね。というか単に劇場側が「今回は応援上映ですよ」といって区別しているだけかと思ったらちゃんと使用しているフィルムも別で楽曲部分で英語歌詞がカラオケのように出てきます(その分日本語歌詞は出ない)。僕が参加した時は正直いうと僕含め、まだ照れがあるのかみんなおとなしめでした。これは直前に誰かが前説として観客を煽ったり先導する役の人がいたらよかったかもしれません。まああんまりやり過ぎるとそれはそれでウゼぇって思っちゃうかもしれないけど。

 そういえば僕はなんとなく「ロッキー・ホラー・ショー」にはQUEENの影響があると思い込んでいたんだけど、時期的にはほぼ同期かなんならQUEENの方が後発なんですな。自分の生まれる前のことなのでなんか時空が歪んでました。

 そして先述の「LIVE AID」。ここでは実際には歌われた「We Will Rock You」がカットされている(撮影はされたらしい)のだけれど、これはすでに「We Will Rock You」創作時のエピソードが出てるからであろう。実際通常上映で観る分には無くて正解だと思う。ただ応援上映に限って言えば確実に盛り上がるので入ったほうが良かった。この映画の応援上映はそれこそ21世紀の「ロッキー・ホラー・ショー」になるポテンシャルを秘めていると思います。

 そして、この映画の監督は一応ブライアン・シンガーということになっている。僕は一回目を観た時点ではシンガー監督作ということは知っていて、でもその割に監督名がパンフでも宣伝でも前面に出してこないなあ、などと思っていたのだけれど、その後調べてみて納得。ブライアン・シンガーは撮影途中でトンズラしてしまったらしいです。残り撮影予定が2週間、という時点で感謝祭休暇が明けても戻ってこなかったらしく、その後の部分は製作総指揮であったデクスター・フレッチャーが監督したらしいが全米監督協会の規定でシンガーのみが監督としてクレジットされた、ということらしいです。

 出来上がった作品のどこまでがシンガーによるものなのかは分からないのだけど(クライマックスの「LIVE AID」は最初に撮影されたのでシンガー演出で間違いなさそう)、最初に観た時はこれはシンガー映画だなあ、と思ったもの。特に「X-MEN」シリーズの2作目「X2」とは姉妹作品みたいにさえ感じた。アイスマン、ボビー・ドレイクが家族にミュータントであることを打ち明けるシーンやミスティークとナイトクロラーの会話など、シンガーがミュータント問題に託して描いたと思われる同性愛関連の描写はそのまま今回のフレディの描写と重なった。実際の演出はしてなかったとしても脚本の完成にはシンガーの意向も強く反映しているだろうし、多分同じQUEENの映画でも別の人が演出していたら全然違う印象となっただろうなあ。ブライアン・シンガー100%の映画で無いかもしれないが、シンガー色の濃い映画ではあると思う。ブライアン・シンガーは今後どうすんのかな……

 他は細かいところではQUEENを理解しないプロデューサーにマイク・マイヤーズが扮していたりします。これが一回目では全く気づかず、クレジット見て「あ、出てたんだ」という感じだったが二回目観たら確かに喋り方といい声色といいマイク・マイヤーズだった。このプロデューサーは架空の人物で「ボヘミアン・ラプソディ」を理解しない偉い人として登場するのだけれど、「車の中で頭が振れるような曲がいい」という台詞といい、完全に「ウェインズ・ワールド」を前提としたマイク・マイヤーズへのあて書きっぽいです。


Bohemian Rhapsody Wayne's World HD

 


Bohemian Rhapsody - The Movie: Official Trailer

 評論家には不評だったり、QUEEN好きに史実改変部分なんかで好き嫌いは激しく分かれていたりするのだけれど大ヒットしています。先述の監督交代劇やクレジット問題などの裏のゴタゴタを考慮すると作品の作家性を重要視する評論家が批判する理由も分からないではないんですが(正直映画本編を詳細に分析したらそりゃあまり出来が良いとも僕自身思わない)、もう本作はそういう評論家がどうこうできる枠を越えている作品だとも思います。 

 ファンだった人もそうでない人もまだ間に合う!劇場へ走れ!

