The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

原作漫画とアニメと実写の理想的なあり方 銀魂


 と驚いたのが約一年前。少女漫画以外の特に非現実的な世界が多い少年漫画の実写映画化は死屍累々たる様子なのであるが、もちろん全部が全部失敗というわけでもない。「るろうに剣心」3作はいろいろ言われてるが概ね成功といえるだろうし、異能力バトル漫画そのものではないが業界ものと言うよりはバトル漫画の亜種であった「バクマン。」はなんなら原作より良く出来ていた。日本だけでなく日本のコンテンツをもとにした海外での実写映画も多く作られるようになりいまや漫画の実写映画は数多く作られている。今回の「銀魂」はその独特なギャグと同時にSF、剣戟としても読まれていて僕も大好きな作品である。だから最初に聞いた時は「おいおい大丈夫なのか?」と思ったのもたしか。ただその不安は監督が福田雄一である、ということで期待に変わった。「HK変態仮面」2作やTVシリーズ「勇者ヨシヒコ」など多くの作品を楽しんでいて、僕自身「銀魂」と福田雄一作品の感性は似ているのでは?と思っていたからだ。というわけで初日に鑑賞したのだった。空知英秋原作、福田雄一監督による「銀魂」を観賞。漫画及びアニメの「銀魂」の実写化、そして福田監督作品の新作としてもほぼ完璧な出来ではないかと思います。もちろん元々の題材や監督の作風が人を選ぶものなので万人向けとは思わないけれど、原作ファンはほぼ満足できるんじゃないかな。

物語

 江戸時代。ペリーの黒船…は来なかった!代わりにやってきたのが天人と呼ばれる異星人たち。天人は強引に開国をさせ、攘夷志士と天人たちの間で攘夷戦争が繰り広げられた。やがて攘夷戦争は攘夷志士たちが敗れ、江戸幕府は天人の傀儡政権として存続、社会が急速に発展するとともに廃刀令が出され武士はその力を失っていった。
 攘夷戦争からおよそ20年後の大江戸かぶき町。かつて攘夷戦争で白夜叉として恐れられた男坂田銀時は今は「万事屋銀ちゃん」をのんべんだらりと営んでいる。従業員は落ちぶれた剣術道場の跡取り志村新八と宇宙で傭兵種族として知られる夜兎の少女神楽。そこに新八の姉、妙や攘夷戦争時代の仲間桂小太郎とそのペットエリザベス、さらに江戸の治安を守る真選組などが加わって、彼らとダラダラした日々を過ごしていたのだった。
 ある時、銀時は刀鍛冶の村田兄妹から盗まれたという名刀紅桜の探索を依頼される。紅桜は持ち主を不幸にするといういわくつきの妖刀。さらに江戸で頻発する辻斬りに桂が巻き込まれ、エリザベスから桂探索も頼まれる。やがてこの2つの事件は一つになり、そこには桂や銀時のかつての同士高杉晋助鬼兵隊の影があった…

 原作の空知英秋の「銀魂」は僕は先にTVアニメの方で知って*1、アニメにしても結構時間が経ってから触れたのだが(それでももう10年近く前だ)、その設定とタブーを恐れぬギャグでファンになった。単行本は全巻持っているとはいかないが、好きなエピソードが収録されている巻は何冊か持っている。
 原作からパワーの有る作品だが、それに輪をかけてアニメが頑張っている作品で、サンライズ製作なのだが自社パロディも他社パロディも辞さないし、原作で紙媒体であることを活かしたギャグをちゃんとTVアニメ媒体のギャグに変換していて飽きないようになっている。ちなみにアニメの方のメインライターは大和屋竺の息子で、浦沢義雄の弟子でもある大和屋暁。今回は直接関わっていないが、実写だからこそより不条理ギャグが活きるという作劇は影響を与えていると思う。
 この作品はワーナー製作の邦画だが、やはりワーナー製作でジャンプ掲載作品の映画化である「るろうに剣心」と共通点があって、「幕末の開国から20年後ぐらいを舞台にした剣戟アクション」だ。もちろん作風から何から全然違うのであるが、この辺外国資本であるワーナーから見て魅力的な題材なのかもしれない。「ラストサムライ」もほぼ同じ時代を舞台にしているしな。
 キャストは脇にいつもの福田組とでも言える常連俳優を配置しつつ、メインどころは実に豪華。主要三人は坂田銀時小栗旬。新八に菅田将暉、神楽に橋本環奈という布陣。

 小栗旬は原作・アニメのほうでも小栗旬之助として出演済み(セリフ無し)だが、今回は主人公坂田銀時として。外見は原作をそのまんま再現し、でも割りとコスプレでなくきちんと劇中に実在するものとして自分のものにしていると思う。ちなみに小栗旬之助は劇中で良い奴として描かれてました。銀時は死んだ目なキャラクターだが、小栗銀時は割りと生気にあふれていたかな。でも熱い桂とニヒルな高杉の間でその虚無感は割りと出せていたと思う。小栗旬は普段のやる気のない銀さんといざというときの格好いい銀さんをきちんと使い分けていてよかった。予告編とかでも使われている「ちわっ」ってところはちょっとつらかったけれど。
 新八はフィリップこと菅田将暉。そっくりです。以上。
 神楽役の橋本環奈。いわゆる「1000年に一人の美少女」さんですね。僕はこの橋本環奈さんは以前所属していた九州のアイドルグループ「Rev.from DVL」のリリースイベントで観て、ついでに握手会にも参加したことがある。この時点で彼女だけが注目を浴びていたこともあるが、他のメンバー(もちろん皆美少女)に比べ彼女だけ明らかに話し方や佇まいがプロとして頭ひとつとび抜けていた印象が強い。その後グループが解散し、彼女は女優として独り立ちしたわけだが、まだ18歳。背が低く童顔なこともあって、年齢設定13歳の神楽として違和感はなし。以前に出演したやはり少年漫画の実写作品「暗殺教室」では自律式固定砲台通称律ちゃんを演じていたけれど、あの時は外見はともかくハスキーな声はあまり似合っていなくて、声だけアニメ声優が吹き替えたほうが(劇中の設定的にも)良かったんじゃないか、と思ったりしたのだが、今回はそのハスキーな声も役柄にピッタリ似合っている。神楽といえばタブー破りのヒロイン。ゲロを吐き鼻をほじり、毒舌を振りまく。果たしてあの美少女橋本環奈がそこまでするのか?というのは話題になっていたのだがきちんとやります。しかもそういうシーンで不快にならないのは素晴らしい(アニメで平気でも実写にしたら不快になる描写などたくさんある)。

 最初は銀時と新八の出会いのエピソード(原作第一話)から始まるんで不安になるんですよ。もしやこのテンポでずっと進むのか?って。それぞれのキャラクターのオリジンや出会いを馬鹿丁寧にイチから見せるんじゃないだろうな?って。でもそっからすぐにギャグモードというかかぶき町の日常に突入。新八や神楽は特に何の説明もなく万事屋にいるし、真選組とはすでに腐れ縁になっているし。この辺の「すでに存在している世界観に客を投げ入れる」「人物相関図に必要以上の説明は入れない」感じはすごく良いです。後はこの後の「カブト狩り篇」でのテンポがギャグだけでなくシリアスモードでも維持されていく。
 映画を観るときに、全く傷のない完璧な作品などというのはそうそうなくて多かれ少なかれその傷を観る側がどのように捉えるかで作品の評価というのは変わってくると思う。例えばたった一つ、あるシーンの描写が許せなくて他はほぼ良い出来だったとしても総体として嫌いになる作品もあれば、傷はたくさんあるけれど、たった一つでも自分の感性とピシャリと合うシーンがあれば他がどうあろうと総合的に好きになる作品というのもある。これは明確な基準と言うものはなく、自分でも曖昧であるのだけれど、僕の場合福田雄一作品は明らかに後者で、客観的に見ても、なんなら贔屓目に見てもダメなところはたくさんあるけれど、最終的に好きか嫌いか問われれば僕は好き作品なのだ。
 今回も福田唯一監督の脚本によるが、原作の「紅桜篇」を底本にしていて、ギャグシーンが幾つかアップデートされていたり、キャストに絡めたりしている以外はほぼ物語の流れは忠実。映画における福田脚本ははっきり言ってオチが弱い。「HK変態仮面」は設定こそ原作付きであったが、物語はほぼオリジナルで中盤の盛り上がりに対してラストはいきなり巨大ロボが登場して無理やり決着をつけている。この辺り単発で完結させねばならない映画より連作でつながられるTV出身らしいところではある。今回は物語から「紅桜篇」をそのまま使っているのでそういう意味での物語のオチの弱さはない。桂を助けるために駆けつけた攘夷党の面々の替わりに真選組になっているなど、真選組が終盤まで関わってくるところぐらいが映画オリジナルの部分で後はほぼ原作に忠実な流れ。

 ギャグシーンはそりゃ好き嫌いは分かれると思いますよ。アニメがサンライズだからガンダムネタがあったり、かと思えば同じジャンプだから「ONE PIECE」ネタがあったり。そこまでなら十分許容範囲だが最終的にはジブリネタまである。キャストの過去の出演作に絡めたギャグなんかも多く、その意味で明らかに全く事前知識なしで楽しめる作品ではないと思う。ただ、原作、そしてアニメの「銀魂」の精神は確実にこの実写映画の中にも生きている。佐藤二朗演じる武市変平太のロリコンネタとか今どきどうなの?と思うものもないではないが、これは原作からあるネタなので。
 でも一発で分かるビジュアルのギャグと、その後に台詞のやりとりで繰り広げられるギャグはやはりアニメのままと言うよりはきちんと福田作品となっていて、特に佐藤二朗ムロツヨシの出演場面はほぼ「勇者ヨシヒコ」なので免疫があるかどうかが問われそう。
 今年は少年漫画の実写映画化がたくさん公開予定で、多分その中ではこの「銀魂」が一番予算が少ないんじゃないかと思える(より少ないのがあるとすれば同じ福田作品の「斉木楠雄のΨ難」か)。もちろんこれまでの「変態仮面」やそもそも予算が少ないことを売りにしていた「勇者ヨシヒコ」に比べると予算は多いのだろうけど。その辺はどちらかと言うと美術よりも原作の再現と豪華キャストのほうに注いでいるか。天人の造形も特殊メイクを駆使してとかじゃなくて本当市販のパーティグッズのマスクをかぶせているだけのような感じ。でもそれが作風にマッチしているのだからいいのだ。
 例えば数多くの漫画実写映画を手がけていて、このあと「ジョジョの奇妙な冒険」の公開も控える三池崇史監督作品だと美術に過剰な作り込みをし画面は常に暗く重くなることが多い。それに比べると福田監督作品は美術に過剰な作りこみはせず、あくまで背景としてのみ捉えている気がする。クライマックスは宇宙船(ぱっと見は木造の船)の甲板での戦闘だが、その背景はまるでベタ塗りのセル画のようなピーカンの青空だ。背景が心理描写の手助けをしたり場面の雰囲気を演出することがない。その分画面が重くなることもない。

 その他のキャストでは、まずお妙役の長澤まさみ。一説には「銀魂」世界最強説もあるキャラクターだが、今回はほぼ動きはなし。演じているのがスタイル抜群の長澤まさみなのでいざ戦闘になれば凄いだろうな、とは思わせるもののアクションがないのは残念。とはいえギャグ部分では十分活躍。個人的には料理してダークマターを生み出すシーンがないのと神楽との絡みがないのが残念かな。
 孤高の攘夷志士桂小太郎を演じているのは岡田将生。同じ攘夷戦争の仲間だった銀時や高杉と比べると役者の中ではちょっと若いがそのスラっとしたスタイルの良さと育ちの良さそうなルックスが桂にはよく似合っている。何よりこの岡田将生大河ドラマ平清盛」で源頼朝としてナレーターを務めたこともあるくらい声が良い。今回もその安定した癒しのイケボイスで我々を楽しませてくれる。「ヅラじゃない桂だ」などの定番セリフや、実は「紅桜篇」において一番の印象的なセリフではないかと思われる「いつから違った、俺たちの道は」も桂があのいい声で聞かせてくれる。全体的に真面目であるがエリザベスがらみのちょっとお馬鹿なやりとりも普段が格好良ければ良いほどギャップで魅力が増すパターン。
 真選組の面々は本来「紅桜篇」では出てこないキャラであるが、本作では大活躍。近藤、土方、沖田の3人が主として登場。ほぼ原作のまま。近藤のイメージは僕の中では照英なのだが、今回は中村勘九郎。はちみつ塗って全身金色になったりお妙のストーカーをしたり、どのキャラでも基本シリアスとギャグがある中ほぼギャグのみです。あと脱ぎ担当。カメラに映らなかったりモザイク処理されたりしている部分は実際に脱いでいたそうな。
 土方は最近すっかり福田組になってきた柳楽優弥柳楽優弥がそれほど格好良い、という印象も無かったのだが、ここでは格好いい土方十四郎を演じている。柳楽優弥はあれだね。豊田エリーと結婚した時は私生活で不安定な部分が見られたんであんまり良い印象なかったんですよ。豊田エリーのそれなりにファンだったこともあって不幸な結婚にならなきゃいいな、って余計なお世話を抱いたものです。でも「アオイホノオ」を経た今は柳楽優弥自身が好きな俳優の一人になっているので今なら素直に結婚を祝福出来ます。おめでとう。
 沖田総悟仮面ライダーメテオこと吉沢亮。こちらもそっくりかつ違和感なし。福田監督作品は初とのことだけど妙に馴染んでいてこの後は「斉木楠雄のΨ難」でも出演します。ちなみに近藤が全裸で素振りするシーン。沖田はアイマスクしてるので見れてないそうな。

 敵役となる鬼兵隊はまず高杉晋助KinKi Kids堂本剛堂本剛というと役者としては初代「金田一少年の事件簿金田一一役。後は「人間・失格」なんかか。以降は僕なんかは正直役者というよりもバラエティの印象のほうが強い。役者としてみても、なるほどルックスはジャニーズだけあって美形だけれど背はそれほど高くなく、スタイルもそれほど良いというイメージもなかった。攘夷戦争の同士でもある銀時、桂、高杉を演じる3人の中では一番の年上でもあり、あんまり高杉に合うイメージは浮かばなかった。でもその美貌は妖艶にして繊細。大きな満月をバックに三味線を奏でる姿は美しく、語られるセリフも正直何言ってんだかよくわからないけど情念にあふれたものとなっていて高杉にぴったりでした。
 高杉の部下で鬼兵隊の幹部が菜々緒演じる来島また子と佐藤二朗演じる武市変平太。菜々緒はその美しいスタイルと攻撃的な美貌が神楽のどちらかと言うとちょっとムチムチした体型&童顔と対比になっていた。佐藤二朗はもういつもの佐藤二朗です。
 妖刀紅桜に取り憑かれた人斬り、岡田似蔵にはこれこそ「死んだ目の役者」として僕が一押しの新井浩文。今回は全くギャグシーンがなくクライマックスなんて突っ立てるだけだったので正直苦痛だったそうな。
 他、ムロツヨシ安田顕といった福田組常連が登場。安田顕の村田鉄矢はとにかく一定の調子で常に大声で喋るという役。これとか近藤がはちみつ塗って全身金色になるやつとか、面白いと思うかつまらないと思うかは自由だけど、まず原作にある設定やシーンで原作からこのエピソードをチョイスした以上外せない部分であることは理解したい。同じネタでもこう演出したほうが、ってならともかくネタ自体がダメだってのは原作の否定だからね。

 ちなみにエリゼべスの中の人はこの人(舞台挨拶では本当に中の人やってたけど、劇中は声の出演だけみたい)。エリザベスはもしもふなっしーブーム以前に映画化されてたらオールCG(今回だと定春みたいな感じ)での出演になってたかもしれないけど、ふなっしーを経て我々に着ぐるみを着ぐるみとして受け入れる心の余裕が出来たからこそのエリザべス。


 今回他の漫画実写映画化作品と違って素敵だなと思ったのは、アニメと映画が別物となっていないところ。通常漫画原作だとアニメ作品と実写映画作品とは複雑怪奇な権利の理由により別々のTV局、制作会社によって制作されることが多く、原作の掲載誌ぐらいはともかくTVなどではきちんと連動していない(できない)ことがあった。今回は映画の予告編のナレーションは長谷川さん(立木文彦)だし(ただし長谷川さん自身は映画には登場せず)、原作69巻の発売告知をアニメのキャストが自虐混じりで実写を背景にやってたりする。こういう原作、アニメ、実写映画のある意味理想的な制作体制が本作ではなされているのではないか?と思う。

 何度か言ってる通り、原作にしても監督の作風にしても人を選ぶ作品。ただこれだけ原作がメジャーなんだから「(原作通りなのに)原作読んでないけどあのシーンはダメでしょ」みたいな意見はどうかと思う。ほんのちょっとでも読めばいいのに。
 そしてこの映画は原作の「銀魂」ファンならまず間違いなく満足できる作品ではないかと思う。個人的には少年漫画の実写映画としては過去最高。原作ファンは観て欲しい。原作やアニメを知らんならまずは少しだけでも原作を読んでその上で自分で劇場へ行くかどうか決めると良い。

*1:週刊少年ジャンプは30年以上ほぼ毎週読んでいるが(大きな声では言えないが買うのは年に数回でほぼ立ち読み)、かと言って掲載作品全部読んでいるわけではなく、すでに知っている作者の作品なら新連載からチェックするけれど(新人の作品を連載1回めからチェックしたのって「ONE PIECE」の尾田栄一郎と最近では仲間りょうの「磯部磯兵衛物語〜浮世はつらいよ〜」ぐらい。堀越耕平の「僕のヒーローアカデミア」も一回目から注目したけれどその前に連載作品があった模様)そうでない作家の作品はある程度連載が溜まってアニメになったり人気が爆発してから読み始めることが多い

頑張れ宇宙のおまわりさん! スペース・スクワッド

 先月観たばかりの作品がもう発売!というか正確には発売前に劇場でも公開しますよ、というものだった模様。というわけで本日発売になった東映宇宙刑事シリーズとスーパー戦隊のクロスオーバー作品「スペース・スクワッド」2作。「ガールズ・イン・トラブル」と「宇宙刑事ギャバンVS特捜戦隊デカレンジャー」の2本を観賞。一応前回の記事で簡単に感想書きましたが、もうちょっと踏み込んで。
 この2作は宇宙と警察もの、と言う共通点があって、以前からこの2作のクロスオーバーはファンの待望でもあった。もっとも「デカレンジャー」放送時のヒーローショーでの共演はすでにあったようだが。その後「ゴーカイジャー」でスーパー戦隊の(限定的とはいえ)世界観がつながったことや、その「ゴーカイジャー」の劇場版でギャバンが復活したこと。更にはギャバンが一条寺烈から十文字撃へと世代交代したこと、デカレンジャーのほうも放送から10年経ってことでその後のデカレンジャーを描く「10Years After」がオリジナルとして発売されたことなどで両作品復活の期待が高まり待望の映像作品での共演となった。僕も「宇宙刑事ギャバン」はじめメタルヒーローシリーズはその初期から見ていたし、「特捜戦隊デカレンジャー」も近年のスーパー戦隊の中では大好きな作品なので楽しみであった。今回の作品には「10Years After」の続編としての要素も多く、それを見ていないとちょっと物語理解に苦しむかも(僕自身今回の映画を観てからチェックして疑問だった部分を解消した次第)。

ガールズ・イン・トラブル スペース・スクワッドEPISODE ZERO

 宇宙警察地球署所属の刑事ジャスミンが目覚めるとそこは謎の独房であった。なぜそこにいるのかも記憶が無い。そこに現れたのは謎の怪物。ジャスミンは部屋を飛び出目してウメコと出会うが間もなく怪物にやられてしまった。
 再びの覚め。やられた記憶はあるがまたイチからのスタート。何度も怪物との対決と死を繰り返しながら、やがてシェリー、タミーといった銀河警察の刑事と合流しちょっとづつ怪物攻略を進めていく。どうやらここには宇宙の女刑事ばかり集められていいるらしい。怪物の正体は?そして彼女たちをここに集めた黒幕の正体は?

 こちらの「ガールズ・イン・トラブル」が本編「宇宙刑事ギャバンVS特捜戦隊デカレンジャー」の前日譚で限定された空間を舞台に登場人物も限定されるということで舞台劇のような印象も受ける。
 映画は基本的にジャスミン(日渡茉莉花)の視点から始まる。ジャスミンはTVシリーズではその独特な台詞回しが特徴だったのだが、久しぶりだったため観てるこちらがそのキャラクターに復帰するのにちょっと時間がかかるかも。どーんと行ってみよう!ジャスミン役の木下あゆ美デカレンジャー以降もちょくちょく特撮系番組には出ていて最近はキョウリュウシアンでもあった。ジャスミンはとにかく格好いい女性で女性が二人いる戦隊の場合、どちらかがキュート系でもう一人がクールビューティー系というのが定番だが、そのクールビューティ系でも個人的決定版。更には独特のギャグセンスを持つキャラクターでもある。今回はいつの間にか結婚して子供もいるのだが(名字も礼紋から日渡に変わっている)、その辺の事情は「10Years After」の方で。
 デカピンクこと胡堂小梅(ウメコ)はあまりTVシリーズと変わらず。結婚式を控えているが、まだセンちゃんと結婚していなかったのか!という。演じる菊地美香は歌唱力が半端ない人で、今回もそうだが、TVシリーズでもエンディングテーマ(今回のタイトルの基ともなっている「ガールズ・イン・トラブル・デカレンジャー」)をジャスミンとのユニット「ツインカム・エンジェル」として歌っていたが、はっきり言って二人で歌う部分ではジャスミンの声が打ち消されるほど。
 そして僕としてはジャスミンともう一人この作品を観る目当てだったのが「宇宙刑事ギャバン」のギャバンの相棒の女刑事シェリー役の森田涼花(すぅちゃん)。すぅちゃんは「侍戦隊シンケンジャー」の花織ことはとしても有名だが、今回は宇宙刑事。コム長官の姪という設定でギャバンの相棒を務める。ほかにシャイダーの相棒であるタミー役の川本まゆ。そして前半は直接かかわらないがシャリバンの相棒であるシシー役の桃瀬美咲。この5人が主役グループという形になる。劇中には他にも何人か女刑事が出てくる。その中で佃井皆美が重要な役で出演。佃井皆美は「仮面ライダー鎧武」での湊耀子=仮面ライダーマリカとして出ていたのでこれは茉莉花ジャスミン対決でもあったのだな。

 冒頭から黒幕として姿を表し、その容姿(インコのような頭に普通の身体)からホラーガールと思わせていたのが実はホルス星人の銀河連邦警察の刑事部長であるバーディ。さらにコム長官亡き後オリジナルビデオの「宇宙刑事NEXT GENERATION」で不祥事で逮捕されたゴードン長官に替わって新しく銀河連邦警察の長官になったのがソフィで演じているのは遊井亮子。ちなみに今回の設定では銀河連邦警察は宇宙警察の中で組織犯罪対策部門という位置づけになっっているようだ。つまり基本的には同じ組織。
 敵となるのは元宇宙刑事の紅牙とヘルバイラ。紅牙は宇宙忍者でもあり敵側の「ガールズ・イン・トラブル」と「ギャバンVSデカレンジャー」をつなぐキャラクター。演じているのは原幹恵で「仮面ライダーフォーゼ」でのインガ・ブリンクを踏まえたキャステイングであると思わせる。原幹恵さんはあんまりアクション俳優として評価されてないっぽいのは残念ですな。
 ヘルバイラは元々「時空戦士スピルバン」のキャラクターで「ギャバンVSデカレンジャー」で出てくるマッドギャラン同様他のメタルヒーローシリーズからの流用。かつて「フォーゼ」の映画版で「宇宙鉄人キョーダイン」や「大鉄人17」、「アクマイザー3」などがキャラクターだけ借りる形で出演し物議をかもしたが(ヒーローが悪役になっていたりしたため)、本作での出演もそれに近いものかとおもいきや…
 当時場人物が一部を除くと女性しか登場しないためちょっと特殊な作品とは言えます。あくまで本編前の前日譚。とはいえ生身のアクションということではむしろこちらのほうが見応えはあるかもです。
 で、ですね。僕はこの作品をジャスミンとすぅちゃん目当てで観に行ったんですが思いがけずもう一人のヒロインに一目惚れしてしまいましたですよ。それがタミーさん役の川本まゆ。実際空手などの実力者だそうで、武田梨奈系のアクション女優。そして写真などで観る限りはすごい美人というわけでもないんですが、これが動くと凄い魅力的。もちろんジャスミンとすぅちゃんも素敵なのですが今回はタミーさんが優勝でした。タミーさんの凶暴になる純愛キャラってのも良かったな。相手は伊達さんだしな。

スペース・スクワッド 宇宙刑事ギャバンVS特捜戦隊デカレンジャー

 宇宙の隅々にその触手を伸ばす新たなる悪の犯罪組織が登場。教祖フメインを頂点とする邪教団・幻魔空界である。幻魔空界には十二使徒と呼ばれる幹部が存在し、それぞれがまた別個に犯罪組織を抱えている。宇宙刑事ギャバンこと十文字撃は相棒のシェリーとともに十二使徒の一人マッドギャランが現れる犯罪取引現場を発見、応援を待たず攻勢をかけたギャバンであったがマッドギャランの強さの前に敗れ去るファイアー・スクワッドが到着した時にはすでにマッドギャランは去り、更にシェリーも行方不明に。
 捜査からから外されたギャバンは長官のコンピューターからサイコメトリーの能力を持つ刑事ジャスミンの存在をしり地球へ向かう。一方地球でも連続吸血ま事件を捜査していた。ウメコとセンちゃんの結婚式のその時、ギャバンが突然現れジャスミンに共に捜査するよう促す。ジャスミンを利用しつつデカレンジャーとの共同捜査は拒否して爆走するギャバン。再びマッドギャランと戦うも再び敗れ、レーザーブレードを折られてしまう。ギャバンは再び立ち上がることができることができるのか?そしてデカレンジャーは事件を解決できるのか?

 デカレンジャーの宇宙警察とギャバンの銀河連邦警察所属の宇宙刑事の違いは捜査の対象が同じ宇宙人か異次元人かという違いであると基本的には思っている。デカレンジャーに出てくる犯罪者アリエナイザーは基本的には地球人以外の犯罪者をさすがそれでも同じこの宇宙の住人。それに対してマクーやマドー、フーマと言った組織は異次元からの侵略者である。このより強力な敵を相手にするのが宇宙刑事(英訳がSPACE SHERIFFであり宇宙の保安官)。当然権限や装備も宇宙刑事のほうが強力。一方で未知の相手のためほぼ単独捜査であるのも宇宙刑事のほうだろう。
 ただ、今回は両者の設定を擦りわせてた結果、銀河連邦警察は宇宙警察の中の組織犯罪対策を主とした部門という形になっている。ただ両組織の上下関係は銀河連邦警察のほうが上位ぽくもあるのだが。
 敵組織幻魔空界は今回はチラ見せ程度。だが宗教組織でもあるという形から不思議界フーマを連想させ、やはり黒幕は異次元からの侵略者なのではないかと思わせる。幹部の十二使徒で登場するのは「ガールズ・イン・トラブル」に出てきたヘルバイラとこちらで登場するマッドギャランマッドギャランは「宇宙刑事」シリーズのあと同じメタルヒーローではあるけれど世界観は連続していない「巨獣特捜ジャスピオン」のキャラクター。最初はキャラクターの流用という形のかと思ったが劇中でちゃんとジャスピオンにも言及され、きちんと「ジャスピオン」ともつながった世界であることが判明。今回のマッドギャランはかつてジャスオピオンと死闘を繰り広げたマッドギャランの名前と装備を受け継いだ二代目ということになる。「ジャスピオン」は見ていたけれどもう細かい内容は覚えていなくてマッドギャランもどういう感じのキャラだったかあまり覚えていないのだけど、見た目からはハカイダーのような主人公のライバル、と言う感じ。今回もTVの時に担当していた春田純一が変身後の声を演じているが、ちょっと人間態の時が悪役と言っても卑怯で嗜虐性の高い、要するに悪役としてもあんまり格好良い人格ではないのがちょっと残念。
 デカレンジャー側としては地球署の署長は変わらずドギー・クルーガー。そして副署長に姶良鉄幹(デカブレイク)。バンがファイアー・スクワッドの隊長になっている。ジャスミンは「10Years After」では結婚/出産を経て半ば引退していたようだが、本作では通常勤務。ウメコも同様。
 一番出世欲(というか上昇志向)の強かったホージーと参謀として得難い能力を持つセンちゃんがヒラの刑事として現場で頑張っているのは意外と言っちゃ意外だがこれは「10Years After」でのドギーの冤罪事件の影響もありそうだ。

「ガールズ・イン・トラブル」からのつなぎ役として原幹恵の紅牙が再登場。
 映画は最終的に対幻魔空界のための部隊スペース・スクワッドを創設することが示唆されて終了。今回は登場しなかったがシャリバンシャイダー宇宙刑事、ジャスピオンとスピルバン、「世界忍者戦ジライヤ」「「特捜ロボジャンパーソン」「ブルースワット」など宇宙と縁が深いメタルヒーローシリーズ、更には「超新星フラッシュマン」「地球戦隊ファイブマン」「星獣戦隊ギンガマン」といったやはり宇宙に縁深いスーパー戦隊などが映像で言及され、対幻魔空界としてこれらの宇宙ヒーローが一斉に共演することが期待される。ちなみに現在放送中「宇宙戦隊キュウレンジャー」はすでにギャバンデカレンジャーと共演済みだが劇中でちゃんと「別宇宙の話」とされてしまったのでいわゆる同じ世界観」ではないようだ。
 というかあまりに壮大な話になっているが、本当に続編やるのか?それともとりあえず風呂敷広げるだけ広げただけか?個人的に「スーパーヒーロー大戦」がダメだったり仮面ライダーと他のヒーローとのクロスオーバーはあまりうまく言っていない印象があるけれど、今回は全部八手三郎原作だけあってうまくつながっていたと思う。

スペース・スクワッド ギャバンVSデカレンジャー [DVD]

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 ギャバン(と宇宙刑事シリーズ)は映画で復活した後は映画、オリジナルビデオ、戦隊へのゲスト出演などがあるがまだ新しいTVシリーズでの放送はない。それでももう5年ぐらい経っているわけでオリジナルからの人気の強さを感じさせる。
 一方デカレンジャーも10年たった今も人気があり、こうして続編が作られている。互いになんなら世代交代しながらずっと続けられる設定でもあるので(基本は刑事ドラマだからね)、スーパー戦隊シリーズの中の一本という位置づけとはまた別に単独で長く続いて欲しい作品である。
 あ、監督は両作とも坂本浩一監督です。今年は監督がTVで関わった「パワー・レンジャー」の映画版が公開されたりなにかと坂本浩一監督の関連作が多い。僕が大好きになったタミーさんとか明らかに監督の趣向が反映されていると思うので(それを除いても)監督の個性も強い作品。
 どちらかと言うと今の子供と言うよりはオリジナルのギャバンだったり10年前にデカレンジャーを見ていた子供だったりというちょっと上の年代が対象の作品だと思うけれど楽しんで見れる作品です。
 きっとまた彼らに会える。未来へ向かって!
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 新生ギャバン一作目。

2017年上半期に観た映画!あとベストヴィランも

またしても間が開いてしまいました!