Bohemian Rhapsody (The Original Soundtrack)

Bohemian Rhapsody (The Original Soundtrack)

 
Greatest Hits 1 & 2

Greatest Hits 1 & 2

 

 

浮世の夢か 映画映画ベストテン!

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 アンゴラ村の住人エド・ウッドさん。

 早いものでもう12月、2018年も終わりです。来年は天皇代替わりで平成も終わりだとか。いやもう今年が平成何年なのかもよく知らない感じですが、そういうわけで、世間では色々節目の記事や催しが目立ちます。僕などは昨日、なぜか今が閏年の2月の29日だと勘違いして、明日で今月も終わる!と絶望していたら夕方辺りで「あ、今は11月だ。まだ明日も30日じゃん」と気づいてホッとする出来事がありました。いやあ疲れてるな。

 今年はほぼブログ更新がストップして、2~3ヶ月分の映画観賞分をまとめてあげる、ということが中心になっています。なんとかしなきゃなあ、と思いつつどんどん更新頻度が落ちて行く・・・

 さて、年末ということだと恒例のワッシュさん( id:washburn1975 )の映画ベスト企画です。

d.hatena.ne.jp

  今年は「映画映画」ということで映画製作の現場が舞台だったり、主人公が映画人だったり。あるいは映画ファンの話でも良いとのことなので結構間口は広いけれど、例えば「プロデューサーズ」とかはあれは舞台ミュージカルの話だから対象外だし、と実は結構迷いました。でもトップ3を決めたら後はそれにつられてどんどん思い出して一気に決まった感じかな。今回は特にワッシュさんの決めたルール以外の自分で定めた制限は無し。全部無難に「映画映画」だと思います。それではまずはベストテン一覧を。

  1. エド・ウッド(1994年 ティム・バートン監督 アメリカ)
  2. キング・コング(1933年 メリアン・C・クーパー&アーネスト・J・シュドーザック監督 アメリカ)
  3. セシル・B/ザ・シネマ・ウォーズ(2000年 ジョン・ウォーターズ監督 アメリカ)
  4. ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲(2001年 ケビン・スミス監督 アメリカ)
  5. エルム街の悪夢 ザ・リアルナイトメア(1994年 ウェス・クレイヴン監督 アメリカ)
  6. 喜劇王(1999年 チャウ・シンチー監督 香港)
  7. トロピック・サンダー/史上最低の作戦(2008年 ベン・ステイラー監督 アメリカ)
  8. イングロリアス・バスターズ(2009年 クエンティン・タランティーノ監督 アメリカ・ドイツ)
  9. 僕らのミライへ逆回転(2008年 ミシェル・ゴンドリー監督 アメリカ)
  10. スクリーム(1996年 ウェス・クレイヴン監督 アメリカ)

 わりと年代的には 1990年代~2000年代に偏っています。一本だけ1933年という古い作品があるけれど、これは同時に2005年のリメイク版も込みなところがありますのでやはりこの年代15年ぐらいの間に収まっていますね。「映画映画」という以外のジャンル的傾向だと直接映画製作そのものを題材にしたノンフィクションは1位の「エド・ウッド」ぐらいで後は映画制作の現場で何かが起きる物語という感じでしょうか。それでは作品ごとに簡単な解説を。

 