土下座しているようで実は説教している怪物さん。

 いやまた諸事情でブログ更新できない事態が起きて、6月下旬ぐらいには大丈夫になったんですが、ブログ更新の気力がすっかり失せてしまっていました。その間にも劇場で観て感想書いてない映画は増えていき、「キン肉マン」も最高潮の中で物語が終了して、今は新しい物語に突入!6月はまるまる一ヶ月更新できず、すっかり放置状態になっていました。
 とは言えその間にも時間は進み、映画に関しても素晴らしい作品も幾つか出会えてたのでとりあえず2017年上半期の劇場で観た映画のリストと簡単な感想、上半期ベスト5ぐらいを挙げてリハビリしたいと思います。
まずはリスト。月は鑑賞日ではなく日本公開月です。以前の2016年の映画鑑賞リスト製作時に参考にしたこちらを今回も参考しました。

  • 1月

劇場版 動物戦隊ジュウレンジャーVSニンニンジャー 未来からのメッセージ fromスーパー戦隊
沈黙−サイレンス−
ザ・コンサルタント
マグニフィセント・セブン
ドクター・ストレンジ

  • 2月

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち
相棒-劇場版Ⅳ-首都クライシス 人質は50万人!特命係最後の決断
トリプルX:再起動
ラ・ラ・ランド

  • 3月

アサシン・クリード
アシュラ
モアナと伝説の海
哭声/コクソン
SING/シング
キングコング:髑髏頭の巨神

  • 4月

レゴバットマン ザ・ムービー
バーフバリ/伝説誕生
美女と野獣
ワイルド・スピードICE BREAK

  • 5月

ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー:リミックス
皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ

  • 6月

LOGAN/ローガン
怪物はささやく
キング・アーサー
ジーサンズ はじめての強盗
ガールズ・イン・トラブル スペース・スクワッドEPISODE ZERO
スペース・スクワッド ギャバンVSデカレンジャー

  • 7月

リヴォルト
 もう半分以上感想書いてない状態ですが一応観てないと言いつつ、週一ぐらいのペースで劇場鑑賞してはいるでしょうか。例年にも増して複数回劇場で観る、というのも増えている感じで、「ドクター・ストレンジ」「SING」「キングコング」「美女と野獣」「ワイルド・スピード」「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー」あたりを複数回(たいていは字幕と吹替を一回づつ)観ています。6月は「ローガン」を公開初日に観た後一気に間が空いて、他の作品は下旬に観ている感じ。「リヴォルト」は7月1日公開ですが、「ジーサンズ」とはしごしたし、特にこれといって特筆する感想もないのでここでまとめちゃいます。
 それでは各作品ごとに簡単な感想を。すでに感想記事を書いているものに関しては詳細はリンクから。

  • 1月

劇場版 動物戦隊ジュウレンジャーVSニンニンジャー 未来からのメッセージ fromスーパー戦隊

 恒例スーパー戦隊VSシリーズ。人間ではないジューマンと個性の強い目立ちたがりの忍者に挟まれて常識人大和(ジュウオウイーグル)が苦労する物語。まーた矛盾してるなあと思わせて(かなり強引だけど)ちゃんと整合性を付けてくるところも見事。ニンニンジャーのキャッチコピーは「忍ばずわっしょい!」「忍どころか暴れるぜ!」なのだが、あの世界ニンニンジャーに限らず忍者がきちんと職業として認知されていて、ニンニンジャー以外にも普通に忍者が出てくるのでそもそも忍んでいないのはニンニンジャーだけではないのだ!

沈黙−サイレンス−

 遠藤周作キリスト教文学をマーティン・スコセッシが約30年越しの思いで映画化した作品。キリスト教が禁教とされた江戸時代初期の日本を舞台に、棄教して転向した師匠を追って二人の宣教師が日本に密入国。そこではキリシタンに恐るべき拷問が行われていて…。棄教を迫る日本側の描写が割りと理詰めで迫ってくるので「宣教師側が悪い」とかいう感想も見受けれたが、そう単純な物語ではない。リーアム・ニーソンのフェレイラやアンドリュー・ガーフィールドの若い神父が苦悩するが、その中でまるで純粋悪のように立ち塞がるイッセー尾形が圧倒的な存在感で迫る。

ザ・コンサルタント

 後述するある作品を観るまでは今年の1位。もちろん今でも上位に来るであろう痛快作。スターベン・アフレックが見た目普通、でも凄腕殺し屋(便宜上)を好演。自分が付けた「死の天使」映画、という呼称が割りとウケたのも良い。「死の天使」映画ではキアヌの「ジョン・ウィックチャプター2」が公開中!(近日鑑賞予定)。

マグニフィセント・セブン

 大好きな映画「荒野の七人」のリメイク。リメイクと言ってもオリジナルの「七人の侍」を西部劇に移しつつも筋立てや登場人物の設定はかなり忠実だった「荒野の七人」に比べると同じ西部劇だけどだいぶ変えてあります。普通に現代製作の西部劇として面白かった。ただ、客観的な作品の評価とは別に僕は「荒野の七人」に対する思い入れが深すぎるのでリメイク作品として比べた場合はやはり「荒野の七人」には及ばない、という評価に落ち着きます。

ドクター・ストレンジ

 今年のMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)第1弾にして新ヒーロー。ベネディクト・カンバーバッチ演じるオカルトヒーロードクター・ストレンジの活躍を描きます。現時点ではあまり他のMCU作品との関連性は薄いけれど、特徴的な映像が観るものをトリップさせます。ラストのおまけではソーとの絡みもあり早ければ11月公開の「マイティ・ソー:バトルロイヤル」で共演あるのかな?

  • 2月

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

 ティム・バートン最新作。亡くなった祖父の思いを受けてある島に赴くとそこには特殊な能力を持ったこどもたちが同じ毎日を繰り返していた。彼らを守るのがミス・ペレグリン
 原作付きですがティム・バートンのファンタジー系映画では「アリス・イン〜」や「ダーク・シャドウズ」と比べてもティム・バートンらしさは強く発揮されたかな?と思います。何度か言っているけれど、最近は盟友であるジョニー・デップとのコラボ作品じゃないほうが面白い作品が多い気がしますね。

相棒-劇場版Ⅳ-首都クライシス 人質は50万人!特命係最後の決断

 人気TVシリーズ「相棒」の新相棒冠城亘を迎えての劇場版4作目。今回はかなり大規模に都市部でのテロをモチーフにしています。舞台は銀座、となっていますがロケ地は北九州だそうです。映画自体はなかなかおもしろかったのですが、「相棒」と言う作品の特性上致し方ないのか物語のクライマックスの後、右京さんの説教タイムが10分(体感)ほど続くので興奮がすっかり冷めた状態で終わりを迎えるのが難点ですね。上手くこの説教をアクションの中に組み込んでクライマックスを迎えたらその興奮を維持したままエンディングに繋げられると良いのですが。鹿賀丈史北村一輝などがゲスト出演で好演。予告編観た時は蒼井優だと思った人は山口まゆという新人さんでした。ミッチーも出てるよ!

トリプルX:再起動

 今年何度も出会っている俳優ヴィン・ディーゼル出世作の最新作。ドニー・イェントニー・ジャーなどを迎えてとにかくアクションが先にあって、それをつなぐためにストーリーがあるんじゃないかと思わせる快作。ただそんなんなので物語は単純、登場人物も笑顔が素敵な奴は良い奴だし、冷たそうな奴はやっぱり悪い奴というわかり易さだけれど、観ていて余計な引っ掛かりがほぼ無いのでストレスゼロで観れる作品でもあります。

ラ・ラ・ランド

 今年大ヒットしたエマ・ワトソンライアン・ゴズリング主演のミュージカル。ただ個人的には相性が悪い作品でした。今のところ今年のワーストかなあ…。

  • 3月

アサシン・クリード

 マイケル・ファスベンダー主演の人気ゲームの映画化作品。僕はゲームの方はプレイしていないのでどんな作品かよく分からず(中世を舞台にしたメタルギアソリッド、というイメージだった)挑んだのだけれど、これが単に中世ヨーロッパが舞台の作品ではなくて、現代人の遺伝子から先祖の記憶を再現、子孫がその先祖の記憶を追体験して先祖が隠したであろうマクガフィンの居場所を探る、というSFだったのですね。話としては「ミッション・8ミニッツ」に近いです。現代に生きる子孫とその先祖で凄腕のアサシンをマイケル・ファスベンダーが演じています。この作品の感想では「わけが分からなかった」というようなものも多く見かけたけれど、個人的には割りと分かりやすい方だと思います。ただ作品は割りと淡々として派手さがなく、物語的にももう一波乱あるかな?と思ったらそこで終わってしまったのでちょっと消化不良ではありました。
 ちなみにこの作品を観た後劇場の外でエホバの証人から冊子を渡されそうになりましたが、気分はアサシンだったので受け取りませんでした。

アシュラ

 韓国のノワール。「新しき世界」のファン・ジョンミンが悪徳市長。その義理の弟で忠実な部下となっている刑事にチョン・ウソン。市長を捕まえんとする検事との板挟みで苦しむ刑事を描く。とにかく悪人ばかりロクデモナイのに魅力的、特にファン・ジョンミンの極悪人なのに人懐っこくて魅力的、という演技は「新しき世界」ともつながっている。ウソンは「グッド・バッド・ウィアード」のグッド良い奴。あの時はイ・ビョンホンソン・ガンホに比べるとハンサムだけど人間としての魅力にはまだ欠けるかな、という感じだったけれど、あれから約10年、こういう善悪の間で苦悩する役にピッタリになりました。
 映画の中での描写なので、現実の韓国警察がどうなのかはわからないけど、悪徳警官でも容疑者を逮捕する時はきちんとミランダ警告(お前には黙秘権がある、弁護士を呼ぶ権利があるみたいなやつ)を読み上げるんですな。「棒きれ」というネーミングは酷いけどセンスの良さしか感じない。

モアナと伝説の海

 今度のディズニー映画はサモア系の伝説を元にした海洋ミュージカル!ハワイの神話を元に途中は海のマッド・マックスもあり痛快アクション映画にもなっている。モアナの相棒で伝説の暴れん坊マウイをロック様(ドウェイン・ジョンソン)が演じている。ロック様としては元々サモア系であるし自分のルーツともつながる役を演じたこととなる。ただマウイのデザインはロック様より親戚のアノアイ家のリキシ・ファトゥや祖父のピーター・メイビアに近いどっしりした体格。日本語吹替では尾上松也が演じていて、ロック様と対照的にまだ若く声の透明度が高いのでヤンチャな少年という感じ。ロック様のマウイはサモア系でもあるロック様のルーツが背景にありつつロック様特有の善悪を超越した我が道を往くオレサマという感じ。割りと声質は全然違うけれど、どっちのマウイもオススメなので両方見るといいよ。他のキャストも良かったです。

哭声/コクソン

 アシュラと一部キャストが共通するオカルト映画。日本から國村隼が出演。その独特の存在感で韓国の田舎町を混沌とさせる。観た人の数だけ答えがありそのどれもが正解であり間違いでもある、というような不思議な映画。ファン・ジョンミンの祈祷家の悪魔祓いはあれ、韓国の伝統的に正しい描写なんでしょうか。

SING/シング

 イルミネーション・エンターテイメントの新作。同じ擬人化された動物による文明社会の物語として昨年のディズニー映画「ズートピア」と共通するが、こっちはかなりおおらか。歌の映画ではあるがミュージカルではない。とにかく勢いがあるので観てる時は割りと圧倒される作品。エンターテインメントとしては今年最高峰。個人的にはこの作品と「美女と野獣」が「ラ・ラ・ランド」を遠くに追いやりました。

キングコング:髑髏頭の巨神

 2014年の「GODZILLA」につながるモンスターヴァースの中の1編として制作された新しいキングコング。僕はオリジナルの「キング・コング(1933)」が大好きすぎるのでリメイクとして観た場合には「マグニフィセント・セブン」同様辛口評価になっていまうけれど、客観的評価としては素晴らしいと思います。作品はラストでゴジラモスララドンキングギドラの存在を匂わせて世界観を広げて終わります。ゴジラとも戦うぜ!

  • 4月

レゴバットマン ザ・ムービー

 レゴ・ムービーにも出てきたバットマンの単独主演レゴ版。「レゴ・ムービー」ではレゴの世界にバットマンもいるよ、という感じだったけれど、今回はバットマンの世界をレゴで表現したよ、という感じ。実写の人間も出てこない。各実写映画のバットマンをパロディ化しつつ、意外と正統派のバットマン映画になっているとも思います。ジョーカーのバットマンへの愛憎ということではこれまで映像化されたバットマンの中でも一番かも。後半はいろんな映画のパロデイもありつつ、バットマン映画では珍しい明るいハッピーエンドへ。

バーフバリ/伝説誕生

 インドの史劇。話自体はオリジナルだそうだけど、どこかで聞いたこともあるような壮大な神話的な物語。インド映画なので長いのは覚悟の上で鑑賞したのだけれど、これでも前後編の前編。テンション高い英雄活劇があって、体感的にはもうこの時点で2時間は経ってる盛りだくさん具合。それで話的にはまだまだ終わりそうにないので、後編に続くのかな?と思ったらそこから映画もう一本分ぐらいのボリュームのある密度の高い史劇が始まったのでありました。でもトータル上映時間は2時間半もないという、コストパーフォーマンス的にはピカイチかも知れない。後編も楽しみ。

バーフバリ 伝説誕生 [Blu-ray]

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美女と野獣

 ディズニー中興の祖とでも言うべき作品の実写リメイク。僕はアニメ映画「美女と野獣」の方はそれほど好きじゃなかったんだけど、この実写化はドはまりしました。実写化する際に下手な小細工をせず真正面からてらいなく挑む、というのは(もちろんディズニーの資金と技術があってこそだけど)意外とこれまで無かったんじゃないかと思います。

ワイルド・スピードICE BREAK

 ヴィン・ディーゼル主演シリーズ第8作。僕はこのシリーズは前作「SKY MISSION」がシリーズ観賞の最初だったんだけど、今回は全作観賞の上で挑戦。結果としてシリーズ集大成的な部分もあるのでそれが正解。シリーズは続くし、いろいろ不穏な噂も聞こえてくるけれど、続きが楽しみな作品。

FAST & FURIOUS 8: THE ALBUM

FAST & FURIOUS 8: THE ALBUM

  • 5月

ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー:リミックス

 MCUの異端児作品第2弾。前作と比してもギャグは増え(悪ノリも)、逆にMCU他の作品との関連は薄くなったので意外と人を選ぶ作品かも知れない。カート・ラッセルが自分の父親だったらいいな、という世界中の男の子の夢を叶えつつ、でもそこからの脱却を示唆する映画(そうか?)。次こそは地球のヒーローたちと合流する模様。

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス オーサム・ミックス・VOL.2(オリジナル・サウンドトラック)

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス オーサム・ミックス・VOL.2(オリジナル・サウンドトラック)

皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ

 イタリア製ヒーロー映画。永井豪原作の「鋼鉄ジーグ」にオマージュを捧げ、ふとしたことでスーパーパワーを手に入れた一人のチンピラが鋼鉄ジーグのようなスーパーヒーローとして覚醒するまでを描く。「鋼鉄ジーグ」は「マジンガー」「ゲッターロボ」両シリーズに続く永井豪原作のロボットアニメ。一連の永井豪アニメがヨーロッパで大人気というのは知っていたけれど、この「鋼鉄ジーグ」は僕はほぼ未見。リアルタイムではないというのもあるけれど、それでもマジンガーゲッターロボは全話でなくても要所要所の重要エピソードなどは見ているが「鋼鉄ジーグ」はゲームの「スーパーロボット大戦」経由で設定や物語を知っている程度。ただ、主人公がロボットに搭乗するのではなく一旦サイボーグに変身してその後ロボットの頭部に変形、身体や腕のパーツと合体して巨大ロボとなる、というのはかなり斬新(トランスフォーマーのヘッドマスターズのアイデアの源泉とも言われている)。今回この作品の監督がモチーフにマジンガーでもゲッターでもなくジーグを選んだのは、もちろん監督自身の思い入れもあれど、搭乗するのではなく、その直接ロボットの一部分になる、という皮膚感覚が作品にピタリだったからではないかと思う。
 主人公は割りと冴えない中年だが、ヴィランとなる若いギャングのボスがルックスもキャラクターも最高で悪役として素敵でした。
 ちなみにこの「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」というちょっと機械翻訳っぽいけど強い印象を残す日本語タイトルは、日本側で考えたものではなく、最初からイタリアの制作側で考えられたもので、昨今話題になる邦題論争はもう日本側でなくオリジナル製作国側で最初から用意してもらえば決着でいいんじゃなかな?とか思いました。

皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ

皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ

鋼鉄ジーグ VOL.1 [DVD]

鋼鉄ジーグ VOL.1 [DVD]

  • 6月

LOGAN/ローガン

 ヒュー・ジャックマンによるウルヴァリン最終作。一応20世紀FOXの「X-MEN」シリーズに連なる作品だけれど、時系列上は過去のどれともつながらず本作のみでひとつの世界観を成す。とはいえ過去の「X-MEN」や「ウルヴァリン」によって築き上げた世界観の上に成り立っていることも間違いなく、本作は厳密にスーパーヒーロー映画とは言いがたいが、それも過去のシリーズで観客が世界観を了承していればこそ。プロフェッサーXことチャールズ・エグゼビアとしてパトリック・スチュアートが演じているがこれがもう素なのか演技なのか判断に困るぐらい「お爺ちゃん夕ごはんはさっき食べたばかりでしょ」という感じの本当の痴呆老人なのではないか?と心配するレベルで妙な緊迫感もある。パトリック・スチュアートって「新スタートレック」のピカード艦長で見かけた時から初老のイメージだったけれどあの当時はまだ40代だったのだな。今は76歳。でも当時も今も60歳ぐらいのイメージ。
 ラストは涙なしでは観れぬ。こちらも「デッドプール」同様R指定だけれど、全然印象は違いますね(当たり前だ)。

Logan - O.S.T.

Logan - O.S.T.

ウルヴァリン:オールドマン・ローガン (MARVEL)

ウルヴァリン:オールドマン・ローガン (MARVEL)

怪物はささやく

 年に一本あるかないかの確率で「これはオレの映画だ!他の誰がなんと言おうとオレだけは全力でこの作品を肯定する!」と言うような作品に出会うのだけれど、今年はそれがこれ。イギリスを舞台に死期が近い母親とその子供の物語。これに関してはあらためて感想書きます(他の作品も書くのもあるかも)。とにかく現時点で今年の1位で、多分2017年全体でも1位だと思う。

怪物はささやく (創元推理文庫 F ネ 2-1)

怪物はささやく (創元推理文庫 F ネ 2-1)

怪物はささやく

怪物はささやく

キング・アーサー

 当初邦題に「聖剣無双」の副題が付いていて、ふざけんな!となったのかどうかその副題は無くなったのだけど、見終わると「あの副題付けたままでよかったんじゃねえか」ってなる作品。アーサー王伝説を元にゲームのような映像が続く。ガイ・リッチー作品で「シャーロック・ホームズ」とかと似た造り。主人公をずっとチャニング・テイタムだと思っていたけれどエンド・クレジットでチャーリー・ハナムだったことに気づきました。「クリムゾン・ピーク」の時も「ヘムズワースの三人目か?」とか思ったし御存知の通り「パシフィック・リム」も個人的にイマイチ(主人公ハナムは全く印象に残らず)だったので僕とチャーリー・ハナムとの相性は良くないようだ。作品自体は面白かったです。

King Arthur: Legend Of The Sword

King Arthur: Legend Of The Sword

ジーサンズ はじめての強盗

 マイケル・ケインモーガン・フリーマンアラン・アーキンの年金暮らしの3人が務めていた工場の合併とそれに伴う年金の廃止に憤り銀行強盗を企む!もう主演三人とその設定の時点でつまらないはずはないと確信していたのだけれど、主演三人以外にもクリストファー・ロイドジョーイ・キングジョン・オーティスといった大好きなキャストが好演していて端的に最高。
 マイケル・ケインモーガン・フリーマンは「ダークナイト」3部作や「グランド・イリュージョン」などで共演してきたけれど、その二人の共演作の集大成という印象も。プライベートでも仲良かったりするのかしら。

ジーサンズ はじめての強盗

ジーサンズ はじめての強盗

ガールズ・イン・トラブル スペース・スクワッドEPISODE ZERO

 本来はオリジナルビデオ作品(もうすぐ発売)何だけど劇場公開もされた「宇宙刑事ギャバン」と「特捜戦隊デカレンジャー」のクロスオーバー作品。こちらはその前日譚的な作品で各シリーズの女性キャラが大集合。僕はすぅちゃん(森田涼花シェリー)とジャスミン木下あゆ美)を目当てに観たのだけれど、新たに新しい「宇宙刑事シャイダー」における女性相棒タミー役の川本まゆさんにしてやられたのでありました。

スペース・スクワッド ギャバンVSデカレンジャー

 で、その本編。元々共通点の多い作品だった「宇宙刑事シリーズ」と「デカレンジャー」のクロスオーバーで本作を基点としてメタルヒーローシリーズと(主に宇宙を主要テーマとした)スーパー戦隊シリーズに作品世界は広がる模様。この2作は客観的にはいろいろ粗い作りの作品だと思うんですが、両シリーズの何でもありな部分も存分に発揮されていて好きです。

  • 7月

リヴォルト

 前情報は洋画でSFらしいということぐらいだけで観た作品。主演も始まってスランドゥイル様(リー・ペイス)だったことを知る。映画は「世界侵略LA決戦」と「モンスターズ」2作を合わせた割って水で薄めたような侵略SF作品で決して面白いとは言いがたい感じ。メタルギア月光そっくりな兵器が大量に出てくるところはちょっとおもしろかったかな。


 以上2017年上半期に観た作品です。観たかったけど観れなかった作品もいっぱいあるし、現時点でも「ハクソー・リッジ」とかなぜだか足が向かいません。SF大作系はなるべく見逃したくないんだけどなあ。とはいえ夏に入って大作がどんどん公開されるのでなるべく見逃しなく、そして観たら早めに感想書くを心がけて下半期を過ごしたいと思います。今後共よろしくです。
 
では一応上半期ベスト5(ぐらい)を。

  1. 怪物はささやく
  2. 美女と野獣
  3. ザ・コンサルタント
  4. スペース・スクワッド
  5. LOGAN/ローガン

 といったところでしょうか。ちなみに悪役ベスト5(順位不動)は

清々しいまでに悪役!自分大好き!な面々。

星の王子さま故郷に還る? ガーディアン・オブ・ギャラクシー リミックス

 早いもので2017年も、もう5月が終わり半分に達しようとしている。よく6月に入った途端に「もう今年も半分過ぎた!」って焦る人がいるけれど、焦りすぎ!6月が終わって半分経過ですよ!とはいえ夏に入ると今年は例年にも増してアメコミ、ヒーロー映画とでも言えるものが多く公開されて、明日、6月1日は20世紀FOXX-MENシリーズの最新作にてヒュー・ジャックマンの演じるウルヴァリン最後の作品「ローガン/LOGAN」が公開、7月は日本発のスーパーヒーロー「パワーレンジャー」の映画版最新作が公開、そして8月に至っては「スパイダーマン:ホーム・カミング」「トランスフォーマー最後の騎士王」「ワンダー・ウーマン」がほぼ一週おきに公開される!大体これらの作品はよほど出来が悪くない限りは複数回観ると思うので(可能なら字幕と吹き替えで一回づつ)財布的には嬉しい悲鳴ですね。他には日本の漫画の映画化では福田雄一監督の「銀魂」なんかは少し気になっていたりします*1
 さて、そんなアメコミ、ヒーロー映画を引っ張っているのはご存知「マーベル・シネマティック・ユニバース(以下MCU)」。去年は傑作「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」1作だけだったが、今年はその反動か一気に4作が公開(予定)。うち1作は1月公開の「ドクター・ストレンジ」で新しいヒーローの登場であったが、今回はあのお騒がせチームが再登場。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス」を観賞。そういやちょっと福田雄一ぽい描写もあったよ。

物語

 ロナンの野望を阻止し、ノヴァ軍から新しい宇宙船をもらったピーター・クイルたち「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の面々。それから少し後、今彼らはソヴリンから貴重なアニュラックス電池を警護する仕事を依頼されていた。迫り来る宇宙怪獣から見事電池を守ったGotGは報酬としてソヴリンの捕虜となっていたネビュラを貰い受ける。ガモーラの義理の妹で宇宙のお尋ね者だ。彼女をザンダー星に連れて帰ろうとしたその矢先、突然彼らはソヴリン軍の攻撃を受ける。実はロケットが(あまりに盗みやすいのでつい)電池を盗んでいたのがばれたのだ。ソヴリンの大軍勢にピンチに陥ったガーディアンズだが、そこに謎の宇宙船が現れソヴリン軍を一掃。近くの惑星に不時着したガーディアンズの前に現れたのはエゴとなのる男性で、彼はクイルの実の父親だという。かつてヨンドゥに地球から息子を連れてくるように依頼したがヨンドゥはクイルを拉致こそしたがエゴのところへは連れていかなかった。インフィニティ・ストーンである「オーブ」を素手で持っても耐えられた男スターロード=ピーター・クイルの噂を聞いて、自分の息子であると確信、探していたという。半信半疑ながら惑星に宇宙船の修理を行うロケットとベビー・グルート、捕虜であるネビュラをおいてエゴの宇宙船で彼の惑星に向かう一同。
 エゴの惑星において、クイルはエゴが強大な力を持つ「セレスティアルズ=天人」であり惑星そのものでもある事を知る。彼は何万年もかけて宇宙を旅しその中でクイルの母親メレディスと出会い愛を交わしたという。その力はクイルにも受け継がれている…父親との出会いと自分の力に有頂天になるクイルだったが、エゴの従者でもあるマンティスはドラックスに恐ろしい秘密を打ち明けようとしていた。
 一方その頃、留守番のロケットたちの前に、ソヴリンの女帝アイーシャの依頼を受けてヨンドゥたちが現れた。しかし何かとクイルに甘いヨンドゥに業を煮やした部下たちが反乱を起こし、ロケットたちはヨンドゥとともに囚われの身になってしまう。そしてその反乱に手を貸したネビュラはラヴェジャーズから手に入れた宇宙船で一路エゴの惑星を目指す。姉であるガモーラを殺すために!宇宙のはぐれものたちの明日はどっちだ!?