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 ティム・バートン監督の白黒映画。「史上最低の映画監督」というありがたくない称号を持つ実在のB級映画監督エドワード・D・ウッドJr.の最も楽しかった頃を切り取った伝記映画。このエド・ウッドの監督作品は僕も「プラン9・フロム・アウタースペース」と「怪物の花嫁」は見たことがあるのだけれど、普通につまらないです。カルト映画を見てやろう、という気構えを持ってしてそうなのだから普通の観客には尚つらい。そんなわけなので映画監督としては成功せず、赤貧のうちに亡くなったそうなのだけど、のちに「アメリカ史上最低の映画監督」に選ばれたことでカルト的人気を博しそして作られたのが本作。脚本はこの後「ラリー・フリント」「マン・オン・ザ・ムーン」「ボブ・クレイン」そしてやはりティム・バートン作品となる「ビッグ・アイズ」など異能の人物の伝記映画の脚本を手がけたスコット・アレグザンダーとラリー・カラゼウスキーのコンビで本来はマイケル・レーマン(「ヘザース」「ハードロック・ハイジャック」)が監督、バートンは製作に回る予定だったらしいが題材があまりに好みだったため自分で監督したらしい(レーマンは製作総指揮)。

 それも納得で、劇中のエド・ウッドと「魔人ドラキュラ」のドラキュラ伯爵として有名なベラ・ルゴシの晩年の友情と付き合いはティム・バートンヴィンセント・プライスの関係を彷彿とさせるし、才能に決定的な差はあるものの、ウッドの作品はどう見たってバートン好みである。ウッドを取り巻く奇妙奇天烈な連中の描写も相まってとっても幸せなバートン映画だと思う。

 またラスト近く行き詰まったエド・ウッドが逃げるようにある店に駆け込むとそこに何故かオーソン・ウェルズがいて彼に励まされてことを成し遂げる、というのはいぜんスタン・リーの追悼記事などでも紹介したケビン・スミスの「モール・ラッツ」のクライマックスにも共通するところ。

 ちなみにこの時期長年コンビを組んでいたダニー・エルフマンと仲違いをしていたため、この作品は長編デビュー以降のバートン作品としては初めてエルフマン以外が音楽を手がけることと成る*1。でも担当したハワード・ショアの音楽が実にエルフマンしてるというか、見事に1950年代のSF映画っぽくて素晴らしい。

 エド・ウッドは女装が趣味で特にアンゴラのセーターが好きだったらしいのだけど演じたジョニー・デップによるやっつけ女装も見どころ。

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 映画が誕生したのは1895年リュミエール兄弟のシネマトグラフによってとされる。それ以前にもエジソンが同じ原理の映写機(キネトスコープ)を発明していたが、これは一人一人が箱をのぞき込むとその中で動く映像が見れる、というもの。多人数に同時に観せる、というのがシネマトグラフの画期的なところであった。とはいえ当初は特に物語のないただそこにあるものを写しとる、ドキュメンタリー的なものばかりであったがフランスのジョルジュ・メリエスが特撮技術を見つけると、それを表現するのに物語性が求められ、いわゆる劇映画が誕生する。その後、サイレントを経て、トーキー、カラーと映画は進化していくのである。

 1930年代、飛行機や旅客船などの発達で世界は大分狭くなったがそれでもまだ人々が簡単に海外旅行できる時代ではなく、映画は遠い外国の(できれば野蛮な方が良い)風景を観客に見せる役割も背負っていた。「キング・コング」はまさにそういう時代の作品。実際に作られた作品は海外ロケなどしていないだろうが、ウィリス・オブライエンの特撮技術がその代替となる。映画は山師的な映画製作者カール・デナムが食い詰めた女性アン・ダロウを連れ謎の島「髑髏島」へと映画を撮影しに行く。島の住民に目をつけられたアンはさらわれ島に住む巨猿コングへのいけにえとされる…

 映画撮影が肝となっていて元々はゴリラとコモドオオトカゲを実際に戦わせる企画だったなどともいうし、監督コンビは実際にそういう世界中の未知をフィルムに収めてきた映画製作者であった。1933年のオリジナル版ではデナムは特に映画製作者として葛藤を見せてくれるわけではないが、その辺は2005年のピーター・ジャクソン版のジャック・ブラックが演じるデナムがいかがわしさもカリスマ性も備えたこだわりの映画監督として熱演しています。