 前作の感想はこちら。

 前作が1988年のクイル少年のアダプテーションから26年後(2014年)が舞台だが、今回は1980年の地球から始まって34年後(2014年)が舞台なので前作からそう、間は開いていない設定の模様。少なくとも「シビル・ウォー」より以前の出来事という形になり、それでほんのちょっとだけ矛盾がある(がこの辺はスタッフの遊びなので特に問題はなし)。
 タイトルは原題が「GUARDIANS OF THE GALAXY VOL.2」で文字通り続編なのだが、邦題はVOL.2ではなくリミックス。安易に「2」を使いたくない(続編というのを前面に出すと前作見ていない客が敬遠する可能性があるからか?)のか分からないが、あまり良くない改題。というのも「リミックス」からは続編というより「元の作品を再編集したりVFXを補強したりした特別編」というイメージがあるからだ。音楽における「リミックス」はそんな感じだろう。続編につけるタイトルというよりはディレクターズ・カット版だったり、3D仕様にした特別編だったりに適した題。純然たる続編につけるタイトルではない、と思う。後はこの邦題をつけるにあたって、勝手に日本配給側が監督に「日本のファンにも好評なんですよ」みたいなこと言ってたらしいので(本当は好評も何もファンは関わってない)その辺もなんだかなあ、という感じ。MCUがユニバーサルからディズニーに変わって以降、こういう「余計な一手間」が多くなって、あんまり良い印象はないですね*2
 個人的に文章みたいな長い原題だったり、社会派・恋愛映画とかは独自の日本語邦題もいいとは思うけれど、アクション映画だったりアメコミヒーロー映画の類は基本的に原題をカタカナにしただけの邦題で良いと思います。
 さて、本編。前作「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」はこれまで地球を主な舞台として展開してきたMCUの中では広大な宇宙そのものを舞台とし、またいわゆる「コスチュームを着たヒーロー」が登場しないことで、ずいぶん趣を変えた作品であった。それでもコレクター(「マイティ・ソー ダーク・ワールド」のラストで登場)が出てきたり、サノスが出てきたり、キーアイテムである「オーブ」がこれまで語られてきた「インフィニティ・ストーン」の一つ(ほかは4次元キューブやエーテルなど)であることが明かされたりMCUの他の作品と地続きであることは示されてきた。最終的には地球のヒーローたちと合流もするはずで、今回は前作よりももっとMCUの他の要素との関連が強調されるかな?と思ったりしたのだが、結果としては前作以上に独立性の強い作品であった。それでは例によってキャラクターごとに。

スターロード

 本名ピーター・クイル。1988年にヨンドゥ達によって地球から誘拐され、そのままラヴェジャーズの一員として育った宇宙の自称プレイボーイ。前作のラストで彼の父親が宇宙人で、どうもヨンドゥはその正体を知っている風であることが示されたが、本作で正体が明らかに。宇宙のはぐれもの集団の(一応)リーダーとして頑張るが、彼以上に個性的な仲間を統率するのはとても大変な模様。
 父親がエゴと判明し、それが神にも等しい存在で、しかも自分にもその力があると知って調子に乗るが最終的には真の家族=仲間の元へ帰る。今回の物語は血統上の家族か、それとも血は繋がっていなくとも絆によって結ばれた本当の家族か?みたいなのがテーマとしてあると思う。
 ガモーラとはほぼ相思相愛ながら決定打には至っていない模様。
 クイルは父なしの子どもとして過ごしたので、地球にいた頃は「オレの親父はデヴィッド・ハッセルホフだ」とホラを吹いていたらしい。それが実はカート・ラッセルだった!これは日本で言うと「オレの親父は千葉真一だ!」って言ってたら本当の父親藤岡弘、だったみたいな感覚だろうか。そりゃカート・ラッセル父親として名乗りを上げたらクイルでなくとも有頂天になるよね。この二人は元々マーベルとは縁が深く、ハッセルホフはTVでシールド長官ニック・フューリーを演じたことがあるし、カート・ラッセルの代表的な役である「ニューヨーク1997」「エスケープ・フロム・LA」のスネーク・プリスケンの少なくとも外見のモデルの一つとしてニック・フューリーがあると思うのでカート・ラッセルとデヴィッド・ハッセルホフがマーベル映画に出てる、というだけでも感慨深い。

 前作のラストの彼が特別な宇宙人の血をひいていた、それゆえにオーブのエネルギーに耐えることが出来た、という結末に対し、「なんだよ結局血統かよ」「仲間との絆で耐えられたんじゃないのかよ」みたいな不満が少しあって、今回はその辺に対するアンサーでもあるのかもしれない。結局クイルの持つ特別な力が、今回以降どうなるのか分からないが、決して彼の魅力はその力にあるわけではないのだなあ。
 演じるのはMCU三番目のクリスことクリス・プラット。キャラクターとしてはほぼ変化はなく飄々とした余裕ある様はあまり地球のヒーローたちには見れらないところ。はやく他のクリス(キャップ&ソー)達との共演が観たい!
 ちなみに今回も「スターロード」とはほとんど呼ばれません。

ガモーラ

 サノスの養女、ネビュラの姉。肌の色が緑で一応ヒロイン。姉御。肌の色なんかについてはこの映画、青かったり緑だったりピンクだったり金色だったりといわゆる地球人の肌の色をしている人種のほうが珍しいくらいなので全然気になりませんね。幼い頃からネビュラと戦わされてて、負けると罰を受けたり肉体改造されていたのだが、まったく空気を読まずネビュラに連勝を続けた人。その辺でネビュラの深い恨みを買っている。
 演じるのはゾーイ・サルダナ。「スター・トレック」の方ではウフーラを演じ、「アバター」では青い肌のネイティリを演じていたので、これで「スターウォーズ」なんかにも出た日にはもうスペースオペラ全制覇といってもいいのではないか。

ドラックス

 破壊王。前作では妻と子供をロナンに殺された男としてロナンへの復讐に取り憑かれていて、そんな彼が新たな家族=ガーディアンズを得る話でもあった。比喩表現が理解出来ない人、としてコメディリリーフでもあったが、今回は更に明るいキャラと変貌を遂げ、比喩表現ではなく、婉曲表現が出来ない人へと進化。結果としてマンティスと「お前は恐ろしいほどに醜い外見だがいい奴だ」みたいなことを言い合う仲に。後はマンティスがサイコセラピーとして触れた相手の感情を和らげたり、それを応用して睡眠導入の手助けをしたりしている、と聞けば「オレに試してみてくれ!」と率先して実験台になりたがる人でもある。
 というかですね。今回このドラックスのキャラクターはほぼヨシヒコなのですよ。福田雄一監督の「勇者ヨシヒコ」シリーズの主人公、山田孝之演じるヨシヒコそっくり。外見の美醜を全く悪気なく連呼したり、メレブ(ムロツヨシ演じる魔法使い)の新魔法に率先してかかりたがる。
 演じるデイヴ・バウティスタはご存知WWEの元スーパースターバティスタ。前作からの間には「007/スペクター」の敵役も経てすっかり俳優業も板についてきた。まだロック様ほどの演技の幅はないけれど、今回は前作にも増してコメディリリーフとしての活躍度が高いので、今後はいわゆるアクションと関係ない映画とかでも重宝されそう。ガタイが良くて強面、でもよく見りゃ人懐っこい容姿というのは素晴らしい。

ロケット

 凶暴アライグマ(に改造された人…らしい)。今回もトラブルメーカーとして大活躍?普通にいろんな面で優秀なところを見せるけれど、どうしても一波乱起こさずには要られない。今回も物語の発端となる電池を盗むのに始まり、クイルやヨンドゥと口喧嘩しながら物語をかき乱します。しかしその裏には異形ゆえに排他され、けど実は人一倍寂しがり屋でもあるという本音が存在する。わざと問題を起こしてそのことで起きる自分への対応で立ち位置を常に確認しているという感じか。
 声の演技はブラッドリー・クーパー。いずれご本人もなんらかの形で姿をあらわすと良いな。

ベビー・グルート

 私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。私はグルート。*3

ヨンドゥ

 ラヴェジャーズのリーダー、と前作ではなっていたが、ラヴェジャーズはもっと大きな組織で、その中でヨンドゥのグループは組織の掟を破ったことで爪弾きされていた模様。幼いピーター・クイルを拉致ったのはエゴの依頼を受けて、でもエゴの正体(というかそれ以前に連れて行ったエゴの子供たちの末路)を知ってクイルをエゴの元にやらず自力で育てた、育ての親。その口の悪さと相反してクイルに愛情は確か。荒くれ者揃いで更に嫉妬深いラヴェジャーズの面々からはあまりのクイルへの甘さについに反乱を起こされる。一時は絶体絶命の危機の陥るが新型フィン(頭のトサカ部分にあたるマシンでこれを装備することで口笛で矢を操る)を装着して裏切り者を一掃!前作でも見せたが口笛を吹いた時の彼は無類の強さを誇る。
 演じるのはマイケル・ルーカーである意味今作の主役。
 他のラヴェジャーズに反乱の首謀者テイザーフェイスやヨンドゥの忠実な部下ながらそれ故にクイルへの嫉妬で反乱に加担するクラグリンなどがいる。クラグリンは前作でも出てきたが演じているのはショーン・ガン。ジェームズ・ガン監督の弟です。

エゴ

 カート・ラッセル父親だったらいいな、という人類誰もが持つ願望を叶えた存在。元々は巨大な脳みそだったが、長年宇宙をプカプカ漂っているうちに自身を核として惑星を形成。さらに自分の分身として人型のカート・ラッセルを創りだしいろんな星に子種(カート・ラッセルがその星の住人と作った子、及び惑星エゴの分身みたいなものをその星に植えつける)を蒔いてきたが、唯一父親の性質を受け継いだまま成長したのがクイルであった。惑星エゴの地下には父親の性質を受け継がなかったため栄養分となった幾多のエゴの子どもたちの死体が存在し、最終目的は宇宙自体をエゴそのもので満たすこと。しかしクイルのウォークマンを壊し、目的のためにわざとメレディス(ピーター・クイルの母親でエゴの恋人だった)を死なせたことが判明し、クイルの怒りを買ってしまうのだった。
 演じるのはカート・ラッセル(とデヴィッド・ハッセルホフ)。吹替だと一瞬のハッセルホフのセリフでちゃんとささきいさおになっているのが偉い(後述するスライの出番と一緒に収録したんだと思うけど)。

マンティス

 エゴの従者。見た目は触覚の生えた黒目の東洋人美人と言った感じだが、幼虫だった時期があるようで昆虫に近い生体をもつ宇宙人の模様。エンパスで触れた相手の感情を読み取ったり、その感情を変化させたりすることができる。その応用でエゴの睡眠を手助けする。ドラックスと意気投合するが互いにルックスは全然タイプでない(というか嫌悪感さえ覚える醜さであるらしい)。エゴのこれまでの悪行も知っていて最終的にエゴを裏切りガーディアンズに着く。
 演じているのはポム・クレメンティエフという人で韓国系の父とロシア系の母の間にフランス人としてケベック州(カナダ)で生まれる、という経歴。ちょっとステレオタイプな東洋人女性の印象もある。

ネビュラ

 サノスの養女、ガモーラの義理の妹。幼い頃から姉と戦闘訓練では負け続け、結果として全身改造のサイボーグとなった。それ故姉と父に対する恨みは半端無く、執拗にガモーラを狙う。最終目的はサノスの死。しかし父親に対する恨みと姉に対する恨みは微妙に違い、姉に対してはもっとお姉ちゃんとして振る舞って欲しかった、という感じで最終的には仲直り。ガーディアンズとして仲間にこそならなかったが、今後も関わりあっていくのでしょう。
 演じるのは前作に引き続きカレン・ギラン。特殊メイクでよく分からないけれど普通に美人です。ちなみに今年のアカデミー賞を賑わせていた「ムーンライト」(観てない)のポスターを見ると、どうしてもネビュラを思い出してしまう。

アイーシャ

 全身金色のソヴリンの女帝。ソヴリン人は精神も肉体も完璧にデザインされ、生殖でなく人工的に生み出される種族、とのことなのだが、いやむしろかなり精神的には不安定じゃねえの?って感じ。無人の戦闘機を操縦するのだけれど、その様子や先にやられた操縦者が生き残った操縦者の後ろに立って応援しているシーンとか完全にゲームセンター。精神が完璧どころかプライドだけは高いティーンエイジャーしかいない社会なんじゃねえか?
 その中でもアイーシャは執拗にクイルを狙いラヴェジャーズに依頼、後には自ら出張る。しかしそれにも失敗しソヴリンの指導者としての地位を危うくするのであった。
 演じるのは「華麗なるギャッツビー」「コードネームU.N.C.L.E.」の長身美女エリザベス・デビッキ。今回もその整えられた鉄面皮の中に時折見せる歪んだ感情が魅力です。クイーン・オブ・高飛車!

 今回は前作以上にギャグシーンが多く、ちょっと辟易した部分も。コメディ映画はその辺で客を選ぶ。ただ、より監督のジェームズ・ガンの個性は出ていると思う。後は先述した通りMCUとして他の作品とのつながりは前作以上に希薄。サノスがセリフの中に出てきて、ウォッチャーとかハワード・ザ・ダックが劇中の物語に影響ない部分で登場する程度。劇中時間経過は前作から一年も経っていないので「アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン」以降「シビル・ウォー」以前だと思われる。一応エゴが地球に植え込んでいた星の種子が成長し暴走するシーンで他の惑星と並んで現在(2014年現在)の地球も登場するのだけど、このブロブみたいなのが町を飲み込んいく事態においても特に他のヒーローが出動したということなく、MCUとしてはかなり独立した作品ではある。
 前作より順当にパワーアップした作品だけれど、前作を踏まえて、という描写も多く、その意味で邦題を「リミックス」にしてしまったのはやはり残念。
 音楽方面はスコアの他は相変わらず70年代音楽がメイン。しかし!本作ラストで古いウォークマンに替わり一台に1000曲ぐらい収録されてる携帯型デジタル・オーディオプレイヤーをクイルは手に入れたので今現在の地球のヒット曲も聴くことでしょう。これで地球に来る準備はバッチリだ!

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス オーサム・ミックス・VOL.2(オリジナル・サウンドトラック)

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス オーサム・ミックス・VOL.2(オリジナル・サウンドトラック)


 ゲスト出演者は多く、ラヴェジャーズの真のリーダーとしてシルベスター・スタローンが登場。一緒に出てくる全身クリスタル状の男はマイケル・ローゼンバウム(アニメ「ジャスティス・リーグ」のフラッシュや「ヤング・スーパーマン」のレックス)、分かんないよ!ラスト近くに出てくる女海賊といった感じのキャラはミシェル・ヨー。先述したハワード・ザ・ダックは声がセス・グリーン。彼らは続編でもまた出てくるかも。
 そして毎度おなじみスタン・リー御大も当然登場。今回は宇宙飛行士の格好でウォッチャー相手に話をしている老人、という形で何度か登場。このウォッチャーはマーベル宇宙の神様みたいなキャラの一人で(ギャラクタスなんかと同類)、宇宙のあらゆることを見届け記録する人。で、MCUで登場するスタン・リーは時代も場所も様々でとても同一人物とは思えない(というかその時々のゲスト出演だから、出てくるスタン・リーが同一人物である必要はないんだけど)。そんな次元を超えて存在できるキャラといえばウォッチャーであって、実はMCUに登場するスタン・リーはウォッチャーなのではないか?というファンの間でまことしとやかに広まった都市伝説を逆手に取ったものが今回の登場シーン。ここでは「配達員をしていたこともある」と「シビル・ウォー」でのゲスト出演を話すが、先述した通り、今回の物語は時間軸上では「シビル・ウォー」より前の出来事なので、矛盾する。が、まあ誰も気にしちゃいないよね。
EXCELSIOR!

 エンドクレジット後のおまけはガーディアンズに敗れてすっかり意気消沈したと思われたアイーシャの姿。しかし彼女はまだ諦めておらず、新たな戦士を生み出そうとしている。その名はアダム。というわけでアダム・ウォーロックの誕生を匂わせて終了。アダム・ウォーロックは「インフィニティ・ガントレット」などで活躍するヒーロー。決して宇宙の敵になるキャラではないはずで「インフィニティ・ウォー」での活躍が期待される。個人的にはネイサン・フィリオンあたりに演じてもらいたいです*4

GUARDIANS OF THE GALAXY WILL RETURN.

 ラストは再び「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーは帰ってくる」の字幕。一応今後予定のMCU作品は8月に「スパイダーマン:ホームカミング」11月に「マイティ・ソー バトルロイヤル」と続き、再び「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の面々が登場するのは2018年の「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」二部作となる予定。今度こそMCUの他の面々との共演が待っている!(その後、「GUARDIANS OF THE GALAXY Vol.3」も予定されている、が2020年ぐらいの話なので当分先と思っておこう)。
 今回の物語は家族と仲間が前作以上に重要視されている。奇しくも「ワイルド・スピード ICE BREAK」とキャスト・テーマ的に共通する作品だった。特に実の父親が出てくるからこそ養父であるヨンドゥやガーディアンズの仲間たちとの絆が強調されていた。ギャグや世界観でついていきにくい部分はあるかもしれないけれど、テーマは普遍。是非劇場で観て欲しい一作。

*1:アニメの「銀魂」が相変わらずの悪ノリで現在「よりぬき銀魂さん」を放送中なのだが、実写映画版もネタにしつつ、映画の情報番組としても成立している。どうせ「よりぬき」でやるなら、例えば実写版のキャストにアニメ版の過去のエピソードを吹替させて公開までの間に違和感を多少でも解消、逆に実写版のアニメキャストによる吹替版も公開!とかなれば互いにWin-WInだと思う。銀魂なら行けそうな気もするのだが…

*2:11月公開の「THOR:RAGNAROK」が「マイティ・ソー バトルロイヤル」という荘厳さとはかけ離れた邦題になってしまって頭を抱えている。予告編を観るとそりゃ「移民の歌(ブルーザ・ブロディの入場テーマ)」をバックに最終的にはローマ・コロッセオ風の闘技場でソーとハルクが一騎打ち!というものなのでプロレス感というかバトルロイヤル感は確かにあるけれど、最終的にどうなるか分からないし、「ラグナロク=神々の黄昏」はそれほど日本人にも馴染み薄い言葉というわけでもないだろうし、変えるにしても何故そうダサい方へ変えてしまうのか日本の配給会社の考えることはよくわからない。

*3:最終兵木。前回仲間を助けるためにその身を犠牲にして、結果今回は残された若木からベビー・グルートとして登場。前作のエンドクレジット間のおまけではまだ鉢植えでジャクソン5に合わせて踊るフラワーロック状態だったが、今回は冒頭から動きまわっている。ベビーというのは単にまだ小さい状態の外見だけでなく、どちらかと言えば老成していたような前作のグルートに比べて精神的にも幼い。前作のグルートと今回のベビー・グルートが全く同じ人格かというと必ずしもそうではなくて、一応、人格、記憶などを受け継いでいるけれど微妙に別人なのかも(と僕は判断)。「ドラゴンボール」でいうピッコロ大魔王(青野武)が死ぬ間際に自分の分身として卵を産んで、そこから産まれたピッコロ大魔王(古川登志夫)がピッコロ大魔王(青野武)の記憶・人格を受け継ぎながらも別人、というのに近いのかも。声は完全に子供の声に加工されているがヴィン・ディーゼル。セリフはお馴染み「I am GROOT.(私はグルート)」のみ!でも「スターウォーズEP7」のアストロメク・ドロイドBB-8がその子供さ故に感情が分かりやすかったのに似て、前作のグルートよりはどんな感情で「私はグルート」と言っているのか分かりやすかったように思います。マスコット的にガーディアンズからもラヴェジャーズからも可愛がられているベビー・グルートだが、ちょっとそのあざとさは鼻についた感じも。でも次はもうちょっと成長、反抗期のグルートが出てくるはずなので次の活躍にも期待だ!

*4:ネイサン・フィリオンは今回もカメオ出演したようなのだがカット。これはより重要な役でMCUに登場させたい、という思惑なのだと好意的に解釈したい

ファミリーの集結・散会・再集結! ワイルド・スピード ICE BREAK

 例によってお久しぶりでございます。まあこの間新作はほとんど観ず、ルーク・エヴァンスカート・ラッセルヴィン・ディーゼルの3人のうち誰かがで出てる作品しか観ていない、観る気がしない状態だったので仕方がないですね。ちょっとここ最近真面目な映画を見る気力が減退してて、ただただ楽しい映画にうつつを抜かしていたのです。
 というわけで、ルーク・エヴァンスカート・ラッセルヴィン・ディーゼルの3人が3人共出演している「ワイルド・スピード ICE BREAK」を観賞。

物語

 キューバでハネムーンを過ごすドムとレティ。そこへ謎の美女が現れ、ドムを自分の部下へ誘う。一方、ホブスは電磁パルス砲(EMP)がドイツの反体制派に奪われたため、それを取り返す任務を与えられ、ドムたちをを招集する。作戦は成功し、簡単に任務を終えたと思った矢先、ドムが突然裏切りEMPを略奪、ホブスも現地警察に捕まってしまう。
 刑務所に収監されるホブスにミスター・ノーバディが現れ取引を持ちかけられるがホブスはこれを拒否。地力で出ることを誓う。ホブスの独房の前にはかつての敵デッカード・ショウがいた。ホブスの独房の扉が開き、混乱に生じてショウが脱獄、ホブスもこれを追うが全てはノーバディの仕組んだことだった。
 ドムを裏切らせたのは国際的ハッカーであるサイファー。かつてデッカードの弟オーウェンにナイトシェードの奪取を命じて、そして見捨てた女でもある。ノーバディはドムのファミリーとホブス、そして自分の部下であるリトル・ノーバディを加えさらに宿敵であったはずのデッカードも加えたチームでドムとサイファーを追う。ゴッドアイを使いドムの居場所を探るとそこは今いる基地。直後、ドムとサイファーが襲撃を加えゴッドアイを略奪。果たしてサイファーの目的は?そしてなぜドムはファミリーを裏切って彼女に従っているのか?

 前作の記事はこちら。

 前作の時点ではシリーズをほぼ見ていない状態で挑み、結果として凄え楽しかった!という感じだったのだけど、今回はちゃんとシリーズ全部見てから行きましたよ。で、過去にTVでやっていた時にながら見、していた事もあって、見ていたもの、見ていなかったものあったのだけど、結果として全部面白かったです。一応、最初の3作と後半の4作ぐらいの感じで分けられて、劇場公開時にもエンドクレジットの後の次作への含み映像はあったそうなので、もう4作目の「ワイルド・スピードMAX」から「SKY MISSION」までは連作と言っていいのだろう。
 前作の感想で、「SKY MISSION」でシリーズ最後、みたいなことを書いていたけれど、これが何か映画の記事を読んだのか、それとも作品の終わり方を持って勝手に自分でそう判断したのか、ちょっと思い出せないのだけど、元々シリーズは続く予定で、でも主演のポール・ウォーカーの不慮の死亡事故で、制作するかどうか一時停止状態だった、というのが真相らしい。結果としてポール・ウォーカーの意思を存続させる、ということもあってシリーズは続行。この「ICE BREAK」と始めとして新たに9、10作目を制作し、全10作で完結させる予定らしい。本作もこれまでの集大成であるとともに、続編への含みを残します。
 で、これまでシリーズを見てきた人には常識なんだろうけど、にわかファンとして、一応シリーズの時系列を整理しておきたい。というのも前作「SKY MISSION」はシリーズ初見の僕が観ても、特に困ること無く見れたが、逆に本作はある程度シリーズを俯瞰しておかないと理解が難しいところがあるからだ(もちろん観てなくても楽しめるとは思うけど物語、キャラクターの設定的に理解不足が起きると思う)。
 シリーズは順番に1から8まであるが(間に短編もあるようだが未見)、1→2→4→5→6→3→7→8(本作)という形で4〜6でファミリーとして活躍したハンが6で恋人(ガル・ガドット=ワンダーウーマン!)を失った後、東京に行き、そこでの物語がシリーズ外伝的な扱いの「ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT」。そして3本編中で事故死するが実はこれが事故ではなく弟の敵を討とうとするデッカード・ショウの仕業であったことが6のエンディング、7の冒頭などで明かされる。ちなみにハン(サン・カン)、シリーズ中で一番格好いいキャラクターだと思う。3のラストで主人公ショーンにドムが会うがこのシーンの続きも7の中に挿入されている。
 ドウェイン・ジョンソン(ロック様)の演じる外交保安部のホブスが出てくるのは5作目「MEGA MAX」で、今回重要な役割を果たすエレナもここで登場。前作ではカート・ラッセルミスター・ノーバディと凄腕ハッカーラムジーも加わり今回に続く。なおポール・ウォーカーのブライアンとその妻でドムの妹ミア(ジョーダナ・ブリュースター)は劇中では引退したということで名前は出てくるけれど、決してその平穏を壊してはいけない、ということで仕事には呼ばれない。劇中では亡くなってはいないけれど、演出的にはポールに捧げるような感じ感傷的な感じになっているし、シリーズが続くなら出てこないのは不自然なので死亡したことにしないときつそうではある。

 さて、本作は邦題が「ICE BREAK」となっていて(原題は「The Fate of the Furious」と「Fast & Furious 8」の二種類あるようだが、本編で出てきたのは「Fast & Furious 8」の方)、これは後半のシベリアの氷原を舞台にしたシーンからとられている。ただ作品自体は常夏のキューバから始まり、ベルリン、ニューヨーク、と世界を股に掛ける物語である。ただその全てに自動車が深く関わっているのが本シリーズの特徴。今回も氷の上をスーパーカーが走ったりする非現実的なヴィジョンの他にも様々な自動車が活躍します。
 主人公ドムはヴィン・ディーゼル。今年は「トリプルX:再起動」の他に「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー:リミックス」もあり、本作含めいずれも血のつながりだけではない絆によって結ばれた擬似家族「ファミリー」もの、ってあたりヴィン・ディーゼルの天性のキャラクター性を感じさせる。本作では更に、わけあってファミリーを裏切ることで、リディック(「リディック」シリーズ)のような冷徹な凄腕の姿も垣間見せることでヴィン・ディーゼルの集大成ともなっているような気もする。公の法よりも自分ルールを優先し、しかしそれを厳格に守る、という意味でも、ザンダー、リディック、ドム(そしてグルート)は共通するものがあるしね。
 本作でドムがファミリー裏切る理由は、もうひとつのファミリー、エレナとその息子のため。この辺、シリーズを見ていないと分かりづらくて、エレナは「MEGA MAX」で初登場し、その時はホブスの部下だったが、ドムと付き合うようになる。ところが「MAX」で死んだと思われたドムの恋人レティが生きていたことが判明する(EURO MISSION)と自ら身を引く。「SKY MISSION」では再びホブズの部下として活躍したが、この時にはドムの子供を出産していたことに。そして今回息子と共にサイファーに拉致され、ドムを操るための人質とされる。ちなみに初登場時は武井咲の声でした。
 ロック様ことドウェイン・ジョンソン演じるホブスもシリーズを重ねるごとに主役に近い活躍を見せるようになっていくが、今回はそのセリフ回しから、過去に出演したどの作品よりも一番WWEのリングあるいはバックステージでのロック様に近い印象。最初の娘のサッカーチームのコーチの時から捕まってのデッカードとのやりとりとかほぼロック様って感じだった。ロック様はサモア系とアフリカ系のハーフだが、ホブスは娘のサッカーチームに試合前にハカをやらせているところをみるとマオリ系という設定なのかな。ちなみに左腕のサモア伝統の刺青はもちろん、右腕の眉を上げたブラマ・ブル(聖なる牡牛)の刺青もそのまま消すことなく(作品によっては当然消されることも多い)活躍。製作中にはヴィン・ディーゼルとの不仲も語られたりしたし、実際はどうなのか分からないが、少なくとも劇中そんな素振りは感じられず。あれかな、ドムが裏切ってホブスに冷たい視線を浴びせるシーンがあったりするのでその辺の役の関係性が誤解を生んだのかな、と良いように解釈したい。
 美人ハッカーラムジーをめぐる恋のライバルでもあるローマンとテズのやりとりも毎回楽しい。ローマンは毎回、「あれ?こいつムードメイカー以上の役にたってる?」って思ったりもするんだけど彼がいるといないとで作品の雰囲気もずいぶん変わるよね。ん?やっぱりムードメイカーか?とはいえ今回は囮になったり氷のしたの水に沈んだり活躍します。
 退場するメンバーも居る一方で毎回新しくファミリーに加わるキャラクターも。前回はハッカーラムジーが加わり、ファミリーという感じではないが謎の人物ミスター・ノーバディが登場した。今回はなんとデッカードがそこに加わる。一応ハンを殺した張本人なので、ドムたちにとっては不倶戴天の敵であるはずだが、弟のオーウェン・ショウと違って組織を組んで戦った感じでもないためか、どこかカラッとした関係ではあった。今回は復活したオーウェンの他に二人の母親も登場し、擬似ではない本当のファミリーとしての絆も見せる。ルーク・エヴァンスオーウェンはクライマックスで登場し、デッカードとともにサイファーの移動基地でもある飛行機を制圧するが、そこでの登場のみ。さすがに「EURO MISSION」観るとデッカードと違って犯罪組織の長としてレティ他に酷いことしているからちょっと顔をだすのは辛いかな。
 そして二人の母親がヘレン・ミレンで、もう出てくるだけでこの母親にして息子あり、という説得力。どうやら裏社会(登場したのはNYだがイギリスの裏社会?)の実力者でもあるようで犯罪一家の肝っ玉母ちゃんである。スピンオフとしてこの家族の物語も観たい!もうなんとなく二人の父親も妄想してしまう。候補は二人いて、一人はアンソニー・ホプキンスでこの場合、英国政府の大物。もう一人はブライアン・コックス。こっちの場合はともに別の犯罪組織のボスで今も昔も敵だったっリ味方だったり、みたいな。
 