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モンスターバースのリメイク版の時の感想記事。今後2020年にゴジラと戦う予定です。 

 さて、ここからは駆け足で。

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  •  セシル・B/ザ・シネマウォーズ

 悪趣味映画の帝王ジョン・ウォーターズの戦う映画映画。過激派映画監督セシル・B・ディメンテッドが仲間を引き連れ、テロなのか映画製作なのかほぼ区別がつかない過激行動を繰り返す。監督が何かのインタビューで、「でも彼らの映画が面白いとは思えないよ。だって彼らの中に編集がいないからね」というようなことをいたのが印象的。もちろん名前は大作映画の巨匠セシル・B・デミルから!

セシル・B ザ・シネマ・ウォーズ [DVD]

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  • ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲

 ケビン・スミス自身が演じるサイレントボブとその仲間ジェイ。この二人はこれまでケビン・スミス作品には欠かさず出てきた名脇役だったが、ついに主役へ。「チェイシング・エイミー」のベン・アフレックが自分たちをモデルにして描いた漫画「ブラントマン&クロニック」がハリウッドで映画化されるという。俺たちには何の連絡もなかったぜ!と二人はハリウッドに乗り込むのであった。タイトルは「スターウォーズ 帝国の逆襲」から。他にもスミスのコミック愛があふれていて、映画としてはわりとめちゃくちゃ。内容の過激度というか物議を醸した的な意味では「ドグマ」の方が上かもしれないがハチャメチャ度ではこちらのほうが上だろう。マーク・ハミル(拍手!)が自身が演じたコミックドラマ「超音速のヒーローフラッシュ」のヴィラントリックスターに似た悪役を演じる本人役として登場する。他にも本人役のカメオ出演が多数。この後2作品監督作が出てくるウェス・クレイヴンも出てます。

 フレディ・クルーガーが夢の中で人々を襲うシリーズの番外編。「エルム街の悪夢」のリメイクが決定!かつてナンシー役を演じたヘザー・ランゲンカンプの周りで奇怪な出来事が起き始め、フレディ役のロバート・イングランドや監督のウェス・クレイヴンなどに相談。実はクレイヴンの書いたリメイク版脚本の内容が現実に起きていて、ついにフレディが・・・

 という感じのまさに現実か虚構か、といった感じの一本。フレディ自体が夢の中の存在という劇中でも実在するのかいないのか曖昧なものであったがそれをさらに境界線を曖昧にした作品。

  続いて5~10位。

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 香港の喜劇スター、チャウ・シンチーの監督・脚本・主演作。この前の「食神」と本作で俳優としてだけでなく映画監督としても実力を付け「少林サッカー」でついに日本でもメジャーな存在となる。その一歩手前の作品なので、まだちょっと香港ローカルに特化しているというか、「少林サッカー」に比べるとチャウ・シンチーのどぎつい土着的な笑いの要素も大きく日本人が見てもちょっと引いてしまうかもしれない、でも売れない役者役のシンチーがブルース・リーの全力の完コピをするシーンなどは涙なしには見れませぬ。

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  • トロピック・サンダー/史上最低の作戦

 戦争映画で成功しようと試みる俳優たちだが、ロケ地の本当の紛争に巻き込まれて、でもそれも映画撮影だと思い込んで…というベン・ステイラー監督・主演の戦争コメディ。ハンディキャップのある役柄で賞を取ろうとして顰蹙を買った落ち目の俳優や、白人なのに黒人の役をやろうとする演技派俳優などが出てきます。ベン・ステイラーでもお下劣系コメディの方なのでキツいと思う人もいるかも。ラストのトム・クルーズが全てをさらう。

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 クエンティン・タランティーノの映画は西部劇を除くと大抵映画への言及があり、ある意味でどれもが「映画映画」と言えないこともないんだけど、特に映画館そのものが舞台となっている事もあってこの超史劇「イングロリアス・バスターズ」を。クライマックスは映画館でのヒトラー暗殺(成功しちゃう!)。

 まあでも本作は新たなスター、クリストフ・ヴァルツが世に出た作品として記憶されるでしょう。 

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  タランティーノも色々あったな…

 レンタルビデオのテープが全部ダメになったので手作りで作り直し「スウェーデン製○○」として売り出したら大評判。という映画作りの楽しさを描いたような作品。映画紹介などでは「スウェーデン製と思い込んで…」みたいな言い方をされることも多いんだけど、借りる客側も分かった上で楽しんでるんだよね。あの大作がチープに生まれ変わる様子が楽しいです。

 

  • スクリーム

 スラッシャー映画中興の祖とも称されるウェス・クレイヴン監督作。これまでに作られたホラー映画のお約束をなぞったり逆をいったり。このシリーズは今のところ4作目まで作られているんだけど、続編ではこの1作目の事件が「スタブ」というタイトルで映画化されてて、それがシリーズを重ねている、というまたまたメタな展開。1作目は愛すべき映画うんちくキャラジェイミー・ケネディ演じるランディがいるので選びました。惜しい人を亡くした…

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 「スクリーム4」の時の感想記事 

   こうしてみるとウェス・クレイヴン監督作が2作あるのは当然意識してたけど、なぜかジャック・ブラック出演作が多いですね(「キングコング」2005年版含む)。

 世界にはまだ不思議なものがある。それを全世界の人に見せよう。取るのは映画の入場料金だけ。

カール・デナム(キング・コング

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QUEEN: I Want To Break Free

 記事冒頭のアンゴラ村長(違う)に対して記事を締めるのは「ブレイク・フリー(自由への旅立ち)I Want to Break Free」の時の女王様たち。このPVでのクイーンの女装はフレディの発案だと思われがちだけどロジャー・テイラー発だそうです。どうりでロジャーだけ気合入っとる!でも髭のままやっつけのフレディの女装はエド・ウッドに通じるところもありますな。というわけで、次は「ボヘミアン・ラプソディ」感想書きます!


Bohemian Rhapsody - The Movie: Official Trailer

*1:その後バートンとエルフマンは元鞘に収まりもともとがミュージカル舞台だった「スウィーニー・トッド」以外ではエルフマンが音楽を担当している

大きいことはいいことだ?9月、10月に観た映画

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巨人を殺すべく奮起するバーバラさん。

    そういうわけで2018年ももう終わりを感じるこの頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか。全然映画感想を書けてませんが、週一ぐらいのペースで観てはいるわけで、そのリストです。

 と、その前に!

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 こちらの記事に「ジオストーム」観たのに書くの忘れましたよ。まあ忘れたということはそのくらい観て印象の薄い作品だったということなのですが。記憶を振り絞ると天災が多発する近未来。宇宙ステーションから気候を操作して何とか保ってきたけれど、その宇宙ステーションがおかしなことになって地球にありとあらゆる天災が振りかかる!と言う話ですね。監督がディーン・デヴリンローランド・エメリッヒ監督との超大作映画製作などで知られているけれど、本作が監督デビュー作の模様。とはいえいつものデヴリンだな、という印象。主演のジェラルド・バトラーはじめ良さそうな人は良い人だし、怪しそうな人は裏切るし、悪そうな人は悪い、というキャストから物語が予測できる作品でありました。以上!

 では9月と10月に観た映画を。

8月

  • マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー

9月

 

10月

8月

  • マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー

 公開は8月だけど観たのは10月入ってから。前作から10年経過でメリル・ストリープは死んでしまっている!眉毛のリリー2号ことリリー・ジェームズが若い頃のメリル・ストリープに扮し、アマンダ・サイフリッドの父親候補3人との出会いを描く。出演者で前作の後売れた人はたくさんいるが、1番はドミニク・クーパーだろうか。前作は後から出てたんだ?!って気づく感じだったが、今回は最初からしっかり存在感出してます。ミュージカルとしては前作よりABBAの曲が馴染んでいたような気もします。メリル・ストリープはスケジュールの都合がつかなかったのかと思いきや!