 カート・ラッセルが出てる映画に外れなし!というわけで本作にも出ているカート・ラッセルミスター・ノーバディ。彼自身は前作で少しあったアクションも今回は無く、代わりに加わるのが彼の部下であるリトル・ノーバディ。このリトル・ノーバディってのはローマン(タイリース・ギブスン)がバカにした言い方が定着役名になったもので正式な本名は不明だが、やる気も能力もあるがまだまだ青二才である、ッて感じ。ポール・ウォーカーが退場して、ファミリーにほぼ白人がいない状態で若い白人担当といったところだろうか。ローマンと口喧嘩シーンが多いのもポール=ブライアンの代理ぽくもある。演じているのはスコット・イーストウッドで名前で分かる通りクリント・イーストウッドの息子。ちょっとした表情は父親によく似た精悍さだが、どこかお坊ちゃんっぽい甘さが見えるのも2世ならではか。クリント・イーストウッドの息子をカート・ラッセルが鍛えているってのも愉快な構図で映画という虚構を越えた面白さ。アクションもしっかりこなした上、ローマンとの漫才ではコメディ演技も魅せてくれたのでシリーズ次作でも活躍するだろうし、他の映画でも今回のリトル・ノーバディ役が活きるだろう。
 今回の敵はシャーリーズ・セロンサイファー。一応5以降の敵の黒幕だったということになっている。彼女自身はアクションはしないが、本作でも生き残り次作でもまた出てくるろうことが示唆される。「ワイルド・スピード」といえば自動車、そしてシャーリーズ・セロンといえば「マッド・マックス 怒りのデス・ロード」。ウォータンクを運転していたフュリオサである。なので今回は黒幕にとどまって彼女が運転する、アクションするシーンが無かったのは残念。その辺は次への楽しみとしていこう。

 アクションとしてはもうシリーズ最初の頃のカーアクション、という趣とは完全に別物で潜水艦に追われたり、NYではゾンビカー(運転手のいない、あるいは運転手の意思と関係なく自動車がサイファーのハッキングで勝手に文字通り「自動車」となり役目を果たす)とかほぼSFなんだけどあんまり作品の雰囲気と離れていないというか、一応このシリーズSFではなく現代アクションに分類されるけど、マイケル・ベイ版の「トランスフォーマー」とか「TMNT」とかあるいはスティーブン・ソマーズの「G.I.ジョー」とかとクロスオーバーさせても違和感がない感じはしますな。
 他にも冒頭キューバでやりあった相手が密かにドムの手助けしたり、6、7では出てこなかったテゴとリコがちょっとだけ出てきたり、キャスト的にも集大成。最初のほうでも書いたけれど、今回はシリーズを見てから観たほうが良いと思う。ミシェル・ロドリゲスが冒頭でドムとの子供を欲しがるが、ラストでは新たにドムの子供をレティに紹介し、新たなファミリー(その席にはホブス親子やミスター&リトル・ノーバディ、デッカードもいる)と食事をするいつものラストシーン。息子に付けられたファーストネームは「ブライアン」(エレナが付けたミドルネームはマルコス)。

 今回はエンドクレジット後などに直接続編に続くオマケ映像はなし。ただ9,10作目の製作はもうアナウンスされているようだし、先述した通り、黒幕サイファーは逃げおおせた。「X3 TOKYO DRIFT」の主人公ショーン(ルーカス・ブラック)なんかもファミリーに加わるはず。より一層のパワーアップした活躍をきたいしたい。
FAST & FURIOUS 8: THE ALBUM

FAST & FURIOUS 8: THE ALBUM

当世風昔からの物語 美女と野獣


美女と…

野獣。

そして…

美女で野獣
 4月は結局1日に「キングコング」と「レゴバットマン」を観たっきり劇場での映画鑑賞が出来なかったのだが、終盤になって何とか新たに1作だけ観賞できた。それがディズニーの1991年の名作アニメの実写リメイク作品。ビル・コンドン監督作品、「美女と野獣」を観賞。

物語

 むかしむかしのフランス。森の奥深くにある城には若く美しい王子が住んでいましたが、この王子はとてもわがままで傲慢でした。毎晩のように繰り広げられる宴の最中、一人の老婆が城を訪れ一輪の薔薇と引き換えに一晩の宿を求めましたが王子はこれを無碍に断りました。すると老婆は美しい魔女に変わり王子と城の住人たち、そして城全体に呪いをかけてしまいます。王子は醜い野獣に、召使いたちは家財道具へと姿を変えられました。魔女は言います。赤い薔薇の花びらが全て落ちて枯れ果てるその日までに王子が人を愛し愛されなければ野獣のまま二度と人には戻れないと。またお城の記憶も人々から消してしまいました。
 城の近くにある村に住むベルは村一番の美しい娘でしたが読書が好きなため変わり者扱いされていました。村で一番ハンサムででも乱暴者のガストンはベルト結婚しようとちょっかいをかけてきますがベルにそのつもりはありません。ある時ベルの父モーリスが時計を納品に家を開けますが途中で道に迷い、狼から逃れてお城にたどり着きました。モーリスは城に入り暖を取ろうとして、テーブルにあった食事を勝手に取りますが、その時ティーカップが動き彼に声をかけてきた事に驚いて急いで城を後にしようとします。入り口で薔薇を見かけたモーリスはベルからのおみやげが薔薇だったことを思い出して一輪摘んだその時、恐ろしい野獣にとらわれてしまうのでした。
 馬のフィリップが主人を置いて帰ってきたことに心配したベルはフィリップに乗ってお城へ向かいます。そこには囚われの身となったモーリスがいました。ベルは父親の代わりに自分が囚われとなることを申し出ます。動く家財道具たちに世話されながらベルと野獣の生活が始まり…

 とまあ、あらすじをつらつら書いたけれど、もう元の作品も含め有名な物語。数年前には本家フランスの映画としてクリストフ・ガンズ監督、レア・セドゥ&ヴァンサン・カッセルによる「美女と野獣」もあったりしたけれど、本作は同名のディズニー作品の実写リメイク作品。ディズニー作品の実写リメイクというと1996年に「101匹わんちゃん」の実写リメイク「101」があったりしたけれど、現在の流れにつながるのは2014年の「眠れる森の美女」を悪役視点で描いた「マレフィセント」、2015年の「シンデレラ」、昨年の「ジャングル・ブック」などだろう。他にも「ホーンテッド・マンション」とか「パイレーツ・オブ・カリビアン」とか「トゥモローランド」みたいなディズニーランドのアトラクションの映画化なんてのもあるんだよね。
 ただ、「マレフィセント」「シンデレラ」「美女と野獣」(ちょっと話がぶれるので「ジャングル・ブック」は除外)にはそれぞれ明確な製作意図の違いもあって、「マレフィセント」は自ら製作総指揮・主演したアンジェリーナ・ジョリーの強い意図が働いてかなり独自視点のリメイクと言う感じだし、「シンデレラ」は一部楽曲はそのままアニメ映画の方から使用しているものの、別物となっている部分も多く、1950年作品という古い時代の価値観から上手く21世紀の現代的視点の作品になっていた。それに比べると今回の「美女と野獣」はオリジナルが1991年という割と最近の作品というだけあって(それでも25年も前だ)、物語や設定面で特に大きく変えることなく、そのアニメ的表現をどこまで実写でバージョンアップして表現できるか、がポイントとなっていると思った。
 もっとも僕は今回この実写版公開にあたって、オリジナル作品を見返すことはしなかったのだが、元々アニメの方は70年代80年代の割りとディズニー長編アニメ映画不遇の時代が続いていて、1989年の「リトル・マーメイド」とともにディズニー復活の旗印になった作品。劇場公開時こそ見ていないがTVなどで放送されればそれなりに見ていた記憶。ただ、個人的にはそんなに好きじゃなかった。でもこの実写版はすごく好きです。

 ベル役はエマ・ワトソン。アニメのベルは確かいわゆるディズニープリンセスでは初の平民出身だっただろうか。そのデザインはお姫様というより活発で利発な少女、という感じで好みだった記憶(自分の一番好きなディズニーヒロインのデザインは「ヘラクレス」のメグです)。ベルと言う名前は劇中でも「美しい人」という意味と言及される通り「美女と野獣(フランス語原題La Belle et la Bête)」の美女担当。元々の童話ではそもそもこの「ベル」という名前は本名ではなく「名無しの"美女=ベル"」という感じだったそうだ。
 家族構成などはディズニーオリジナル設定でレア・セドゥのベル(6人兄弟の末っ子)の方がオリジナルに近いようだが、単に心が清いというだけでなく進取の気性に富む女性として1991年の時点でも新しいタイプだったが、更にエマ・ワトソンという血肉を得たことで現代的な女性に近づいたと思う。
 父親のモーリスはケビン・クラインでこれがなかなかの曲者。城に勝手に入って暖を取るまではいいが(僕だったら扉の前で開けてくれるの待ってしまうと思う)、何の躊躇もなくテーブルの料理に手を付けたり、ビビって逃げるのに薔薇をもぎるのは忘れなかったりする。この親にして娘あり、という感じ。元々はパリに住んでいてペストから逃れて村に来たという設定。野獣が魔女から送られた本でベルをパリに連れて行き、母親の死の真相を知るシーンも今回のオリジナルなのかな?映画の時代設定としてはすでにシェイクスピアが読まれているので17世紀以降フランス革命前ぐらい(ブルボン朝全盛期)の約150年ぐらいの間か。
 ベルが野獣の蔵書に驚愕して「これを全部読んだの?」と尋ねて、野獣が「ギリシア語の本もあるから全部ではない」と返すのをベルがジョークとと捉えて笑うシーンがあって最初は意味不明だったんだけど、これはシェークスピア由来の「It's all Greeek to me.」という言い回しがあって、英語では「ちんぷんかんぷん」みたいな意味なんだそうです。ただ、僕個人の感じ方としては野獣は文字通りの意味で言ったのに対して、ベルが勝手に「洒落たジョーク言ってる」って好意的に捉えたような感じに見えた。

 この映画の悪役はガストン。村一番のハンサムで暴れん坊、ベルには嫌われているがその他の村娘には好かれているようなキャラクター。戦争や暴力をこよなく愛する男。アニメでもそんなに魅力的には思えない。魔法を使うわけでもそれほど邪悪というわけでもないが、マレフィセントなどと並んでいわゆるディズニーヴィランとしても名を連ねる。演じているのはルーク・エヴァンスで、もうこれは役というより役者自身の魅力でかなり格好良くなっている。もちろん後半は悪役としてかなり厭らしい役柄なのだけど、前半は初登場のシーンから、酒場での踊りからかなり魅力的である。やはりアニメと違ってピタッと当てはまる役者に恵まれると実写はそれで魅力が倍増するなあ。ルーク・エヴァンス、以前は「美男子だとは思うけど、僕個人はそれほど魅力は感じない」枠の役者だったのだが、ここ数年でその魅力が分かってきた。このつぎに劇場鑑賞予定作品は「ワイルド・スピードICE BREAK」でまたルーク・エヴァンスですよ。
 ルーク・エヴァンスはそのキャリアの最初の方から同性愛者であることをカミング・アウトしていて、かと言って、それで演じる役が制限されたりしたことはないそうなのだが、面白いのはこのルーク・エヴァンス演じるガストンの腰巾着としてル・フウというキャラクターがいる。これが明らかに同性愛者として描かれていて、ガストンに恋い焦がれているが相手にはされていない(友人としてそれなりに重宝されてはいる)。これはおそらくアニメではなく今回新しく設定された描写だと思うが、このル・フウのキャラクターがいることで同時にガストンにも深みが出ている。ル・フウはガストンの最も近くにいるため、同時にその心の醜さに最初に気付く。
 先述した通りベルは元々「美女」という意味だし、城の召使い=家財道具たちの名前も「ルミエール=光」であったり、「ポット夫人」であったり多分に駄洒落ネーミングなんだけど、「ル・フウ=LeFou」もフランス語で「愚か者」とかそんな意味である。有名なところではフランスヌーヴェルヴァーグ作品「気狂いピエロ」の原題が「Pierrot Le Fou」で日本語の「気狂い」の部分にあたるのですな*1。いわゆる道化師でありこのル・フウも笑いの多くの部分を担当していたりするが、それ故時に冷徹に作品世界を俯瞰するキャラクターともいえよう。最後は報われるので良かったです。

 僕は初回を日本語吹替で観て、それはそれで十分満足だったのだけど(錚々たる実力者が歌の部分も吹き替えている)、エマ・ワトソン以外の出演者を特に知らずに観た。で、驚いたのですよ。プロローグ部分のお城のシーンでスタンリー・トゥッチがいるなあ、というのはなんとなく気づいたのだけど、この家財道具に変えられた召使たちがそうそうたる面々。ポット夫人はエマ・トンプソン。時計に変えられたコグスワースはイアン・マッケラン。ピアノ(クラヴィコード?オルガン)のマエストロ・カデンツァがスタンリー・トゥッチ。そして、燭台のルミエールがなんとユアン・マクレガー!もうユアン出てるなら出てるって言ってよ!特にユアンエマ・トンプソンはメインもサブも含めたくさん歌う楽曲があるのですよ。
 というわけで作品そのものは吹替版で十分満足だったのだけど、今度は最初からユアンが歌っているんだ、という認識を持って字幕版に挑戦。もうね、ユアンの歌が魅力的なのは「ムーラン・ルージュ」はじめとするいくつかの作品で十分証明されているので、それを堪能するために二回目を観た。観てない作品いっぱいあるのに。
 いややっぱり、ユアンの歌声は魅力的。歌のアルバムとか出してくれれば絶対買うのに。ユアンはじめ役者本人が顔を出すのは最後の最後なのだけど、声だけで十分ユアンと認識できる。もちろんその他のキャストも素晴らしかったです(特にエマ・トンプソン)。一番歌声が不安定だったのは主演のエマ・ワトソンだったかもしれないけれど、これは若さの証明でもありむしろその不安定さがキャラクターの新鮮さを表現している。
 で、僕はこの作品で初めて知ったのだけど、ルミエールの恋人であるプリュメット役のググ・バサ=ローも、マダム・ド・ガルドローブ役のオードラ・マクドナルドも黒人。またベルの村で役人(図書館司書?)も黒人。比較的社会的上位階層のキャラクターとして黒人が配役されていて、この辺は多分リアルな史劇であれば通常ありえない配役。実際「ポリコレに配慮したのか」とか文句を言っている意見も見受けられた。ただ、これは舞台の配役だと思うと全然変な感じはしない。作品そのものがファンタジーであるし、ミュージカルという特性上、舞台的配役を映画でもしたものと思えて僕は全然不自然には感じなかった

 あ、肝心の野獣を忘れていた。「美女と野獣」の映像化における「呪いが解けた王子様より野獣の姿のほうが格好良いじゃん!」の法則は今回も健在。演じているのはイギリス出身のダン・スティーヴンスで、僕が過去に観た中では「ナイト・ミュージアム3」の蝋人形のランスロット役で出ていた。もちろんいかにも王子様と言った感じのハンサムだが、野獣の渋く低く響く声、ライオンとビッグホーンを足したような精悍なルックスに比べると物足りなくなってしまう。特に変哲のない特徴のないハンサム、に落ち着いていしまうのだなあ。これは野獣姿が格好良すぎるのも問題かも。若くて特徴のないハンサムではあかんと、ガンズ版では爬虫類顔でキャリアも十分なヴァンサン・カッセルが野獣役だったが、それでもなお「野獣のほうが格好いい」って感じになってしまったし。この辺は永遠の課題か。

 とにかく真正面からアニメをそのまま実写に置き換えることに挑んだ作品で、かつこの25年の間のアップデートも(技術や見せ方だけではなく人物演出でも)きちんとされているので割りと万人におすすめです。ディズニーアニメそのものは苦手って人でも、コレは大丈夫なんじゃないかな。

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美女と野獣 オリジナル・サウンドトラック デラックス・エディション(日本語版)

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 楽曲は元々良かったのだけれど、更に良くなっています。ミュージックステーションでは野獣役の山崎育三郎とベル役の昆夏美がメイン主題歌の「美女と野獣」をデュエットしていたけれど、劇中ではこの曲はこの二人じゃなくポット夫人(エマ・トンプソン)とルミエール(ユアン・マクレガー)によって歌われるのである。後はやっぱガストン役のルーク・エヴァンスが素敵です。ユアンとルークを愛でるだけでも劇場に行くのだ!