ピアース・ブロスナンの相変わらず上手いのか下手なのかよく分からないけど、ただ迫力はありとにかく楽しそうなことが伝わってくる歌は好きです。

9月

 ジェイソン・ステイサム主演のサメ映画。海底深く、さらにその奥の人類未踏の深海へ乗り込むも古代の巨大鮫メガロドンを地上に引き連れて来てしまってさあ大変!という作品。肉体派アクション俳優ステイサムと巨大CGモンスターってあんまり相性良くない印象が合ったのだけど、まあ当たらずとも遠からず。序盤や海上でメグちゃん(ちょっと小さい)と戦う時はわりと大作映画の雰囲気をまとっていたのに、後半に芋洗い状態のピーチが舞台になった途端B級映画っぽくなったのは愉快でしたね。中国人のお父さん博士がとてもわかりやすい英語で教訓めいたことを言うのが50年代のSi-Fi映画ッて感じで良かった。

 

  • 累-かさね-

 今年の邦画では1位。土屋太鳳と芳根京子の演技合戦もクライマックスの劇中舞台「サロメ」も良かったです。

映画『累-かさね-』オリジナル・サウンドトラック

映画『累-かさね-』オリジナル・サウンドトラック

 


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  「響」とともに一つの感想記事にまとめています。

 

 人気シリーズ「プレデター」最新作。一応全部つながっていて、「エイリアンVSプレデター」シリーズも「エイリアン」としてのシリーズとしては無かったことにしたい気持ちもあるけれど、「プレデター」シリーズとしては全然あり。本作ではもう最初から政府や軍はプレデターさんたちの存在を知っている状態です。プレデターと人間とが四つ巴ぐらいに成るのだけれど実はあんまりプレデターさんたちの魅力は薄くて人間の特に軍で問題を起こした犯罪者たちのチームが魅力的だったりします。プレデターさんはああ見えて頭の良いとこが魅力なのだけど新人の3mさんは筋肉バカであんまりプレデターの魅力は出せてなかったよなあ、と。

  • 響-HIBIKI-

 欅坂46センター平手友梨奈主演の文芸アクション(違)。演技力というよりも役者とキャラが一体となった感じでは最高でした。優れた作家は文章で説明するよりもまず指を折る!

小説 響 HIBIKI (小学館文庫)

小説 響 HIBIKI (小学館文庫)

 

 

死霊館」シリーズ最新作。メインの物語ではなく外伝としての第3弾。とはいえ今回はアナベル人形は(一応)出てきません。「エンフィールド事件」の前日譚。悪魔ヴァラクがイギリスくんだりまで来た経緯を明かす。1952年の東欧の修道院を舞台としているので雰囲気はこれまでと大分異なる。最初は「薔薇の名前」を彷彿とさせるベテラン神父と新人シスターのコンビが謎を解く、と言う感じなのだがすぐに別の流れへ。面白かったけど「死霊館」や「アナベル」までの雰囲気とはかなり異なるのでシリーズのファンでも評価は割れそう。 

 

 ロック様がダイ・ハードしながらタワーリング・インフェルノする映画。東洋人金持ちといえばこの人「ダークナイト」のラウ社長ことチン・ハンも出ています。ネーヴ・キャンベル久々に見た。

スカイスクレイパー

スカイスクレイパー

 

 

音を聞きつけて襲い来るナゾのエイリアンから逃れてほそぼそと暮らす家族を描いたSFホラー。突っ込みどころは多いし、エイリアンの姿形も魅力薄いし、オチは「マーズ・アタック!」だしと評判の割に個人的にはそこそこ。まあ緊迫した雰囲気でつまらなくはなかったです。ただ設定を理解できていない批評が多かった気がするなあ(といって自分もパンフも買わず、特に調べてないので「どこまで理解してるか分かってないけど)。主演がエミリー・ブラントで最後の最後で一瞬映画の雰囲気が一変するのだが、個人的にはその雰囲気で映画を作ってもらいたかったなあ。

 

10月

 デンゼル・ワシントン主演の「死の天使映画」第2弾。世間的には「一般人だと思ってなめてたら凄腕だった」映画なんていう風に言われてるジャンルですね。今回はホームセンターの店員からタクシー運転手に鞍替え。常連のおじいさんや同じアパートの黒人青年と親交を温めたりする中、かつての上司が殺され、その犯人を探っていく。」前回はどちらかと言うと近寄る敵を片っ端から退治して行ったら最終的に組織も壊滅できました、ッて感じだったのだが(記憶曖昧)今回は積極的に攻撃していくスタイル。クライマックスの海沿いの町で大嵐の中での戦闘は見たことあるようで無いシチュエーションだったが、なんだかまたゲームっぽいなあとも思ってしまった。

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前作の記事。

 

怪物はささやく」の少女版といった感じだがそれ以外にもなぜか「ナポレオン・ダイナマイト」を連想したりしたのだった。イギリスから転校してきたというだけでポッシュ・スパイスってあだ名が付けられたり、字幕で「雷神ソー」と「雷神トール」が両方出てきた気がしてちょっと気になった。読売巨人軍は倒さねばならぬ! 

バーバラと心の巨人

バーバラと心の巨人

 
I KILL GIANTS (IKKI COMIX)

I KILL GIANTS (IKKI COMIX)

 

 一応アメコミ原作映画。

 

 ハリウッド近郊で自堕落に暮らす青年がある日であった女性に惹かれるがその人は次の日には転居していた。いなくなった部屋に描かれたマークなどを元に彼女を探すが、徐々に町の闇に触れていく・・・「イット・フォローズ」の監督の最新作。「LA LA LAND」と「ツインピークス」を合体させたような・・・という言い方もされますね。「イット・フォローズ」は面白かったけれどホラーとしての描写が理詰めで、そこが新鮮だったんだろうけど逆に理詰めなだけに些細な矛盾が気になってそこまで傑作とは思わなかった。それに比べると本作は別にホラーじゃないんだけど徹頭徹尾不条理で、矛盾だらけだけどその辺特に触れないよ、ッて感じで逆に良かったです。というかですね。この映画途中からほぼ主人公の妄想なんじゃないか。と思いますね。映像ミス(右手で物を持ってたのにカットが変わったら左手に変わってた的な)も幾つか見つけた気がしたけど、この場合ミスなのか、主人公の妄想を証明する狙ったものなのかよくわからないです。犬殺しとかふくろう女とか解明されない部分もたくさんあるし。スカンク攻撃の後あたりから全て怪しい。

 とはいえ個人的に子供の頃読んだわりといかがわしいオカルト本や陰謀論本などを思い浮かばせて懐かしさえあった作品でした。

 

ピッチ・パーフェクト」最新作にしてラスト。もう大学は卒業してそれぞれの道を歩むも上手くいかず後輩の活躍に逆に落ち込み、一念発起、軍の慰問ツアーに参加するベッカたちバーデン・ベラーズの面々。今度の相手はラッパーやメタルバンドという異種格闘技戦だ!

1作目は学内予選、2作目は世界大会と舞台が広がったので3作目は異種格闘技戦というまさに正しい3作目。2作目までていた男レギュラーが一切出てこないのも潔い。唐突なアクションも全然ありな有終の美(とはいえ多分何らかの形で作られそうな予感も)。アナ・ケンドリックなどこれまでのベラーズの面々に加え制作で前作の監督でもあるエリザベス・バンクスも引き続き出演。新キャラにルビー・ローズも出てるけどやっぱりこのシリーズの一番の魅力はレベル・ウィルソンですな。本作でも悪乗り大活躍!

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 というわけで9月と10月に観た映画一覧でした。

11月は「ボヘミアン・ラプソディ」ばかり観ています。


『ボヘミアン・ラプソディ』予告編 (2018年)