*1:ちなみに「気狂いピエロ」はタイトルの「気狂い」が現在の放送上だとダメなのか原題をそのまま音読みした「ピエロ・ル・フ」で放送されたこともありました

龍争虎闘 小覇王の選ぶ対決映画ベストテン!


 またちょっと間が開いてしまいました(4月全然映画観てないんだよ〜。新作観てないなら観て感想書いてない奴書けやって話ですが追々)。そして間が開いた時はそうです。わっしゅさんのベストテン企画で再開です。今年の前半企画は「対決映画」!(タイトルは「燃えよドラゴン」からだけど「燃えよドラゴンはランクインしてません)

対決映画ベストテン - 男の魂に火をつけろ! <対決映画ベストテン受付中> 対決映画ベストテン - 男の魂に火をつけろ! <対決映画ベストテン受付中>

 対決というと蘇我馬子物部守屋とか、平清盛源義朝とか、武田信玄上杉謙信とか、柏戸大鵬とか、長嶋と王とか、馬場と猪木とか。時代を彩るライバル関係が思い出されます。映画でもアクション映画の類は大抵主人公だけでなく悪役も魅力的でなければ作品自体が面白くはならず、その意味でほとんどの映画は「対決映画」と言えないこともないのですが、ただ今年はわっしゅさんの定めたルールがちとキツい。

  • 今回は、タイトルを重視します。タイトルに、対決する両者の名前が明記されているものが対象となります。
  • ゴジラ対メカゴジラ』は入りますが『メカゴジラの逆襲』は入らない、というのを基準にしてください。
  • 洋画/邦画、実写/アニメ、劇映画/ドキュメンタリーなどの区別は問いません。
  • ただし、あくまで「映画」に限ります。テレビドラマ、テレビアニメ、ネット動画などは対象外となります。
  • タイトルで謳われているキャラクターたちが、作中で実際に戦っていなくてもかまいません。
  • 実際に観た内容がスットコドッコイだったとしても、タイトルを見た瞬間のときめきが印象的であれば、選んでOKです。
  • 迷ったときには当ベストテンの大原則である「迷ったら入れる」を採用してください。

 この「タイトル重視」というのがネックになってなかなか決まりませんでした。もちろん例えばその気になれば東宝怪獣映画の中から10作、とかスーパー戦隊VSシリーズだけで選ぶ、とかも全然可能なんですが、さすがにそれでは面白みがありません。なので試行錯誤しながら選んでみました(それでもだいぶ偏りあるけどね)。

  1. ゴジラVSメカゴジラ(1993年 大河原孝夫監督 日本)
  2. フレディVSジェイソン(2003年 ロニー・ユー監督 アメリカ)
  3. キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー(2014年 アンソニージョー・ルッソ監督 アメリカ)
  4. 侍戦隊シンケンジャーVSゴーオンジャー 銀幕BANG!!(2010年 中澤祥次郎監督 日本)
  5. 続・夕陽のガンマン(1966年 セルジオ・レオーネ監督 イタリア)
  6. スター・トレックⅡ カーンの逆襲(1982年 ニコラス・メイヤー監督 アメリカ)
  7. キングコング対ゴジラ(1962年 本多猪四郎監督 日本)
  8. フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ(1966年 本多猪四郎監督 日本)
  9. ガメラ対宇宙怪獣バイラス(1968年 湯浅憲明監督 日本)
  10. 北国の帝王(1973年 ロバート・アルドリッチ監督 アメリカ)

 先述した通りアクション映画なら大抵は主人公と敵役の対決映画といえるんですが、ここではあくまで「主人公格」同士による対決を重視(そうは言えないのもありますが)。例によって一シリーズ一タイトルとしましたが、ゴジラに関しては昭和ゴジラと平成VSシリーズで別枠ということに。タイトルにそれぞれのキャラの名前が入っているというタイトル縛りが今回のルールですが、スイマセン、最後の「北国の帝王」だけはどうしても入れたくて10位という形で特別エントリーさせました。もしルール違反ということであれば9位までで計算して頂いて結構です。
 特徴としては今回はタイトル縛りのせいもあって邦画が多いですね。それとやはり怪獣映画。それではそれぞれの作品を簡単に解説。独立した感想記事がある場合はそちらへのリンクも。

ゴジラVSメカゴジラ(1993年 大河原孝夫監督 日本)


 平成VSシリーズ第5弾。本来は一応シリーズ最終作として制作されていて、この後、シリーズはアメリカのトライスター版(エメゴジ)へ引き継がれるはずでした。結果としてトライスター版の製作が延期され、じゃあその間にシリーズ延長しよう、となってこの作品が最終作とはならなかったのだけれど、そんなわけでシリーズ最終作として気合の入った出来栄え。
 メカゴジラは昭和シリーズのものと違って流線型となり、また宇宙人の地球侵略兵器からゴジラを模した人類の対ゴジラ兵器へ(「ゴジラVSキングギドラ」で出てきたメカキングギドラの残骸が基になっている設定)。デザインの好みはあれど新しいメカゴジラを創りだしました。ちなみに生頼範義によるイラストのポスターはまだメカゴジラのデザインが決定する前に描かれたもので、昭和メカゴジラとも本編に登場したメカゴジラともまた違った格好良さがあります。
 僕の個人的な思い出としては、公開時お子様たちがいっぱいいる劇場で観たのですが、メカゴジラが圧倒的な力でゴジラを痛めつけているシーン、すでにその時点でお子様たち(ゴジララドンに肩入れ中)が泣いたり応援したりしていたのですが、途中で機材トラブルでフィルムが停止、今まさにゴジラが殺される!というシーンでスクリーンが真っ黒になったため、劇場は子供たちの泣き叫ぶ声で阿鼻叫喚の地獄と化したのでした。そんな部分も含めて思い入れ深い作品。
 シリーズはこの後、トライスター版の製作延期を受けて2作作られましたが、もうなんかやる気があんまり感じられない出来となってしまいました(特に「VSスペースゴジラ」)。なので個人的シリーズ最終作はやはり本作なのです。

フレディVSジェイソン(2003年 ロニー・ユー監督 アメリカ)


 多分明確に今回の趣旨に合致している作品。それぞれ独立したホラー映画の主人公を対決させる企画。比較的監督の個性が強くでて快作の多い「エルム街の悪夢」シリーズに対して凡作も多くなった「13日の金曜日」シリーズを「エルム街の悪夢」のニューラインシネマが権利獲得。すぐに共演ではなくきちんと「13金」シリーズを立ち直らせてからの満を持しての対決。フレディとジェイソン、それぞれの出自と個性をきちんと活かした上で最後は肉弾戦、という黄金の構成。どちらかと言うとジェイソンをヒーローに、フレディの悪巧みを打ち破るという感じか。「貞子VS伽椰子」はこの作品を反面教師にした、と監督は言っていたようだけど、個人的にはこの「フレディVSジェイソン」の足元にも及ばない出来だと思います。

キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー(2014年 アンソニージョー・ルッソ監督 アメリカ)


 MCUの対決映画というと「シビル・ウォー」のほうが相応しいとは思うんですが(なんたってアベンジャーズを二分しての全面対決)、タイトルの関係で「ウィンター・ソルジャー」の方を。いや、でもキャプテンアメリカスティーブ・ロジャース)とウィンター・ソルジャー(バッキー・バーンズ)の戦争中からの互いの関係など対比も見事で立派な対決映画だと思います。「ウィンター・ソルジャー」はサブタイトルではなくキャップと並ぶもう一つのタイトルロールと言えるし。

侍戦隊シンケンジャーVSゴーオンジャー 銀幕BANG!!(2010年 中澤祥次郎監督 日本)


 スーパー戦隊VSシリーズはオリジナルビデオとして始まったのだけれど、この1作前「劇場版炎神戦隊ゴーオンジャーVSゲキレンジャー」から劇場版となり現在に続いています。基本はその年放送中、現役の戦隊と前年の戦隊が共演するこのシリーズ。シリーズの中では「特命戦隊ゴーバスターズVS海賊戦隊ゴーカイジャーTHE MOVIE」が一番出来がいいとは思うのだけれど、個人的にはこの「シンケンジャー」と「ゴーオンジャー」の共演作が好きです。というか「シンケンジャー」が非常に評判良く、そのせいか対象年齢低めに作られた「ゴーオンジャー」は逆に不当に低い評価を受けていたと思うのだけれど、この共演作では見事に両作の個性がスイング。「ゴーオンジャー」が決して駄作ではなかったと証明した部分でも高く評価したい作品です。敵役の害統領バッチードやガイアーク三大臣のその後、とかゴーオンジャー側のキャラが光る。

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 死んだら終わりなのではない。辞めたら終わりなのである!ジ・ニ・ン!

続・夕陽のガンマン(1966年 セルジオ・レオーネ監督 イタリア)

 邦題は特に「対決映画」と言う感じではないですが原題は「Il buono,il brutto,il cattivo(イタリア語)」「The Good,the Bad and the Ugly(英語)」で「良い奴、悪い奴、醜い奴」と登場する三人のアウトローの属性を表しているので良しとしましょう。何度かこのブログでもエントリを書いていますが、やはりクリント・イーストウッドリー・ヴァン・クリーフイーライ・ウォラックの3人の個性が最高で、特にラストの三つ巴は映画史に残る名シーン。エンリオ・モリコーネのスコアも最高!

スター・トレックⅡ カーンの逆襲(1982年 ニコラス・メイヤー監督 アメリカ)


 スペースオペラシリーズ「スタートレック」からは2作目のこちら。哲学的に過ぎ、あまりヒットしなかった前作「TMP」から一転、TVシリーズからの人気悪役優生人類カーンを登場させた娯楽大作。カーンはのちにケルヴィンタイムラインの「スター・トレック イントゥ・ダークネス」でも出てきましたが、ベネディクト・カンバーバッチ演じるカーンと比べてリカルド・モンタルバン演じるカーンは情熱の男。カークへの復讐心も露わにエンタープライズを追い詰めます。宇宙船同士による戦闘も見どころ。物語は3作目「ミスター・スポックを探せ!」4作目「故郷への長い道」へと続く形を取るけれど、単独でも十分楽しめる作品です。

こちらは別のカーンが登場する「イントゥ・ダークネス」の記事。

キングコング対ゴジラ(1962年 本多猪四郎監督 日本)


 以前の「筋肉映画」でもランクインした怪獣映画の金字塔。アメリカのキングコング、日本のゴジラの堂々たる対決。前作「ゴジラの逆襲」にもアンギラスが登場してゴジラと戦うわけですが、この時点ではまだ「怪獣プロレス」と言われるような(ともすれば揶揄される)感じではありません。ここからゴジラに人気怪獣をぶつけるという路線が確立されます。元々はウィリス・オブライエンの企画がまわりまわって日本で映画化された作品でタイトルもキングコングが先に来ているようにどちらかと言えばキングコング主演といえるかもしれません。今後はモンスターバースの中で「Godzilla VS Kong」が予定されています。

フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ(1966年 本多猪四郎監督 日本)


 僕はツイッターのプロフィールに「フランケンシュタイン大好き」と書いているぐらい(といっても好きなのは主にメアリ・シェリーの原作のほうなんだけど)なので「フランケンシュタインもの」も大好きです。前作「フランケンシュタイン対地底怪獣」の続編(といっても直接続編というよりは一応関連あるよってぐらい)。双子の巨人怪獣サンダとガイラが戦う。見た目はほぼ一緒ながら山の怪獣で人間に育てられた心優しいサンダと、海の怪獣で人間を食らうガイラの対決。東宝自衛隊といえばこれ!というメーサー殺獣光線車もこの映画がデビュー。

ガメラ対宇宙怪獣バイラス(1968年 湯浅憲明監督 日本)


 ガメラシリーズからは過去に「続編映画」として「大怪獣空中戦ガメラ対ギャオス」を選んだけれど、好きなのはむしろこっちかな。日本人と外国人の子供のコンビ、東宝怪獣とは一味違ったデザインの宇宙怪獣バイラス、勧善懲悪のストーリー、そしてガメラマーチ!と昭和ガメラの定番が揃った作品。個人的に平成3部作の出来の良さは認めつつ、好きなガメラ作品といえば圧倒的に昭和ガメラです!

北国の帝王(1973年 ロバート・アルドリッチ監督 アメリカ)


 今回唯一タイトル縛りのルールから外れた作品。邦題は原題をそのまま訳したものなので、あくまでタイトルロールはリー・マーヴィンのA・ナンバーワンを指します。でも敵役となるアーネスト・ボーグナインのシャックの存在感も半端無く、言ってみれば互いに特にメリットもデメリットもないけどプライドだけの問題で相手を出し抜く物語ですからやはり主役二人の対決映画といっていいでしょう。

 惜しくも選外、という感じなのは「ルパン三世 ルパンVS複製人間」と「マジンガーZ対暗黒大将軍」あたりでしょうか。「VS複製人間」は「カリオストロの城」より好きな「ルパン三世」なんですが今回は入らず。一方「マジンガーZ対暗黒大将軍」は作品自体は大好きなんですが、タイトル重視で言った場合本当の主役剣鉄也とグレートマジンガーがないがしろっぽい気がして選びませんでした。
 というか「バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生」がもっと文句なしの傑作だったらこんなに悩むことなかったんだよ!(それなりに好きな作品です)